第10話 この世への未練
その夜、舞美は不思議な夢を見た。どこかの河川敷、真っすぐ一直線の土手の道。その道の真ん中に立っている。夕日が川面に写ってとても綺麗だった。前から犬を連れた親子が歩いてくる。
(あれ? お父さんだ。 一緒に居るのは……私? ここは……? なんか見覚えがある河川敷……。そうだ……思い出した。私が小さかった頃、犬を飼ってたんだ、黒と白色で毛がフサフサした大きな犬、目の周りがパンダみたいに黒色だった……。名前は……ラッシー! そうだ、ラッシーだ。ここはお父さんとよく犬の散歩で通ってた河川敷の一本道。何処か大きな川沿いの土手。川面に夕日が反射してとても綺麗だったなぁ。)
舞美は忘れていた、頭がよくて食いしん坊でいつも舞美達、家族の傍に寄り添っていた愛犬「ラッシー」の事を。
そして場面が切り替わる。舞美は横たわるラッシーの横で泣きじゃくる自分の横に立っていた。父親が舞美の頭を撫でながら慰めている。
『死んじゃイヤだぁぁぁ』 (私泣いてる……)
『舞美、可愛そうだけどラッシーは……お星さまになったんだよ……』
『まだお星さまになってないもん! まだあったかいもん! ラッシー起きて!』
『舞美……』
(ラッシーって名前、お父さんが『名犬ラッシー』からつけたんだ。あの時……お父さんが一番悲しかったはずなのに私が大泣きしてしまったんだ……)
ラッシーと呟きながら目をそっと開いた。涙が流れていた。そのまま顔を傾けると傍らに羅神が座って舞美を見つめていた。
「今の夢、お前が見せてくれたの? 羅神……お前は、ラッシーなの? お前の未練は私達を守れなかった事? だからここにいたの? ずっと傍にいてくれてたの? ごめんね……気付いてあげられなくて……ごめんね……ラッシー……」
舞美は、涙を流し傍らに座る羅神の頬を撫でながら二度目の深い眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます