第62話 変身

「うーーーーーん……おいしー!」


精霊とのやり取りが終わった所で、レジェンドプラスにした弓のいらない方をバグリンに食べさせる。

余程美味いのか、これまでにない程の反応をバグリンは見せた。


具体的に言うと全身がピカピカ光ってる。


大丈夫かこれ?

って少し心配になる程に。


「どうだ?」


「えへへ、レベルアップしたよ。スキルもふえた-」


「お、そうか」


ステータスを確認すると、レベルは一気に110まで上がっていた。

これなら数本でレベルマックスまで行けるかもしれないな。

ただまあ、暫くはこのままだけど。


魔神竜の影の事あるから。


一応約束しているので、魔神竜の影討伐は可能な限り本気で取り組む気だった。

倒せたら気持ちいいだろうってのもあるし。

ゲーマーですから。


で、俺は9人の仲間を集めて戦うつもりな訳だが、勝率を高めるためには全員がレジェンド+の武器を身に着けるのが理想的だ。


が、用意出来るのは俺だけ。


なので、武器種毎に2個しか手に入らない物を無軌道にバグリンに食わせる訳にはい。

効率を上げる為にはそれぞれの適性にあった武器が必要となるので、メンバーの決まっていない今、対応できる物を失ってしまう可能性があるからだ。


え?

さっきやった弓は良いのか?


アレは良い。

使い道のないマジもんのゴミだから。


……オプション関係が全部派手なエフェクトが出る宴会芸的な物で、レジェンド武器以下の火力とか何に使うんだよ。


いわゆるおふざけ武器である。

最高ランクの武器でそんなもん作るなっての。


「ステータスは全部+2はそのままか」


100を越えたら更に補正が上昇!


とか期待していたのだが、流石にそれは無かった様だ。

まあ全ステ+2の時点でとんでもなく破格なので、それ以上を求めるのは流石に厚かましすぎるわな。


「スキルは……ドッペルゲンガー?」


ドッペルゲンガーはもう一人の自分と呼ばれるものだ。

もう一人の自分を見たら死ぬとかそんな話もあるが、まあスキルなので関係ないだろう。


「なになに……自身の主を丸々コピーする」


効果時間は10分で、クールタイムは1時間。

効果は名前から連想できるイメージ通りの物の様だ。


「どの程度コピーできるんだ?バグリン、一度使ってみてくれ」


「はーい。えーい!」


バグリンがスキルを発動させると、その体が膨れ上がって形を変える。

まんま俺の姿へと。


「へー、ちゃんと色も変わるんだな」


形だけではなく色も全く同じになり、身に着けている鎧に触ってみるとその質感も完全に再現されていた。

これなら他の人間からは、どっちが本物かは分からない筈だ。


「能力は……と」


装備類の補正まで完全に一緒だな……


バグリンのステータスを確認すると、補正やスキルも含め全て俺と同じになっていた。

完全コピーと言っていいだろう。


「えへへ、いっしょだね」


「ああ、そうだな」


一つ違いを発見する。

それは声だ。

変身したバグリンの声はそのまんまである。


ま、大した問題じゃないな。


「武器を触るぞ」


腰のホルダーにセットされている、極光の刃を手に取る。

が、手に取った瞬間消えてしまう。


「装備は他の人間には持てない訳か」


装備を俺が預かってその状態でバグリンが変身解除。

そのまま武器が残って増殖のいっちょ上がり!

というのは、どうやらできそうにないな。


残念。

出来たらそれを食わせるセルフレベル上げで、バグリンを一気にカンストまで持っていけたってのに。


「ふむ……」


そういや特に何も考えてなかったけど……バグリンって交換したレジェンド+の武器でカンストまで行けるんだよな?

勝手に思い込んでいただけで、実は他の条件がって可能性もなくはない。


例えば、泉の交換品では駄目とか。


交換以外の入手方法としては、アルティメットレイドのドロップになる。

もしそうなら、達成難度は一気に跳ね上がってしまう。


「なあバグリン。さっき食べた武器と同じ様なので、まだレベルは上がりそうか」


「うん!」


大丈夫なようだ。


まあ少なくとも、レベル110の現在は。

という話ではあるが。

119とかで変化する可能性がないとも言い切れない。


……ま、その時はその時に考えるとしよう。

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