最終話 あいしてる

私たちは塔の最上階にいる。


そしてカオルを安全なところに置く。


「なあ」


「どうしたの?」


「私達が存在していた証をカオルに残そうと思う」


「うん、いいと思う!」



カオルの側に"それ"と私たちの指輪を置いた。


じゃあね、元気でいるんだよカオル。そして


「愛してる、カオル」




「ねえ、ベータ」


「どうした、絵萌」


最後に伝えたかった。


「私、幸せだよ、これで終わりだとしても、ベータ、私を救ってくれてありがとう」


すると彼は笑い


「私もお前に救われた、お前の温もりが無かったら今の私はいない」


「本当にあの時はありがとう…本当はもっと早く言えば良かったと思ってる。だが言わずに終わる方が嫌だから」


「それはお互い様だよ、こっちこそありがとう」


私の目から雫が流れる。これは悲しみからじゃない…幸せだからだ。


「きっと死は私たちを分つことはできない」


「私達はずっと一緒だ」


「行こうか」




私たちは落ちている、バラバラにならないように抱き合いながら。


そして頭の中に映像が流れる。


他の悪魔に襲われた時、助けてくれて抱きしめて私に優しく言葉をかけてくれた時。



そして、一つになった時。



『でもね、唯一ベータは私を愛してくれる。私はベータと一緒にいる…私はベータと一緒にいれるなら悪にだってなる』


ベータのそばにいると誓った時。



一緒にボードゲームで遊んだ時。


『一曲踊っていただけますか?』


『はい』


ワルツを踊り明かした時。



『どんな事があろうと私はお前だけを守り、愛すと誓おう』


『うん、私も何があっても一生ベータ愛し、そばにいると誓う』


お城で誓いを立てた時。



『今回は一緒に戦おう、一人で背負わないで。私だってやれることはあるよ』


『嗚呼、一緒に戦おう』


共に抗うと決めた時。



『初めての指輪がこんなので情けないが、受け取ってくれるか?』


『情けなくないよ…すごく嬉しい…!』


お揃いの指輪をはめた時。


そして



『おぎゃあ!おぎゃあ!』


『やっと会えたね…カオル』


『嗚呼、絵萌もカオルもよく頑張った』


『私たちが絶対守るからね』


カオルを産んだ時。嬉しかったなぁ。




ああ、どの時も本当に…


「本当に幸せだったよ、ベータ…!」


「嗚呼、私もだ」


『愛してる…ずっと』


言葉と溢れる幸せな雫と共に私たちは…





_数十年後


俺は父が遺した"それ"を見ていた。


"それ"は一見本に見えるが、人の記憶を見れるものだ。


その記憶とは、父と母の幸せな記憶だ。


俺はこれを見るまで「なんで俺を罪人の子にしたんだ」と父と母を恨んだ。


俺は罪人の子として迫害されまくった。


でも、父と母は俺の幸せを願ってた。だからこの方法を選んだ。


だから彼らは俺を道連れにしなかった、そんなの"それ"を見れば一目瞭然だ。


生きてればいつか幸せになる。"それ"はそう物語ってる。


だから、俺は俺で幸せになる。


「それが願いだろ?お袋、親父…ちゃんと見守っとけよ?」


俺は1歩を踏み出す。




これでこの話は一旦お終いとなります。


ですがまた別の物語が生まれるのでございます。


カオルがこの後どうなるかはまたいつかの機会にと言うことで。


え?わたくしが誰かって?


わたくしはただの記録者でございます。


嗚呼、そろそろ閉幕ですのでまた次の機会にお会いいたしましょう。では。



                 End

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪魔と籠の鳥 揺月モエ @nakamoe0429

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ