ナナたん ひみちゅ

オカン🐷

もちもちちゅる

「いーい、ナナ、もうお池には近づいたらだめよ」

「アヒウたんとチャプチャプ」

「ナナ、泳いだのではなく、溺れたの。庭師のおじさんが助けてくれなかったら死んでたの」


 死ぬというのが、どういうことか説明するのが難しい。

 

 庭から入れるジャグジーから続く風呂場で、ナナの体を洗いながらルナは考えていた。

 

 ナナは人の気も知らないで嬉しそうに笑っている。

 

 ツインテールにしていたゴムをナナの手首に通すと、バスタオルにくるんで浴室から押し出した。


「ママもお風呂すませちゃうから、パパに服を出してもらって」


 ドライヤーで髪を乾かしていると、ナナの髪を乾かしたドライヤーを返しに来たカズ。


「ナナ、えらくご機嫌だけど、ルナちゃんはそうでもないみたいだね」





 

 翌日、シッターさんが帰るとナナの姿がない。


 あの子ったら、また池に行ったのかしら。


 頬を膨らませたナナが帰って来た。


「ウーたん、おいけない。おじたんがだめって」

「ナナがお池に入らないように工事してるの」

「こーじ?」

「お池の周りに柵を作ってもらってるの。だから、今日はお部屋で遊ぼうね」


 隼人と蒼一郎が珍しく子ども部屋で遊んでいる。


「おー、新品のレゴ。ナナ、これでアヒルのトンネル作ってやるよ」

「アヒウのトンネウ」

「ナナはまだルが言えないのか。アヒル、ルだよ」

「アヒウ」

「もういいよ」


 二人の兄にトンネルを作ってもらったナナは、アヒルのおもちゃでご機嫌に遊んでいた。


「ママ、手を洗ってきたから手伝うよ」


 歩行器に載せたマナとエナに交互に離乳食を食べさせていたルナに隼人が言った。


「ありがとう、だったらエナをよろしく」

「本当にこっちがエナ? また間違えていない?」

「う~ん、たぶん」


 蒼一郎が言った。


「ぼく、ふたごでなくてよかった」

「そうだよな。親に間違えられて名前呼ばれるのやだよな。ママ、次は男を生んでよ。このままじゃバランス悪い」

「ママは赤ちゃん製造機じゃありません」




 シッターさん、ベッドメイク係に掃除係、あとナナと接点のある人。


「中根シェフ、ナナがスマホ借りに来てませんよね」

「ここは火を使うので扉はいつも閉めてます。だからナナちゃんも来てませんね」


 あとは誰に訊いたらいいのだろう。


 リビングのソファーに義母と秘書の桐ケ谷が向かい合って座っている。


「あの、つかぬことを伺いますけど、ナナがスマホを借りに来ませんでしたか?」

「それなら私が買ってあげたわよ。何度も借りに来るから」

「ママー」

「手続きは私が。もう一台のスマホは日本のルナミさん宛に送りました。二者間だけ通話ができるようにしたんですけど」


 桐ケ谷秘書が胸を反らせた。




            【了】

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ナナたん ひみちゅ オカン🐷 @magarikado

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