第9話:攻略完了

 

 俺の刃が天狗を切り裂き、確かな手応えを覚える。

 ……その一撃を受けて後退る天狗はその攻撃を受けながらも笑顔さえも浮かべており……満足そうに散っていく。


[勝った?]

[……まじか]

[また現れたりは……しない?]

[え、は?]


「強かったな」


 久しぶりの強敵。

 かつての地獄の如きダンジョンで経験した死を振りまく妖魔……それを倒した俺は――一呼吸を置いて、


「っしゃぁぁぁー! 勝ったぞ!」


 渾身の――いや、全力で叫び声を上げて、スマホに向かってピースした。


[乙!]

[まじで熱かった!]

[――本当に倒しやがった]

[うおおおおおおおおお]

[やばい、やばすぎる!]

[マジか、マジか!?]

[本当に攻略しやがった!?]

[本当にソロで下層ボスを倒したのか]

[やばいって、気づいたら拳握ってた!]

[でも、声響いてないぞ?]

[ほらやっぱりフェイ――――]


 そしてそれを見せた途端に、このダンジョン全体に響くように――いや、この国中に響くようにそれの声は無機質に響く。


【黒塚のダンジョン――下層ボス黒塚大天狗が攻略され、深層が解放されました】


[まじだ、まじで――下層攻略されたんだ!]

[このダンジョンって、十年ぐらい前からある奴だろ!?]

[伝説だ――伝説の配信だ!]

[馬鹿にしてた奴ら見ってるー?]

[切り抜け、ま時で切り抜け拡散しろ!]

[駄目だ完全に惚れたぞ、同性だからとかじゃねぇ!]

[最強、鬼面、変態侍!]


 コメント欄が爆発したように沸き立ち流れ始める。

 今まで傍観していた視聴者でさえコメントしているのか、万単位の文字があり得ない速さで流れて消えていく。


 あまりの速度に一切内容は読み取れないが、一個だけ解せないのがあった気がした。それにツッコむ気力は今はないので置いておくし、この爆速のコメント欄の余韻に浸る。


 文明は読めずとも、その熱狂が、お祭り騒ぎが――かつて見たことないほどの圧倒的な盛り上がりを感じられて、見せれてよかったと思えてきた。


 だけど……なんか加速度的にというか、あり得ない速度で上がっていく数字を見て最早恐怖すら覚えてきた。あれ、やばくない? 何人いるのと思ったのも束の間のこと……。


[あれ、同接どうなってるんだ?]

[え、まじで何人見てんの?]

[確かに分かるけど――は!?]

[二十万!?]

[え――まじの伝説じゃん!]

[登録者も100万超えたぞ!?]


 は、どんだけ伸びるんだよ!?

 流石に嘘だと思って見えた登録欄、そこに確かに百万人と表示されており……もう俺の認識外のチャンネルへと変わっていた。

 

 もうなにこれと、意味分からねぇと思いながらも少しふらついてしまう。

 でもその瞬間のこと、空が俺の手から消え人型へと戻って俺を支えてくれた。そんな彼女にお礼を伝えると、空が再び現れた故にコメント欄が加速する。


[空ちゃんもお疲れー!]

[武器強過ぎんか?]

[武器のおかげもあると思うけど、あれはこいつの技量だろ]

[ミソロジーだしね]

[空ちゃん可愛い!]

[服が癖!]

[なんだこの可愛い子!?]

[バスってたから来たけど、何この癖の塊!?]

[コンプラ仕事しろ!]


 今更ながら、空の姿を全国に晒していいのだろうか?

 一年間は一緒にいる彼女だが、その圧倒的な美貌はやばい。

 ……何より格好が本当に際どい。

 俺もたまに直視できないほどに彼女の衣服の布面積は少ない、包帯そのものを下着代わりとした、布一枚だけを織った姿は――なんかもうBANされそうなくらいには危険な気がする。

 

 露出はあまりしてないものの、見える柔肌には紅い紋様が刻まれていて――それが余計にやばいと思う。


「視聴者の皆、コメントで褒めてくれるのは嬉しいけど……私は彼一筋だから」


[絶、許]

[天狗の真似は止めろw]

[天誅]

[羨ま死刑罪]

[こいつ燃やさない?]


「――やめよう? え、待って? 本当に止めてくれ?」


「それは止めてね、そんなことしたら嫌いになるよ?」


[しゃーねーな]

[空ちゃんに免じて!]

[感謝しろよ?]

[ぺっ!]

[お ま え らw]


 なんだこの一致団結具合。

 ……てへっと舌を出して笑う空を見て、後で説教と心に決めながらも少し楽しそうな彼女を見て笑う――それが、バズり後の初配信。

 ダンジョン配信界隈に放たれた初攻略動画だった。

 流石にこれが限界だと思うも、俺はその日配信を閉じ――あまりに達成感に何も見ずに寝たんだが……今になって心底思う、この世界の配信の影響を俺は甘く見ていたんだと。


 そして、そんなことをゆっくり眠る俺は一切気にしておらず、これから先の受難を一切想像していなかったのだ。


[あとがき]

 というわけでダンジョン配信回は一端終わりです。

 昨日は今回の話を練るのに時間がかかってしまい、投稿できませんでしたが……また明日から毎日更新に戻します。

 一端一区切り着いたので、お願いなのですがよかったらフォローや☆をどうか。

 次回は掲示板回となり、執筆完了以降投稿しますのでどうか続きを待っていてくださいお願いします!


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常世帰りのダンジョン配信者~最難関ダンジョンをソロで攻略した俺が、数多の神話を超えるまで~ 鬼怒藍落 @tawasigurimu

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