第46話 世界と生き方

高い木の枝に座り下を眺めるサリヤ。眼下ではレイトが氷の盾を使いイノシシの突進を止めようとしている。しかし強度が足りず直ぐに破壊されている。突進を何とか避けてはいるが身体強化魔法は不慣れなようで倒れこんでしまったり、イノシシに当たり怪我が増えてしまっている。


(やっぱりアイスシールドの展開は速い。でも身体強化は上手く出来ていない。全身の強化を出来ないのと、強化の強弱が上手くいってないから避けれなかったり避けた先で怪我をしているのね。)


戦闘を見て今のレイトの戦闘力を計っているようだ。


(辛うじて避けられているのは狼王のおかげね。それにしても、)


「うぉぉ!!」


「ブォォォォォ!!!」


下では氷の盾とイノシシの突進が何度もぶつかりレイトの体力を削っている。


(攻撃を全くしてない。)


先ほどからレイトはアイスシールドしか発動しておらず防御や回避に徹している。いくらレイトの戦闘経験が低いといっても反撃くらいは出来ると思っていたサリヤだったが実際はそうではないようだ。


「戦いのない、平和な世界。」


レイトが元々いた世界。彼の話ではその世界では戦いが非日常で、命の危険が少ない世界だったという。ましてや別種の敵が目の前に出てくることすらありえないという。それを思い出したサリヤの顔は少し濁ったが、


「この世界で生きてもらうって決めたからね。」


枝の上で立ち上がりこの後の行動を決めたようだ。

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