暇つぶしのひつまぶし

蠱毒 暦

断章 自由人は今日も征く

冒頭から失礼しまぁすが、世の中をよぉく見渡すと、天才や凡人…異端者が沢山いるであります。


「……ナハハ。」


そんな彼ら彼女らの日常を面白半分…ぁ。


(これじゃあ悪魔と同じであります。失敬失敬。)


「…風の向くままに。しがらみや障害は、46センチ砲でぶっ飛ばすありますよ〜…まあ冗談でありまぁすが。」


朝のふとした思いつきで、朝食も食べずに彼は家から飛び出した。



CASEONE 残雪唯の場合


まずは数多の帰宅部を戦慄させる…かの有名な三代目帰宅至上主義者…そんな彼女の日常を追ったであります。


……



「全く…お粗末な警備だ。やはり『警部』がいないと面白味が薄れてしまうな。」


月を見上げながらつまらないそうに欠伸をして、ボクの方を見た。


「もう一本いこうか…『スノー』?」


「…ごめん『レピア』…そろそろ行かないと。」


「構わない…それに君にとっていい傾向だ。ゲームよりリアルを大事にしなければな。」


それについて、言いたい事は沢山あるが言い争いはしない…どうせ平行線だ。


「……すぐ戻るから。」


「ごゆっくり。」


にやにやと笑う彼女を無視して、ボクはログアウトボタンを押した。


……


華麗に帰宅して30分のゲーム休憩を終えVRゴーグルを外して時計を確認すると、机に置かれたデジタル時計の時刻は計算通り17:00ぴったりだった。


「残雪さーん!!買い出し終わりました〜後、誰かが家の前に倒れてましたから、連れて来ましたよ〜〜」


「つ、捕まったで…ありまぁす。誰かぁご飯を恵んで…くれると…」


一階の玄関の方向から最近来た住人の声や今日欠席していた筈のクラスメイトの聞こえて、面倒そうにため息をついた。


「とにかく…晩御飯、作らないと。」



CASETWO 自称世界を統括するべき存在の場合


残雪殿のご飯をたらふく食べて、元気2.65倍の二乗になった吾輩は…早速、私立スターラッキー大学の広場に向かったであります。


「ん?何者だ。いや待てすぐに思い出そう。」


「谷口殿の親友。長野原大好ながのはら おおすきであります。何度か演劇部の手伝いをした事がありまぁすが…」


とっても悩んでいる様だったので、吾輩は即答したであります。


「そうか…!!!裏方部の…許せ長野原。すっかり忘れていた。」


全力で頭を下げる花形殿を吾輩は大丈夫だと声をかけようとした瞬間、その後ろから怒鳴り声が聞こえたであります。


「はぁ…っ、見つけた…おい!!!何でそこで道草食っている。」


黒髪で水色の目の男…元生徒会長が息を少し切らしながらこっちにやって来たであります。


「…っ。クックック…これはこれは。生徒会長兼文化祭総パシられ長か。多忙の癖して、一体ここに何の用が…」


「何だその不名誉な名称は…いや、今はいい…早く行くぞ…先約は俺だ。」


「…フフフ待ちたまえよ。アタシは今、長野原と話をだな…」


「…17時。この日この時間は文化祭の事前準備として予算の確認や設備のチェックをすると…俺は数ヶ月前から言ってたよな?」


あ。露骨に目をそらしたであります。


「さ…さあ?記憶にな…痛っ!?何をするかっ!!暴力は何も生み出さないぞ!!!」


「悪いが今はこいつの手すらも借りないと、文化祭が破綻してしまう状況なんだ。また今度来てくれ。」


「分かったでありまぁす!!文化祭、楽しみにしてるでありますよ?」


必死にバレない様にチラチラと訴えてくる花形殿をスルーして言い放ったであります。


「…ああ。その時はちゃんと招待状を出そう。演劇部の馬鹿共も連れて来い。」


「な、長野原…よもや…う、裏切るのか?」


「じゃ、また今度でありまぁす!!!」


普通に自業自得でありまぁす。なので、さっさと大学の外へと走って行くであります。



CASETHREE 裁定神の場合


……



「こんにちはーーでありまぁす。」


折角、驚かせようとしたのに黙ってコーヒーを啜っているであります。


「うへぇ…ガッカリであります。」


肩透かしを食らってしょげていると…突然、吾輩は無理矢理、床に伏せられたであります。


「これは…一体?天界は嵐の障壁で相互不干渉の筈…まして人間が突破できる訳が……」


「嵐…?ナハハッ。吾輩は言わば船でありまぁすよ。その程度じゃあ、沈まないであります。」


「戯言を…!!」


伏せられている故、姿はよく見えないでありますが…確実に吾輩に対して、激昂しているのは分かるであります。


「拘束を解け。」


「っですがエクレール様。この人間は危険です!!」


「理解している…問題ない。」


何か説得してくれたであります。大人しく帰って行ったでありますねぇ…やったぁであります。


「聞こう…何をしにここへと足を踏み入れた。」


「……。」


え?びっくりさせようとしただけでありますが…納得しないでありますね。じゃあこうするであります。


「さっき箱庭から主殿が消えたであります。」


「主…まさか」


「バイバイでありまぁす!!!」


義理立ては吾輩の主義じゃない……けど。



「ナハハッ。」



——たまには…こういう日も悪くない。


                   了




























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