黒鬼、自己紹介する

「や、やぁぁぁぁぁ!!」


「あっ?!ま、待ってください!!」


勇者のような少女がシスターの衣装を纏った少女の静止を振り切り、半ばパニック気味に剣を引き抜き、斬りかかった。


「ちょいちょい?!危ないやろ!!落ち着き!ワシに敵意はないから!な?」


「あ、悪魔退さぁぁぁぁん!!!」


「いや誰が悪魔や?!」


彼女が持っていた剣自体は業物のようであったが、まだ戦い慣れてないのか剣筋が見えやすかった。


「まずは落ち着かん....かい!!」


「はぅっ?!」


黒嵐童子は少女の首に手刀を入れ、なんとか気絶させた。少女はすぐに彼にもたれかかり寝息を立て始める。


「そ、それ…死んでない…よな?」


「死んどらん死んどらん!ちょっと気絶させてるだけや、こんくらいしないと止まらんくらいの勢いやったからな、許して!」


困ったような笑顔で手を合わせる。そして勇者のような少女を地面に優しく寝かせると、頭を掻きながら少女たちを見る。


「えーっと、とりあえず自己紹介からやってこか?」


◆◆


勇者のような少女も目を覚まし、一通り少女たちは自己紹介を終えた。


まず、勇者のような…というより勇者の少女はセレナ・レフリーナ。


魔法使いの少女はクイード・マルナード。


剣士の少女はブレント・ソルドナット。


シスターの少女はセイン・シェリンというらしい。


「まるっきり外国の名前やなぁ…ワシは黒嵐童子こくらんどうじ。あと!!ワシは悪魔やなくて鬼や!!!」


さっきから悪魔と間違えられていたのが嫌だったため、これでもかと鬼ということを強調する。


「名前も変わってるね。それに、鬼なんて聞いたことないけど…」


「は?!嘘やろあんた?!」


「ほ、ほんとだってば!」


セレナはもちろん、他三人も本当に知らなさそうなため、思わず「ぬぬぬ…」と声を漏らす。


「よぉしわかった!こうなりゃ1から教えたる!!」


そうして、鬼の伝説や自らの武勇伝を語り尽くし、ついでに自分に敵意がないことも話した。


◆◆


「お、鬼ってすごいんだ…!」


「も、もうお腹いっぱい…」


「ま、まあ鬼が悪魔と違うし、あんたは悪いやつじゃないってのもわかった…」


「すっかり日も暮れてるじゃないですか…」


セレナは目を輝かせているものの、他の三人は聴き疲れており、ぐったりしている。


「あっ?!ほんまや!すっかり暗なってきとるやん!どないすんねん!」


「いや、あなたのせいなんですけどね……とりあえず、ギルドに一度戻って、休むしかなさそうですね」


「ぎるど?」


「あ?知らねーのか。とりあえず行ったほうが早えだろ。…というよりその姿どうすんだ?」


黒嵐童子は明らかに人ではない見た目をしており、敵意がないと言ってもそうそう信じてはくれないだろう。


「せやな、人がおるんやったら…これでどうや!」


するとボンッと煙に包まれると、綺麗に角がなくなっていた。


「つ、角がなくなってる…?!どういう魔法なの?!」


クイードが思わず声を上げてしまう。黒嵐童子は角があったところを撫でる。


「ワシの知り合いにミツネっちゅー九尾の狐がおるんや。そいつに比較的簡単な方の変化を教えてもらってな。角くらいなら簡単に消せるで!」


「さ、流石鬼…!」


そう言いながら胸を張る黒嵐童子とそれに目を輝かせるセレナ。


「そろそろ行こう!もう夜だよ?」


あたりはもうすっかり暗くなり、ブレントは待ちきれなかったのかもう先に進んでいた。


「あっ!はよ行くでセレナちゃん!」


「はい!」


こうして、勇者パーティ(+黒鬼)はギルドへ向かうのであった。

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黒鬼の異世界冒険譚〜何故かついてくる美少女達〜 @glitchman

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