クッションくんの告白
愛工田 伊名電
僕自身、こういう形で生を受けてしまったからには仕方ないと思ってる。んで、見りゃあわかると思うけど、僕はクッションなんだ。
ベトナムで生産されて、仲間たちと永遠とも感じられるような長〜い間船に揺られて、ニトリの店頭に並べられて…みたいに、色々あって今君と話をしてるってわけさ。
縦65cm、横25cmで重さ250g。
組成の内訳は即生地が綿100%、中がポリエステル100%でジッパーはプラスチック。
漂白剤はダメ、タンブル乾燥もダメ、アイロンもダメ、ドライクリーニングもウェットクリーニングもダメ。
自分で言うのもなんだけど、いわゆる『繊細さん』だと思うよ。僕の組成表示タグを見たお母さんのしかめっ面は忘れられないね。
僕があの家に住まわしてもらって、最初の方はめちゃくちゃ最高だった。
「買ってもらえた」っていうことと、「こんなにかわいい男の子の眠りと安らぎを、僕が支えられるんだ」っていう2つの嬉しさが同時に僕に舞い降りたんだ。神は見てくれてるなぁ、って感じたよ。
で、そこからだいたい3年とかかな。
涼介くんが9歳になって、お母さんと寝るのを卒業したんだ。だから、お母さんと一緒に寝てたのが、一人で寝るようになったわけだ。
ここからが僕の地獄の日々の始まりさ。
なんてったって、涼介くんが僕の顔にアソコを擦り付けて、何分かたったかと思えば汗だくのとろけた顔を晒すようになったんだからね。性の目覚めが早すぎるってんだ、あのクソガキめ!
…ごめん、取り乱した。今のナシ。
まぁ、要するに。僕はただの縦長で柔らかいクッションから、早熟な9歳児の性玩具になっちまった訳さ。わかるかい?この屈辱感。もうレイプだぜ、レイプ!
この地獄の日々はいつまで続いたと思う?「親に叱られて1ヶ月」? そんな生ぬるいもんじゃないね、正解は4年。上手いもんで親にバレずに4年だよ、4年。
アイツが13歳になるまで、僕は顔にアソコを擦り付けられ、ほんのちょっとしか出ない
考えてみてよ。君の顔にさ、4年間毎夜毎夜親譲りのちっちぇ〜ガキのチンポが上下に擦り付けられるんだ。
ある時は2分。ある時は2時間。明かりなんてどこにもない真っ暗な空間で、ひたすら顔にガキのチンポが擦り付けられ続ける。
子供用に開発されたオナホールか、ショタコンおばさんくらいしか良く言わないだろうね。
で、アイツが14歳になった頃、やっとこさ僕に救いが訪れるんだよ。アイツが14歳にしてようやく、ようやく手ですることを覚えたんだ。
「こんなヤツを産んだバカどもに買われるくらいならチンポに破られて捨てられたかった」
とか思ってた僕にとっちゃあ、買ってもらったこと以上の感動と衝撃だったんだ。これで僕はお役御免。引越しの時に親戚の子に「おさがり」とか言って押し付けられて、その子の家で暮らすんだろうな、とばかり思ってたんだ。
で、ある日、お父さんお母さんが引越しについて話し始めたんだ。
嬉しいに決まってるよ。親戚の子に「おさがり」とか言って押し付けられて、その子の家で暮らすっていう未来があるかもしれないんだからさ。
そして引越し当日。周りの漫画本とか目覚まし時計とかが、青いシマシマシャツのお兄さんにテキパキとダンボール箱の中に詰め込まれていって、枕と布団は専用の袋に、僕はこの透明でツルツルした袋に詰め込まれたんだ。
苦しいねぇ〜、この袋の中は。なにせ体が圧縮されてるんだからさ。
で、いつの間にか僕は青いシマシマシャツのお兄さんの手によって、僕はこの真っ暗闇の空間の中に、君や、他の家具の方々と共に放り込まれちまった。
僕のこれまではこんなもんだ。
いいよなぁ、君は。かわゆいウマのぬいぐるみに発情するほど、アイツは根性ねじ曲がった馬鹿じゃないだろ?
え、マジで!?
クッションくんの告白 愛工田 伊名電 @haiporoo0813
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