第11話 雷獣 羅神

 それから数ヶ月が過ぎた。悪霊どもは鳴りを潜め影も見ない日々が続いている。悪霊もどきも羅神が食べ尽くしてしまったのか近所では殆ど見なくなった。

 その羅神だが珠になると小さいのだが、体の大きさを自在にできるらしい。普段は、舞美の傍らにいる羅神。学校には古から悪いものが多く巣食っているというが、それも羅神が食べてしまったようだ。たまに血だらけの侍の生首を嬉しそうにくわえて持ってきたりする(そんなの拾ってくんな!)

 

 そんなある日の事、いつも舞美の傍らに居るはずの羅神が珍しく朝から何処かに行ってしまって見当たらない。その日の午後の授業中の事、舞美の教室は五階なので街の遠くまで見渡せた。天気もよく気持ちの良い日和だった。


「眠い……眠い……眠すぎる……」

 

 数学の授業、舞美は悪霊とではなく眠気と闘っていた。気を抜くとすぐにでも意識が何処かに持って行かれそうであった。必死に耐える舞美が眠気を覚ます為、遠くの方向へ視線を向ける。

  

 すると遥か向こうから何かが屋根伝いに飛び跳ねてくる。羅神だ、羅神が家の屋根を『スタッ、スタッ、スタッ』とリズミカルに飛び跳ね舞美のいる学校へ向かってくる。学校に近づくと、ひときわ高く飛び上がり五階からよく見えるであろう場所を探しそこに降り立った。

 

 お座りをして顔を上げる羅神、よく見ると口になにかを咥えている。『悪霊もどき』だ、5匹の悪霊もどきの尻尾をがっちりと口で捕らえている。

 

 そうしていると羅神が咥えている悪霊もどきをグランドに放りだした。

一斉に逃げ惑う5匹の悪霊もどき達、羅神が何をするのか見ていると姿勢を低くし唸り声を上げた。

「ガアァゥゥゥゥゥ……」そして次の瞬間!

「ババアァァァン!!」眼の前に閃光が走り五本の稲妻が悪霊もどきを貫き粉々に粉砕した後、真っ赤な炎が焼き尽くした! 舞美は、突然の出来事に驚き


「ううわっっ!」『ガダダンッ!』


 驚きの余り席から立上り、その勢いで椅子が後ろに飛んで行ってしまった! 


「こらぁ! 東城ぉ! 何寝ぼけてんだ! 目を覚ませ!」


 と先生から激が飛ぶ。


「すいません……」


 しかし、おかげですっかり目が覚めた、。又二郎が頭の中に語りかけてきた。


(ほう、この獣は雷獣の力があるみたいじゃな。普通は従えている者が教え込むのじゃが何処で覚えたのか判らんがこ奴、相当賢いぞ)


(雷獣! これは好機! 此奴が居れば悪霊退治も楽になる! なにせその一撃は、山をも消し飛ばすと言われているからな!)


(羅神が雷獣?)


 朝から行方がわからなくなっていたのは、この力を皆に見せる為、近所にはいなくなった悪霊もどきを捕まえに行ったからだった。雷を自在に操る雷獣羅神、雷珠として召喚できる事も分かった。未熟な舞美にとって頼もしい愛犬、いや相棒ができた。

 

 

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纏物語 つばき春花 @azqvc86gtr

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