最強の魔王が転生したら自分の息子の子供になった件

@fubki-san

第1話 魔王が死す時、また新しい魔王が生まれるのだ...

今から寝ようといつもの服を着て、ベッドへ入った瞬間、扉が誰かによって思いっきり叩かれた。


「アルガ様!起きてください!」


「う...ん?うるしゃいなあ...」


俺は眠りにつくのがかなり早いので、扉を叩かれた時にはもう眠りにつく寸前だった。

それから扉を開けると、配下である四天王のサラザールが焦った様子で俺の前で膝をついた。


「何だサラザール...こんな夜更けに...」


「アルガ様の睡眠を害してしまい申し訳ございません、ですが急の用だったのです、お許しを...!」


サラザールが焦りながらそう言うなんてもう何年前か分からないくらい久しぶりだったので、体が少し強ばる。


「別にいいが...他の四天王はどうした?」


「こんな夜更けですので全員寝ています...」


「そうか...で要件は?」


「今さっき、俺が仕掛けておいた罠のワイヤーに誰かが掛かりました。」


そう、サラザールは四天王の顔ともう一つ、偵察役としての顔も持ち合わせており、魔王城があるこの地の様々な所に偵察用のワイヤーを張っており、他の国からの侵入者などを確かめるために張っている...らしい。


「へぇ...久々に感知したな、あんまりこの地に来るやつは少ないってのに...相手の目星は付いてんのか?」


「恐らく...勇者かと...」


「...マジか...」


最近勇者が俺を倒すために動いていると言うのは聞いていたが、まさか夜襲とは...

それから俺は数分考え、1つの結論を下すことにした。


「サラザール...頼みたい事があるんだが良いか?」


「え?な、なんでしょうか?なんなりとお申し付け下さい。」


「四天王を総動員し、サラザールとアリアは城内の人間を、レスフィルとマリカは魔王城周辺の人間や魔族を俺と勇者の攻撃の相殺で巻き込まれないように全て避難させろ...今すぐにだ。」


「全て...しかも今すぐにですか!?流石に多すぎます!魔王城周辺は直ぐに避難できるかも知れませんが、城内の人間は逃げる奴など一人もおりませんぞ!全て魔王城にて命を散らす覚悟を毎分毎秒しているのです!」


「じゃあ...俺から言う、それでどうだ?」


「アルガ様...!」


「レスフィルとマリカには逃げてから事情を説明してくれ、今言えばめーっちゃ怒られちまうからな...」


「わ、分かりました...」


「大丈夫だ、もし俺が死んだら戻ってきて良いからな?」


そう言った瞬間、サラザールは俺の胸ぐらを掴んできた。


「何をおっしゃるんですか...!絶対に死んではダメです...!分かりましたか...!」


そのいつもと違うサラザールを見て、少し怯えてしまった。


「わ、分かった分かった。」


俺はすぐに、玉座の間へと行き、大声で城内の全ての人間や魔族を呼ぶ。

するとものの数分で全ての人員が集まり、その最前列には妻であるアシュリーと、息子のガイ、それからガイの奥さんであるカナちゃんが立っている。


「こんな夜に呼び出すなんて...ふざけた事だったらこの後一緒に寝てもらうからね...?」


「残念だが...ふざけた事じゃなく、かなり真面目な事だ。」


すると、少しの間口を閉ざしていたカナちゃんがある事を言った。


「まさか...お義父様、勇者絡みではございませんか?」


そうカナちゃんが言うと、周りのメイドや執事、そして事情を聞いていなかったアリアでさえザワザワし始めるが、サラザールが威圧した瞬間、借りてきた猫の様に大人しくなった。

するとアリアが口を開き、俺に言ってきた。


「僭越ですがアルガ様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」


「ん?なんだ?」


「先程カナ様が仰られた、我々を集めた理由が勇者絡みと言うのは本当なのでしょうか?」


こうもピンポイントで当てられてしまっては、もう誤魔化してもしょうがないので、さっきサラザールに言った事をそっくりそのままみんなに伝えた。

そしてみんなの反応は...


「反対です!!アルガ様だけ置いてなんて行けません!」


「私も反対だわ、夫を置いて一足先に逃げる妻なんてもう魔王アルガの妻失格よ!」


「奥様の言う通りです!仮にも四天王として、アルガ様を置いてなんて行けるわけないでしょう!」


それから何か言ってくるわけではなかったが、強い目力でガイとカナちゃんも訴えてきた。


このまま言っても無駄だと思った俺は、強硬手段を使う事にした。


「そうか...ならしょうがないな...」


そう言って俺は音速の速さで全員に手刀を入れ、気絶させた。


「アルガ様...」


「サラザール、お前のワイヤーでみんなを運んでレスフィルとマリカと合流しろ、分かったな?」


サラザールは何か言いたげだったが、それをグッと飲み込み、「はい」と二つ返事をした。


「いい子だ。」


そしてサラザールが出ていった数十分後、勇者パーティーが律儀に扉を開けて入ってきた。


「おいおい勇者よ、人の部屋に入るならノック位はしてくれないか?驚いてしまうじゃないか...!」


「魔王が何を言う!数々の悪逆非道の所業!許してはおけん!」


うーん...悪逆非道の所業とかした覚えないんだが...後文章なんかおかしくね...?


「ここで我々がお前を倒す!行くぞみんな!」


「「おう!」」「うん!」


それから何時間経ったかは分からないが、俺は勇者パーティーと1人で戦い続け、空が明るくなった頃、決着は着いた。


「ふっ...完敗だ、ほら、倒すがいい!」


俺は負けた、勇者パーティーはやっぱり強かった、一人で戦うとか言ったけど実際キツかった。


それから勇者は俺の首を切り落とし、魔王と勇者の決戦は終わりを告げたのだった。


それから俺の魂は天へと上り、女神の間へと移送された。


「迷える魂よ、汝は誰の魂なのですか?」


急にそう聞かれたので答える。

女神なら分かるだろとかツッコミたいが、その言葉は飲み込んだ。


「俺は、魔王アルガの魂だ。」


「ま、魔王!?」


俺が名前を出した途端に女神はビビり散らかし、俺から遠ざかった。


「ど、どうしたんだ?」


「魔王コワイ魔王コワイ魔王コワイ魔王コワイィ...!」


俺はその尋常ではない女神の様子を見て、少し話を聞いてみようとしたのだが、ずっと「コワイコワイ」と話が出来るような状態じゃなかったので、少し時間が経ってから話す事にした。


「落ち着いたか?」


「え、ええ何とか...」


「えーっと...さっきの反応だが...少し話を聞かせてくれないか?」


「えっと...すごーい前に、アルガさんの様に勇者と戦ってここに来た魔王さんがいたんですけど、来た時から暴言と圧が凄くて、まともに話せる状態じゃなかったんです、それから、魔王さんがこちらに来たらあんな反応になってしまうんです...」


「そうか...先人が迷惑を掛けた、誠に申し訳なかった!」


そう言って俺は頭を下げた。

魂なので下げているのが見えているのかは分からないが、ちゃんと下げている。


「ちょちょ!そんなに頭を下げられるような事はしてないですから!」


「ならいいが...」


「ところでアルガさん...忘れていましたが今後はどうされたいとか予定はありますか?」


すっかり忘れていた。

女神との話が盛り上がり過ぎて忘れていたが、今俺死んでるんだよな...


「えっと、何があるんだ?」


「天国に行くか、転生するかです、大体の方は転生を選びますが...」


俺は数分考えて、結論を出した。


「転生で良いか?」


そう言うと、女神は直ぐに答えた。


「勿論です!それではどのような祝福ギフトを付与しますか?」


「え?いらんが?」


「え!?要らないんですか!?大体の方々みんな貰ってますよ?」


「女神、俺を誰だと思ってる?」


「あっ...!」


「だから大丈夫だ、全部女神にお任せするよ。」


「分かりました!それでは行ってらっしゃいませ!」


「おう!言ってくるぜ!」


そう言った瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。

そして俺は目を覚ました、すると...


「あ!アルガ様!起きられましたか!」


俺の目の前には、生前俺の部下として四天王の一人だったマリカが立っていたのだった...
































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