佐橋竜之還暦記念・田子雅史×佐橋竜之クロスインタビュー前編(雑誌『映画人』2012年3月号より)

——本日はよろしくお願いいたします。

佐橋:よろしくお願いします。

田子:はい、よろしく。大丈夫でしたか、雨は。だいぶ降ってましたでしょう。

——お恥ずかしながら傘を忘れまして、ずぶ濡れになってしまいました。

田子:この人が雨男なんですよ。

佐橋:すみません、本当に。いっつもこうなんです。

——佐橋さんのせいでは……。

田子:いえ、この人のせいです(笑)。

佐橋:ひどいなあ(笑)。

田子:いやあ、そんな竜之もついに還暦を迎えたということで。

佐橋:監督から二ヶ月遅れで。

田子:こっちの世界へようこそ。

佐橋:六十超えたら五十代までとは全然違うというのが監督の持論らしいんです。

——まだまだ、これからでしょう。

佐橋:ボクはそう思うんですけどね。

田子:いや、老兵はなんとやらですよ、もう……(笑)。

佐橋:こんなこと言ってもなんだかんだやる人ですから、この人は(笑)。

——(笑)。さて、最新出演作『ヘミングウェイ・カクテル』(2月公開、益田ました都式としき監督作品)では、原点回帰ともいえるような役柄を巧みに演じられていた佐橋さんですが。

佐橋:ありがとうございます。田子監督も観てくださったようで。

田子:観ましたよ、当然。竜之にはもう何度も言ったんですけど、悔しくてねえ……(笑)。

——と、おっしゃいますと?

田子:ぼくが撮りたかった……(笑)。今、竜之をあれほど美しく撮ることができる監督っていうのはぼくか益田かなんてところがありますからね。鼻差でぼくのほうがやつより上手だと思いますがね。

——(笑)。佐橋さん、愛されていらっしゃるんですね。

佐橋:ありがたいことです(笑)。田子監督も、撮ってくださいよ。ボク、待ってるんですからね。

——田子監督と佐橋さんが前回タッグを組まれたのはもう五年前になりますね。

田子:撮りますよ。

佐橋:おお、堂々の宣言。

田子:今年はね、ぼくと竜之の年になりますから。

——一ファンとして、楽しみに待っております。

田子:そう言われちゃうと、ちょっとプレッシャーが……(笑)。

佐橋:ボクら、プレッシャーに弱いんです(笑)。

——(笑)。それでは、お二方のこれまでを簡単に振り返っていきたいのですが。

佐橋:監督が最初にボクを使ってくださったのは『溜息の影』という短編作品でしたね。

田子:あの頃はまだぼくも駆け出しのペーペーだったんですが、割に評判がよくて。

——佐橋竜之という俳優像を確立させた作品だったと思います。

田子:嬉しいことを言ってくださいますね。

佐橋:ボクもそう思います。

田子:調子いいんだから。

佐橋:それから、『善き時よ!』、『ボクが愚かになった日』、『まつりか』、『州々の生存者たち』、と。

田子:『善き時よ!』なんて、誰も知らないんじゃないか(笑)。

——いえいえ、『映画人』の読者なら、きっと大丈夫です(笑)。

田子:だといいんですが(笑)。『州々の生存者たち』は当たりましたねえ。

佐橋:あれは共演の皆様も豪華でしたね。

田子:そのあと『くるしくては』と『ミルス』、一番最近が『それからの日』で、もう五年前になると。

佐橋:早いものですね。

田子:歳を感じるでしょう。まったく、老いるっていうのは……。

佐橋:すぐそれだ(笑)。もう今日はそれ、禁止でお願いします。

田子:まいったなあ(笑)。

——(笑)。

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