閑話

第6話 遭遇と別離

なんつうか、久しぶりだな!

俺は湊皇一だ。

もと名家の四鳳院家の出身で、婚約破棄と名家追放とチーム追放のトリプルコンボを喰らった挙句、全裸で目隠しと猿轡されて拉致りやがった相手と一緒にダンジョン攻略したらなぜか世界初の100層突破を達成した、天才的な探索者だ!

情報多すぎるな……。


それで今何してるかって言うと、探索に関する会議中だ。


ダンジョン探索については120層までは辿り着いたんだが、そこのフロアボスが倒せなくてもう1年以上停滞している。


え?今は2002年だな。

俺……30歳になっちまったよ。


まぁ、それはどうでもいいとして、相変わらず早紀とは一緒にいる。

なんと結婚したんだぜ?それで俺の苗字を変えて湊になったんだ。


そんな俺たちなんだが、この前、ダンジョン協会のアルバイト募集に応募してきたやつの中に、"魔力の動きが見える"やつがいたから今はそいつと打ち合わせ中だ。


----chat----

皇一:魔力の動きが見えるって聞いたんだけどほんとか?だとしたら俺たちの戦いを見てほしい。

早紀:いまちょっと攻略に詰まっててね。なにか気になることがあったら教えてほしいの。

塔弥:俺でよければ……でも俺でいいんですか?

皇一:ほかに協会が話を聞ける相手で"魔力の動きが見える"やつがいないんだよ。

------------


"魔力の動きが見える"。これは非常に有効な特殊能力だ。

なにせ、敵が魔法を使ってくるタイミングがわかったり、ダンジョンに張られた罠が見える 。


探索者はたいてい魔力が多い人間がなるし、そもそもダンジョンが世界に登場した時点で人は魔力を持った。でも、その魔力が見えるやつは少なかった。


当然の帰結として、"魔力の動きが見える"やつはたいてい探索者チームに囲われてしまった。


一方で、探索者にならなかった人間の中にも"見える"やつはいる。

けれども、探索者にならない人間は探索者には関わってこないことが多い。


そんな中で、突然目の前に"魔力の動きが見える"やつがバイトの面接にやってきたと聞いて、即採用して俺たちのチームの専属にしたんだ。当然だろ?


早紀の守護兵10,000対召喚というとんでもないスキルごり押しで攻略する俺たちは、世界で初めて100層を突破した。

その後も探索を続けている。

しかし、今、120層で足踏みをしている。


期待しているのは、何かしらの攻略のヒントだ。

敵のモンスターと自分たちの魔力の動きを見ることで、攻略のとっかかりになりそうな何かを見つけたい。


そんなこんなで採用した男と、実際に動画を見ながらweb会議ってやつをやっている。

web会議ってなんだって?

最近開発された最先端システムらしい。

まだ一般利用は開始されてないよな???


めちゃくちゃ便利だぜ?


相手は大学生のアルバイトだし、東京在住じゃない。

そんな相手でも自宅近くのダンジョン協会内の建物まで来てもらえれば、動画を映しながら、チャットで会話できるんだ。これが通話だったらもっといいが、ぜいたくは言えない。将来的にはそういうのが出るだろうけど、今はこれだ。


----chat----

塔弥:100層までは敵も探索者も同じようなスキルを使ってた気がするけど、どうなんですか?なんか今のこの120層ではだいぶ違いますよね。こっちはそのままなのに……。

皇一:そうなんだよな。なんか色々違うんだよ。でも、マネはできねぇ。

塔弥:なぜですか?

皇一:体系がよくわからないからだ。どうやって覚えればいいのか……。

塔弥:そもそもどうやってスキルって使ってるんですか?覚えたら唱えるだけですか?

早紀:そうね。

塔弥:でも見る限り、魔力を出して、何かを起こして、発射する、とか、そういったステップを踏んでますよね?

皇一:そうなのか?わからない。意識したことがない。

早紀:わたしもだけど、塔弥くんはどうしてそう思ったの?

塔弥:思ったというか、魔力を見ていたらそう見えるという話です。スキルを使われるときの周囲の魔力を見ていると、「スキル名」→魔力がぶわっと出てくる→魔力が形を変える→発射される、です。魔法剣とかだと、発射じゃなくて切りかかる、ですが。

早紀:確かに自分が使う場合に感じるのはそうね。

塔弥:ということは、スキルとしてではなく、自分で魔力を出して、形を変えたりとかはできないんですかね?

皇一:考えたこともなかった。

早紀:たとえば、魔力……これを炎に……できるわね。

塔弥:それを発射するのは?

皇一:あち~~~~

------------


チャットしながら炎を作ったと思ったら、俺に向けて放ちやがった。

信じられないだろ?これが奥さんなんだぜ!?


----chat----

早紀:できるわ

塔弥:できましたね

皇一:できるわ、じゃね~よ!あちいよ!

塔弥:変化球とか、追尾とかは?

早紀:魔力を出して、炎に変えて、追いかけるようにお願いして、放つ

皇一:あぶね。2回もくらうか……あちぃ~

------------


くそっ、反転してきやがった。

あちぃよ……。


----chat----

塔弥:追いかけましたね……

早紀:塔弥くん、これはすごいことですよ?

塔弥:そうなんですか?

------------


マジですげぇよ。

革命的だ。

もしかしたら他国のトップランカーたちはすでに気付いてやってるかもしれないし、秘匿されてるだけかもしれないが、少なくとも俺たちにとっては革命的だ。


----chat----

早紀:スキルというか、戦闘のバリエーションが無限に広がるわ。ちょっとできることを確認するわ。そもそも今使えるスキルを全部分割して整理出来たら組み合わせを変えたり、さっきの追尾とかをくっつけるだけでも使える。今苦戦している敵とも戦えそう。

塔弥:そうなんですか?

早紀:複数同時出現で、順次撃破だと回復復活させてしまうし、行動が変わってややこしいけど、たとえばだけど、オーバーキルの攻撃をあてないように準備しておいて同時に着弾させて同時撃破するとかは可能になるかもしれないわ。もっと効率のいい別の倒し方もできるかもしれない。

------------


こうして、俺たちは無事に120層を突破したんだ。


そして、俺たちも仲良くなった。

塔弥は頭のいいやつで、よく俺たちの攻略をサポートしてくれた。

だから自然と仲良くなったんだ。

 

----chat----

塔弥:僕は10歳も年下の大学生ですよ?

皇一:そんなん関係あるか?お前は必要なメンバー、だから親しく接する、どこかおかしいか?

塔弥:おかしくなんかない……ですが

皇一:ほらまた敬語つかった

早紀:ぶぶーですよ、塔弥くん

塔弥:うぅ……

早紀:それに君がもっと砕けた性格なのは知っているんだから、仲良くしてくれないとお姉さん悲しいわ

皇一:おぉ?早紀を泣かしたらぶっ飛ばすぞ?

塔弥:えぇ……

早紀:と、世界2,176,352位が申しておりますが

塔弥:wwwwww

皇一:おい、早紀!横攻撃やめろ!

塔弥:わかった。わかったよ。僕なんか探索者ですらないのにそれでも……

皇一:そんなん関係ねぇよ。お前の分析が必要だ。100層以上なんて頭おかしいからな

------------


なっ、自然だろ?



でも、残念ながらこの後、塔弥が死んじまった。

ふざけんなよ?


なぁ、おい!



まじかよ……。



****

ここまでお読みいただきありがとうございます!

ぜひ引き続き応援お願いいたします。


本日新作の投稿を開始しまして、その作品は、この作品と同じ世界(ダンジョンでボスが登場する階層などは、時代の経過とともに変化がありますが)の2023年以降を描いた配信ものの作品になります。


その登場人物は皇一と早紀とかかわりがある人物なので、昔話(皇一と早紀の物語からしたら未来の話)を投稿してみました。

もしよければご覧いただけたら嬉しいです!



『リッチ様の探索者育成譚~2回の異世界転生で地球に戻ったのにダンジョンのフロアボスになっていた最強の俺は、配信しながら超可愛い探索者たちを育てて世界崩壊を防いでやるぜ!』

https://kakuyomu.jp/works/16818093078652902480

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 07:08 予定は変更される可能性があります

【1章完結】頑張ってダンジョン攻略したけど失敗した俺……婚約破棄とチーム追放と名家放逐を食らったけど凄まじいスキルの女の子に俺のスキルかけたら最強なのがわかって元パーティーを壊滅させたボスを蹂躙した件 蒼井星空 @lordwind777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画