おどれ成りぬ骸〜権力者はなぜ不老不死を求めるのか〜

加賀倉 創作(かがくら そうさく)

おどれ成りぬ骸〜権力者はなぜ不老不死を求めるのか〜

【注意】本稿はほぼ都市伝説、陰謀論、オカルト的なお話を含みますので、苦手な方は見ないでくださいね。






壁、此拠先注意—————————————————







 突然だが……

 

『アドレノクロム』をご存知だろうか。


 現実にちゃんと存在する化学的な見方をすれば、それは、アドレナリンの酸化によって生成される不安定な化合物。


 アドレナクロムには止血効果が認められており、その安定性を高めて、血管強化剤として利用されていたようだ。


 これだけ聞くと、「なんだ、良さげな物質じゃないか」と思いそうだが……


 定かではないが、こんな副作用が報告されたこともあるらしい。



——脳に作用し精神病を引き起こす



 まぁ、なんらかの異物を体に入れることが脳に悪影響を与えることにつながるのは、不自然な現象とは言えない。


 そんなアドレノクロム、危険な可能性があるなら、誰も使ってないよな……


 が、しかし。


 オカルト界隈では、長い間、聞き捨てならない、こんな噂が立っている。


 

——権力者たちが、罪なき子供の脳や生き血からアドレノクロムを製造し、それを己の体に投与している



 と。


 つまりは、「子どもの生き血を啜るすする異常者がいる」という噂。


 なんでも、アドレノクロムなるものは、麻薬的な強烈な快感や幸福感を生み出す効果があったり、若返り効果があるという得体の知れない薬のようなものらしい。


 本当に、耳を疑う内容だ。


 ちなみに私がここで話したいのは、そのオカルト話の真偽についてではない。


 いわゆる、子どもの生き血、的なアドレノクロムが存在するかは一旦脇に置いて、その『若返り効果』に着目し、本稿の題の通り『権力者の生への執着』について論じたいのである。

 

 おそらく、多くの人が、こちらであれば聞いたことがあるはず。



——不老不死の薬



 西洋では『エリクサー』なんて言われたりもする。


 『不老不死の薬』の具体例をあげるなら、始皇帝が、絶大な権力を得た後に部下に不老不死の薬を作れと命じた『錬丹術れんたんじゅつ』が特に有名だろう。


 錬丹術によってできた霊薬は、丹砂たんしゃ(別名:|辰砂

《しんしゃ》、朱砂すさ、賢者の石など)という、赤い水銀化合物を指すことが多い。


 水銀なぞ、現代では誰もが有害な物質だとわかっているもののはず(私は小学生の時、理科の先生から、そのゼリーのようにプルプルと揺れる不思議な液体金属を見せてもらったのを覚えている)。


 だが、始皇帝はそれら『丹』を服用した。


 なぜだろうか。



——いつまでも権力を振りかざし続けたい



 つまり、



——死にたくない



 のである。


 この世の全てを手に入れたような人間の行き着く先は今も昔も変わっておらず、結局は、「得た財産や権力をいつまでも保持し続けたい」のである。


 いつでも死ねる、と言う人はそもそも少ないとは思うが、中でも彼らのような権力者は、誰よりも死を恐れている。


 失うものも、多すぎ、大きすぎるのだろう。


 権力をふるい続けたい、財産を失うのが怖い、だから死にたくない。


 なんと贅沢な悩みだろうか。


 我々一般人も、彼らと同じ立場になれば、同じ気持ちになるのかもしれないが……


 その不老不死を求める過程で、我々に悪い影響をもたらすのはやめていただきたいと言うものだ。


 論点はズレるが……


 ここまでお目通しくださった皆様にも何かしら、世の権力者に思うところがあるはず。


 我々は死と向き合いながら、必死に生きる。


 そして手練手管てれんてくだで我々から搾取する吸血鬼のような存在に、立ちむか……わないまでも、疑問を持つべきだ。

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