第8話
4月。
キャンピングカーをレンタルして、俺は富士宮へと来ていた。
富士本宮浅間神社の鳥居を眺めながら休憩をしている。
これから、本栖湖方面へと向かう予定だ。
139号線を北上するコースの為、35kmと割と近い距離合いだ。
夕方…そう、夕日が沈み始めた頃に駐車場を後にした。
その為、富士山を真横に望む頃には東済みあたりは暗くなっている。
ライトの明かりが、暗闇に吸い込まれていく。
ライトの射光を立てても、行先は分からないほどだ。
35kmが永遠にも長く感じる。
車のカーナビも直進を告げている。
道を間違えたわけではない。
体感では、数時間が経っている気がする。
やがて、俺は大きな建物へと辿り着いた。
道の真ん中に、とても大きな建物の陰がある。
その全容は、暗闇で見ることができない。
俺は、車を停める。
道に迷ったときは、大人しく朝になるのを待ったほうがいいのかもしれない。
辺りに光源になるものもないし、今日は新月だから月明りすらない。
今日は、この場所で車を停めて眠ることにしよう。
キャンピングカーの為、寝るスペースはあるし一応キャンプ用品も積んでいる。
俺は、キッチンで夕飯を作ることにした。
富士宮で、食材を買ってきているし焼きそばが食べたくてその材料も購入していた。
元々は、本栖湖の見える場所でキャンプをする予定だった。
まあ、取り敢えず明日に備えよう。
換気の為に、窓を少し開け調理を始めた。
焼きそば…富士宮焼きそばを作る。
太麺に、油粕を入れた焼きそば。
材料は、容易に買うことができた。
コンロに、火を通しフライパンにラードを通す。
小間切れの豚肉と肉粕を炒めていく。
肉の焼ける匂いが鼻腔を衝く。
食欲を誘う。
グーとお腹が鳴った…気がした。
ジューっと肉の焼ける音以外に、低めな音が幾重にも重なっていく。
俺は、キョロキョロとあたりを見渡す。
車の窓に、無数の視線があるのに気付いた。
ヒーっと小さな声を上げる。
俺は、恐る恐る窓の外に目を向ける。
暗闇の中に、金色に輝く光があった。
光源はないが、暗闇に光る瞳…猫の目のようだ。
だが、その光は普通の猫の高さにはない。
ずっと、高い位置だ。
暗闇に目が慣れない。
うまく見えない。
俺は、意を決して車のドアを開け外へと出ることにした。
ドアが開いた瞬間。
何かが、俺にぶつかる。
小さな子供だった。
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同異世界転移
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グランピング・カフェ&キッチン 『シリウス・プラン』 天風 繋 @amkze
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