最終話、二人の暗躍は始める

そうして俺は計画通りにアンナの両親を連れて外に出ていた。二人とも俺からのお金などの提供などしてすっかりと心を許してしまっていたのだ。


アンナの前世ではお金の亡者みたいだと言われていたのでお金を渡すとこれ程の悪名高い俺をすんなりと信じてしまうとは全くもおめでたい奴らだなと思いながら森の中を進んでいた。


そろそろだなと感じていると急に魔物たちが襲撃を受けたのである。


もちろん護衛兵たちが一生懸命に応戦を始めたが向こうは手慣れのテイマーだけに護衛兵たちが倒されて行ったがそんな護衛兵たちを俺は必死に助けるのだった。


それは俺が裏で暗躍しているのではないと信じ込ませる人達を作るために必死に応戦をして俺はアンナの両親に対して逃げてくださいと言いながら護衛兵たちを助けながら応戦をしていた。


護衛兵からすればとても勇敢で婚約者の両親を助けようとする少年に見えるだろう。そしてそんな俺も魔物の一撃をもらい吹き飛ばされて血を流して倒れ込んだ。


へっへっへ、ここまでやれば誰も俺が黒幕だとは思わないだろうと思っていると遠くからアンナの両親の悲鳴が聞こえてきて殺されたなと感じながら俺は気を失ってしまった。


我ながらかなりの名演技をしたほうだけどかなり痛いなと感じながら。


そうして意識を取り戻ると近くでアンナは両親の死体を見て泣き崩れていたのである。


無論、演技であることは理解をしているつもりだけどかなりの名役になれるよと思いながら聞いていた。


使用人やメイドたちがお嬢様と呼ばれてもアンナは両親の亡骸に寄り添って泣いていた。


まるで悲劇のお嬢様としか見られない、裏事情をしている俺を除けば。


本当に素晴らしいほどの演技だな、魅入ってしまうぐらいだと評価したい。


そうして泣き叫んでいる演技をしているアンナに対して俺は伝えるのだった。


「アンナさん、俺は必死に戦いましたがそれでも貴方の両親を助けられずにこんな目に遭わせてしまってごめんなさい。俺にもっと力があれば助ける事ができたのに・・・無能な俺を許してくれ」


「アクトさん!何を言っているのですか。アクトさんはそんなボロボロになるまで戦ってくれたのに何も責められるはずがありませんから、アクトさんのせいではないですから」


泣きながらもそうやって慰めているように言ってきた。本当に前から考えていたのだなと感じていた。


そうしながら疲れたので二人で静かにさせてくれませんかとメイドと使用人たちにここから立ち去るようにお願いをすると先程の様子を見て落ち着いて考える時間を与えてあげようと静かにその場から立ち去った。


すると先程まで泣いていたのが嘘のように笑みを出してきて本当にみんなを騙せましたねと静かな声でとても嬉しそうに伝えてきた。


それに俺は良かったと静かに答えてから話を始めていた。



「それにしても他の者たちも騙すためとはいえ、それなりに怪我をしてしまったから本当に当分の間はここでおとなしくしないとならないな」


「別に良いではありませんか、これからは正式に私の夫になるのですから。貴方も実家から嫌われているのですよね、なら好都合とも呼べるのではありませんか」


「まあ、そのように捉えることも可能かな。それとこれからどうするつもりだ。その様子だと内政とかあんまり出来ないだろ・・・でもそこは安心をしてくれ俺がなんとかするからさ」


「はい!その為にも貴方を夫にしたのですから頑張っていただけると嬉しい限りです」


全くもも油断もならないと思いながらしているとアンナがそろそろですねと言って来たので何と尋ねると実は魔女になった後遺症がここまで残っているのですよと言った次の瞬間にアンナは化け物に変わり果てたのである。


俺は一瞬だけ驚いたけどこうなっても恨みを晴らしたいことがあったのだなとむしろ同情して話をした。



「別に俺は何も思わないよ、そんな姿になってもお前はお前だろ、今後も二人で頑張ろうぜ」


「コンナワタシヲウケイレテクレルノ」


「当たり前じゃないか、むしろお前の秘密を知ることができて良かったぜ。これからも宜しくな、アンナ」


俺はアンナにそう伝えるのだった。




・・・・・・・・・・・・


私は醜い魔女になった、それは今でも後悔はしていないと言えば嘘になるけど復讐の為にはそうするしかなった。


けれども私は満月の時には本来の姿にならず化け物みたいになってしまっていた。


その姿は私でも醜いと思えるほどでこんなやつを誰が好きになってくれるのか。


こんなやつを誰が認めてくれるのかと思っていた、現実に私の見にくい姿を見た使用人やメイドたちが泣き叫びながら化け物など叫んでは敵対してきた。


私はそんな者たちを何度も殺してきた、だから今回もそうなるのかそれとも私の力が欲しいから我慢をするのかと思って私はアクトを試したのである。


他の使用人やメイドたちみたいに化け物扱いをすれば殺せばいいし、もし我慢をするようであれば利用をするだけだと思って試してみると私の予想を超えた結果が待っていた。


なんとこの姿を見ても彼は全くも対応を変えなかったのだ。


普通なら怯えるか恐怖または化け物と言う感情がこみ上げてくるのに彼には全くもなったのである。


それはまるで・・・私は怖くないのかと尋ねるとアクトは笑顔で別にそんな事はないからそれよりも秘密を教えてくれてありがとうと言われた。



その時に私は人間だった頃の想いが蘇った。それはかつてあの男に対して抱いていた感情・・・つまり、恋であった。


もう魔女になってすることはないだろうと思っていたのにここに来て私は恋をしてしまった。


ありのままの自分を受け入れてこの見た目も何事もなく接してくれて私が閉ざしていた心の扉を簡単に開けてしまったのだ。





だから私は彼が・・・彼が・・・ほしい・・・ほしい・・・・





ほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしい・・・だから決めました!



アクトさんと私は深淵よりも深く呪い、愛し合うと・・・・・キメマシタ!!


ダレニモジャマヲサセナイ、カレハワタシダケノモノダ!!ダレニモユズラナイ!!



アクトが知らない間に一人の魔女は完全に恋に落ちてしまったのだった。

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悪徳貴族に転生したけど改心なんて絶対にしない!!それはそうと利用しているはずのヒロインが何かおかしい気がする 人中の蝮 @atkeda

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