第2話 「くっ!殺せ!」→「「え!!」」
「やばいよ、親友。10年前に捕まった女ゴブリンがさ、いま、いい感じなんだって!」
「なんだよ、お前。異種族愛とかだったの? 女なら誰でもいい感じ?」
「えーーーーー!! だって見たいじゃん!! ゴブリンの姫だってさ! そこらのはげちゃびんの小汚いヤツらと比べると月とスッポンだって」
「まあ、昔から言われてるな。でも、あれはここらを当時纏めていたギルドの息子の黒騎士さんが少年の頃手懐けて捕まえたらしいじゃん。もう、テイマーだよな。すげえ。俺黒騎士さんの方が憧れるわー」
「えー…、でも、見にいくだけ見に行こうぜ! ほら! このドッグタグ! オレたちも戦士の一員!
チラ見くらいありだろ。なんでも捕まってから10年経って、そのメスゴブリン、めっちゃ、いい体つきなんだって。もうっ、すんごい衣装で際どいの!
冒険ブックに載ってたの、オレ、興奮しちゃった、ヤバいよな」
「ああ、どうせ脚色された釣り広告というか絵師の技量と編集部の策略というか。……まあ、でも、そのメス個体のおかげでたくさんのゴブリンおびき寄せられたらしいし? 今じゃ弱点も見つかってかつての脅威から更新されて、俺たちビギナーでも狩れるモンスターになったもんな」
「そうそう! 親父たちの代もその討伐イベントで稼いだらしいしさ! ちょっくら伝説拝みにというか、物見遊山? 見せ物? とにかく見たいけど、危険な個体だから冒険者2名以上で見学登録って古いけど決まってるんだよ」
「いまやゴブリンも1日に1回遭遇するかどうかだしな。よし。ゴブリンの姫個体。一緒に組んで見学しに行ってやるよ」
「! サンキュー!! 親友!」
✴︎
「くっ、殺せ!!」
「「えっ!!」」
檻の中では小柄な、金髪の美しい、人間とは別種族の妖艶な美ゴブリンがいた。
胸はおおきく垂れ下がりそうな、しかし張りのある、今まで見たことない巨乳が。
革製のカップのような形をした衣装に受け止められている。
腰は丸出しでくびれていて、尾てい骨の形がよくわかりそうなほど、こちらの下半身はピッチリとした、やはり革製の光沢のある衣装で大事な部分だけ隠されている。
そして、乳がより揺れ、垂れるように、手首は手錠をはめられ上半身は半ば吊るされている。
辛そうなポーズだ。
それよりも。
「「ゴブリンが喋ったッ」」
じつはこの特別な。いずれは女王となるべきはずだった姫ゴブリンは特殊な声帯と知能を持ち、人間で言うところの15歳くらいの知能は備えられるのだ。
「そこのお前達! この私を死姦してたのしいか?! このような辱め、受けとうない! 小僧ども! いますぐわらわを殺せ!!」
「めっちゃ喋るじゃん! しかも『くっ殺』!」
「エロ漫画でしかみたことなかったよな。聞いたことも無かった……」
鋼鉄製の檻の近くにプレートが立っていた。
「あなたのお好きな言葉を吹き込んでください。
どんな夢も思いのまま。さあ、教育しましょう。」
どんな趣味?!
冒険者なりたての2人は困惑した。
「えー、やばい、ぜったい、特殊な趣味とか卑猥な言葉教えた人いるよー……」
「でも、お前の言った通り、ゴブリンにしては、その……」
良い体してる。妖艶だ。
好奇心旺盛な2人が互いを見合う。
片方はにやにやしながら。
「えー? 殺しちゃうの、もったいないなあ……。ねえ、オレのものにならない? 言ってみて、『私を好きにして』」
「お前、よせよ、覚えたら今度は変な商売が始まるだろ。ギリギリアウトだよ。つうか、俺はモンスターに自分から『殺せ』なんて言われると思わなかったよ……。助けたりはできないけど、このメス、ここでずっと仲間を誘き出す餌をやりながら年くうんだよな……」
ガシャッ!!
手錠が大きく揺れる。
「お前達の薄汚い性根は理解しているぞ! 私を使って、同胞狩りをしたことも! 今も続いていることも! さあ、私を好きにしてみるか?! 人間の男など、噛みちぎってやる!!」
「ずいぶん語彙が豊富だな」
「苦労と人間の悪意とか、このメスの学習能力の高さとか。とにかく、複雑だ。仕込んだのは誰だろうな」
2人は語り出す。
オレがギルドの長かその息子の黒騎士サマなら、うんといじめて卑猥に育てて、とじこめちゃうね、と笑う冒険者。
性格悪いこと抜かすなよ。とりあえず、こんなことは俺たちが冒険者として身を立てられるようになったら、この個体、なんとか静かに幽閉しようぜ。哀れだよ。
調教するの?
馬鹿。一生を大事にしてやりたいんだよ。
モンスターも、俺たちを襲ってこなきゃ良いんだけどな。
無理だろ。種族が違う。
……さて、帰ろうとプレートの裏を回って出口に向かおうとした時。
プレートの裏には
「姫をご所望でしたら、安全対策を被り、できる限りの『展示』をいたします……。合言葉は×××」
2人して、笑いながら、あるいは呆れながら。
「「腐ってるな」」
女ゴブリン、檻の中 明鏡止水 @miuraharuma30
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
「天国」はわからない/明鏡止水
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます