第2話 ドラゴンも大魔王もいるが、聖女だけがいない国〜裏

「ホリ先輩、ごめんね~」


 軽薄そうに見えているだろうか?大丈夫です、先輩。


 崖下には大魔王がいて、先輩を助けてくれますし、魔族の人達は義理人情に厚いそうなので、きっと先輩は魔族の国で幸せに生きていけますから。


 私の事は忘れて下さい。


 私は二ヶ月前、聖女召還とやらで異世界に引き込まれている先輩を見かけ、慌てて先輩にしがみつき、一緒にここに来た。


 聖女を召還した城の人達は女が二人来たことに驚き、私と先輩を見比べて、私を聖女と呼び、先輩を城の外に放り出した。


 先輩の可愛らしさを見抜けない奴らなんて全員爆発しろ!先輩を追い出した時点で、この国の奴らは全員敵だ!


 私は次の日から元の世界に戻るための方法がないか調べることにして古書を買いまくり、ある事実を知った。


 この世界にはドラゴンや大魔王がいる。それらは時に人々を襲い、時に聖女を要求する。この国の人々は自分達の身代わりに異世界から聖女=生け贄を召還していたのだ。


 ふざけんな!私の先輩を生け贄にしようなんて国は滅びろ!


『この国を滅ぼされたくなかったら城にいる聖女を大魔王に差し出せ』


 二ヶ月の調べで代々のドラゴンや大魔王は、結婚適齢期が近くなると妻を求めて聖女=花嫁を求めることや交渉次第では諦めてくれることがわかった。


 そして話は冒頭に戻る。


 私はこんな国に先輩を置いておけないと思い、王子を唆し、先輩を大魔王の国に通じる道があるという崖下に突き落とした。


『よくも女と謀って、この国を滅ぼしてくれたな!死刑だ!』


 私に好意を寄せる王子を利用し、私は古書を世界中から買い集めさせ、国庫を使い続けさせ国を破産させてやった。


 優秀な経理であった先輩を失った城は損失を回復する術を持たず、隣国に吸収されることとなり、無理矢理関係を迫った王子は私の正体に気付き、怒り狂って私を処刑台に送った。


 処刑台に立つ前に古書から得た知識で異世界召還の魔法陣を二度と使えなくさせたので私は満足だ。


 先輩に嫌われたままなのは辛いけど、先輩が幸せに生きてくれるなら私も幸せだ。


「私を騙そうなんて百年早いのよ、ミコ」


 ドラゴンに乗り、大魔王を従えた先輩が処刑台から私を助け出す。


 凄いです、先輩!先輩は男性の体を持って生まれた私を心の底から女性として接してくれた唯一の人!これからも先輩に一生ついていきます!


 私のあだ名はミコ。神子護という本名から先輩がつけた名だ。

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ドラゴンも大魔王もいるが、聖女だけがいない国。 三角ケイ @sannkakukei

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