第2話 転生したら息子の子供でした!

俺はとりあえず起き上がり、周りの確認をする事にしたが、俺がいる部屋は明らかに俺と妻であるアシュリーがガイの子守りをするために作った部屋で間違いなかった。


(いつ魔王城に戻って来たんだ...?)


そんな事を考えつつ、周りを散策しようとベビーベッドから降りた瞬間、部屋の扉が開き、知らない美人が入ってきた。


「今日の公務も疲れたし...アルガを抱き締めて疲れを癒さないと...ってアルガ!?」


目の前にいる人が、俺は誰かマジで分からなかった。

だが分かることは一つ、めっちゃでかい。

何とは言わんけど、めっちゃでかい。


そして直ぐに俺の元に駆け寄ってきて、「アルガが立ってる!」って騒いでいた。


(立つってそんなに珍しくないだろ...つか当たり前じゃね?)


そう俺は思ったが、自分の姿を見た瞬間、その考えは吹き飛んだ。


(ちっちゃ!?めっちゃ体ちっちゃ!?)


なんと俺の体は3歳児レベルにまで小さくなっており、手も足もケツも前とは比べ物にならないくらい小さくなっていた。

というかよく動けるな...


それから俺の近くで騒いでいた女の人は、「アルガが立つなんて!これはガイ君に報告しないと!」と言って部屋を出てしまった。


そして俺は女の人が「ガイ」と言う名前を出した瞬間、ある可能性が思い浮かんだ。


「あの人...カナちゃんなのか...?」


だがもしカナちゃんだったとしたら、俺が最後に会ったのはあの日が最後なので、あの時点でカナちゃんは確か...何歳だったっけ...


そんな事を考えている間にまた扉が開き、今度はさっきのカナちゃんだと思う女の人と知らない強靭な肉体の男の人が入ってきた。


「ほらガイ君!アルガが立ってるわ!」


「本当だ...!まだ生まれて2年しか経っていないのに...!」


そんな話をしていたが、実際ガイは2歳くらいで立った...はずだ。

俺とアシュリーの前で立ってから第一声は「あ!」だったのを今でも覚えている。


話を戻して、もし目の前の二人がガイとカナちゃんなのなら、今の状況的に俺は二人の子供という事になるんだが...女神におまかせって言ったの間違えたかな...


とりあえず今のこの状況を抜けるために、素早く足を動かして、部屋を出る。


「あ、ちょ、アルガ!ちょっと待って!」


待つわけねえだろ!俺はずっと赤ちゃんのままいる訳にはいかねえんだ!

とりあえずアシュリーを探すか、あいつが使える成長促進魔法で体を成長させてもらわないと...!


それから城中を駆け巡っている時に突然、鎖が大量に付いた扉が目に入り、それを見た瞬間、こんな部屋は無かったはずだと自問自答し、その部屋の目の前に行ってから鎖に手を触れた瞬間、扉の中から唸り声と泣き声が聞こえてきたので、鎖を解こうとした瞬間、鎖が弾け、扉が開いた。


そして中を見ると暗闇の中に人が一人おり、その先程まで泣いていたであろう人物を見てみると...


「アシュリー...なのか...?」


鎖に縛られていたのは、生前の妻のアシュリーであった。

だがそのアシュリーは生前の可愛くて愛しがいがあるアシュリーとは違い、俺の事をずっと睨んでいて、まるで敵のように思っていそうな感じだったので、話しかけようとした瞬間、アシュリーが喋った。


「誰...?」


「誰って...」


アシュリーが俺の事を誰と言うので戸惑ったが、冷静に考えれば当たり前の事である。

勇者との戦いで死んだ夫が目の前にいる、そして幼児化しているなんて、信じろと言うのが無理な話だ。


その時、空いていた扉の外に人がぞろぞろ来た。


「「アルガ!」」


「「「「アルガ様!」」」」


そこに居たのはガイとカナちゃん、そして四天王の4人だった。

四天王のメンツは変わっていないようで、「サラザール、アリア、レスフィル、マリカ」が生前とほぼ変わらない容姿でそこに立っていた。


「何でアルガ様が鎖を...!解けるのは我々四天王とガイ様とカナ様だけのはずなのに...」


そうサラザールが言った瞬間、俺は疑問に思った。

さっき言ったメンバーしか鎖を解けないなら何故俺が入れたのか、そして何故アシュリーがこんなに負の感情が渦巻く魔力を放出しているのか、その2つが俺には分からなかった。


だが俺が成長促進魔法をかけてもらうためには、とりあえず目の前のアシュリーを戻す為にアシュリーと戦わなければならない。


「はぁ...しょうがねぇな...」


そう言って俺は扉を閉め、部屋の蝋燭を点けた。


「閉まった!?ちょっと!アルガ様!」


外では大騒ぎが起きているっぽいが、俺は目の前のアシュリーだけしか見ていない。

アシュリーとはできるだけ戦いたくないので、話で鎮めようとする。


「アシュリー、覚えているか?」


「あ...?」


「お前が俺の所に来た時、お前は恥ずかしがって顔を見せない為に仮面を付けていたな、あれはあれで可愛かった...」


「ああ...?」


「それから数日後、階段の下にいたお前の所に行くために降りてる最中、足を踏み外してお前を押し倒してしまったな。」


「え...?」


「俺はそこでチャンスだと思ってお前の仮面を外した、そして俺の目の前にいたお前の顔を初めて見た俺の感想は...」と感想を言おうとした瞬間、突然アシュリーが呟いた。


「...感想は...?」


さっきまで唸り声しかあげていなかったアシュリーが喋った事で、俺の中では感想を言わなければならないのと、喋ってくれた事の喜びで頭がこんがらがってしまった。

だがアシュリーはここぞとばかりに俺に感想を求めてくる。


「それで...感想は?」


「え?えっと...」


「可愛かった?可愛くなかった?どっち?アル君...?」


「えっ...?今...アル君って...」


俺は自分の名前をアシュリーが呼んでくれたことで少し浮かれてしまったが、その直後にアシュリーが言った一言で俺は現実に戻される事になった。


「ちなみに返答間違えたら蹴るからね?」


「蹴るゥ!?何でだよ!?」


「当たり前でしょ?愛する妻の顔を初めて見た感想なんて1つしかないでしょ?」


「えっと...可愛かったぞ?」


そう言うと、アシュリーは赤面しながら顔を手で隠していた。

やっぱり可愛い。


「で、何でそんなに小さくなってるの?」


「え?」


「え?じゃないでしょ?小さくなってる理由を答えてって言ってるの!」


「いや...死んだからだけど...」


「やっぱりあの時になんかやったのね...?」


「そ、そうです...」


と言った瞬間、アシュリーが俺に思いっきり抱きついてきた。


「もう...!ほんとに...ほんとに心配したんだから!」


「...ごめんな、ずっと待たせて...」


「だから今度は居なくならないでね!居なくなったら...」


「居なくなったら...?」


「私も一緒に死ぬから...ね?」


そう言うアシュリーの目はマジの目をしていた。

そして俺は本題に入る。


「あ!そうだアシュリー、ちょっと良いか?」


「ん?何?」


「俺に成長促進魔法をかけてくれ!」


「えぇ〜?やだ。」


まさか断られると思っていなかった俺は少し狼狽えてしまう。


「な、なんでだよ!」


「だって小さいアル君めっちゃ可愛いんだもん!このまま襲っちゃいたい位...」


アシュリーが魔法を使わない事を決めている事が分かった俺は、切り札を出す事にする。


「魔法...かけてくれたら、少しだけ付き合ってやるよ...」


そんな事を言われると思ってなかったと言わんばかりの顔で驚くアシュリーをもっと攻める。


「ほら...早く...!」


「は、はい...♡」


よし、俺の勝ち。

それから魔法をかけてもらい、生前と瓜二つの姿になれたので、俺は扉を開けて逃げようとする。


「よし!んじゃ扉開けるぞ?」


「え?何言ってんの?」


「は?」


「開ける前にヤることあるでしょ?」


「後でじゃダメ?」


「ダメ!今!」


「待て待て!扉の外にカナちゃんとガイ達待たせてるから、そっちが終わったらな?」


「むぅ〜分かったよ...」


何とか納得してくれたアシュリーと一緒に外に出ると、ガイとカナちゃんが俺とアシュリーにそれぞれ抱きついてきて、四天王の四人は静かに膝を付いていた。


それから六人に事情を説明し、ガイとカナちゃんから何故アシュリーがあの部屋に居たのかを説明して貰える事になった。
































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最強の魔王が転生したら自分の息子の子供になった件 @fubki-san

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