わたしが愚かになってから

クニシマ

田子雅史監督作品『ボクが愚かになった日』公開記念対談-田子雅史×佐橋竜之-(雑誌『映画人』1988年5月号より)

田子たご:ヨロシク。

佐橋さはし:よろしくお願いしますね。

田子:ひどい雨ですよ。(編注:取材当日、都内は記録的豪雨に見舞われていた)

佐橋:ハイ、雨男なんです、ボク。いつも申し訳ない。

田子:さてと、いやコリャ傑作が出来たねえ。

佐橋:おっと(笑)、強気ですねェ監督ったら。監督なんてのはやっぱりこうでなくっちゃ。

田子:こんなのは言うだけイイんだから(笑)。ハイ、なんだか話さなくちゃいけないんですね。『ボクが愚かになった日』という映画をですね、この度、不肖ワタクシ田子雅史まさし、撮らせて頂きまして、公開と相成りましたわけでございますです。

佐橋:不肖、佐橋竜之たつゆき、主演を務めさせて頂きましたわけでございますです。

一同:(笑)

田子:竜之クンには大変お世話になりまして。

佐橋:イヤイヤ、ボクのほうこそですよ。

田子:最近なんてもう映画からテレビドラマからまあどこ見ても竜之竜之。

佐橋:そんなことありませんよ。

田子:謙遜なさんな。引っ張りだこの役者ですからね。もうぼくの映画なんて出てくれないんじゃないかしらと思ってましたけど、なんと快諾して下すって。

佐橋:当り前ですよ、ボクはねえ、監督のお誘いならなんだって飛びつくからね(笑)。

田子:なんたって佐橋竜之をここまでの役者に仕立て上げたのはこのぼくですからね(笑)。イヤ冗談、冗談。

佐橋:冗談なんて、本当にそうなんだから。監督がね、『溜息の影』(1981年公開)でボクを使って下さって、今のボクがあるのはそのお陰ですから。

田子:有難いことですね。

佐橋:有難いことです。

田子:さて、前置きはこのくらいにしまして。竜之と喋ってるとどうも話が進まない(笑)。なんだかどんどん別な方向に行っちゃって。

佐橋:歳が同じだから感覚が近いんでしょうね、いつまでも喋ってられるの。

田子:そうそう。エーット、なんでしょう、ああ役者についてね。

佐橋:花間はなまさん(花間百合ゆり)、麗しくてらっしゃって。

田子:ウン、イメージがピッタリ合ったんだよね、竜之と花間ちゃんは。よくお似合いの二人で。

佐橋:映画の中でなくちゃ花間さんはボクなんか相手にしてくれませんから(笑)。

田子:映画の中でも最初はムゲにされる役どころですからね、竜之は(笑)。情けない顔が上手なんだ、また。

佐橋:ねえ、褒めてないでしょ、それ(笑)。

田子:褒めてるんですったら。あんなのはもう大スキなんだから、ぼく。

佐橋:嬉しくないなァ。

田子:ハイ、題についてもね。これもねえ、結構言われたりもするんだけど(笑)。まあ、愚かになるっていうのは、そのまんま。恋をするっていうことだね。恋に落ちると、人は馬鹿になっちゃうっていう……特にオトコはね(笑)。

佐橋:(笑)

田子:まあ、これが『ボクが恋に落ちた日』や何かだったりすると、ちょっとばかりツマラン。と、そんなところだね。

佐橋:ウーン、まったく。愚かになる……そういうものだよね、結局、恋っていうのは……。

田子:おおっと、ナニ何、その悩ましげな顔は(笑)。これは今、全国一千万の竜之ファンが泣いたんじゃないか(笑)。

佐橋:イヤイヤ(笑)。ボクのファンは泣かないんですよ。泣かされるのはいっつもボクなの……(笑)。

田子:(爆笑)

佐橋:……そんなことはどうでもいいんです(笑)。

田子:これが公開されたらまた一段と増えますよ、きみを泣かすやつが。

佐橋:勘弁してはいただけないでしょうか……。

一同:(笑)

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