第13話 ネコマタ星人
ケモ耳宇宙人は可愛いと人気になりやすいが、正直、煌はそう思えなかった。
「あれは、感情が耳や尻尾の動きに正直に現れるのがいいんだ」
と、仲間に言われてそんなものかと思っていたが、実感はなかった。
だが……こうして榊の猫耳を見てると……たしかに可愛い……。
体をなぞられてビクッとなって耳が立つのも、愛撫で気持ちよくて耳が垂れるのも良い。
半人半猫は、体つき自体がなめらかでしなやかになり、ポーズ一つ一つがそそる。
あとは例のしっぽだが、半人半猫は尻尾を掴まれると服従をするようになる。
榊の尻尾の根本近くを握ると、榊は困ったような苦しいような顔をして「にゃあ」と鳴いた。
榊がこんなことになったと知られたら、本当に一大事だ。
だから、早く榊を元に戻さないと……という正義感はある。
だが、顔を赤らめながら、にゃあにゃあ鳴いているショタサカキを掻き乱す快感を味わってしまうと、榊をこの可愛いままで……という下心も当然湧いていた。
♢♢♢
カイとツバサは、資料室で榊を人猫化させたS級ネコマタ星人を調べていた。
奴の名は、ユーリ。
ユーリは、"ネコマタ帝国"の王族の血を引いている。
ユーリは、幼少期から帝王に相応しい頭脳と魔力と度胸を持っていた。
だが、権力争いに負け、国家転覆罪の濡れ衣を着せられて星を追い出されたのだ。
ユーリは怒りと悲しみで闇堕ちし、ユーリを信奉する仲間と共に、様々な星に降り立って悪さをしているという。
そして、最近地球に来ているというのだ。
「……帝王になれるくらいの宇宙人に、俺たちは、勝てるのかな……榊先輩が戦えないのに……」
カイが弱気なことを言った。
「うん……ちょっと怖いね……」
ツバサが答えた。
「榊先輩が猫化するくらいなら、俺がなれば良かったのに……!」
ネコマタ星人は危険指定宇宙人なので、その場で討伐も可能なのだが、現行犯でない時は捕獲が望ましいとされている。
あの時……
森に宇宙人がいると通報を受けて、三人は向かった。
そこに道に迷ったという人間がいたのだが、それは人間に化けていたユーリの取り巻きで、騙されたカイが人質になってしまった。
普段の榊なら、隊員を巻き添えにしてでも攻撃をする。
それくらい覚悟をしないと、未知な存在の宇宙人から地球を守ることなんてできない。
だから、成人部の隊員は、”榊の攻撃”から身を守る訓練もしているのだ。
だが、榊は攻撃をためらった。
カイがまだ少年だからだ。
その隙をついて、隠れていたユーリが猫化の魔法を放った。
その一瞬に、ツバサがカイを助け、榊は猫化が始まる前に一撃を放った。
森が一つ消し飛んだ。
後から受けた報告だが、ユーリは負傷、取り巻きの何匹かは討伐済みになっていた。
「もう、済んだことは仕方ないよ。これからのこと、考えよ?」
ツバサが優しく言った。
「……そうだよな……」
「猫耳のカイも見たかったけど」
「……何がいいんだよ、あんなの……」
「でも、榊先輩の猫耳は可愛かったよね?」
「あ、うん。可愛かった。なんか、あんな女の子みたいに可愛い榊先輩が、あんな鬼になるなんて信じられない……」
「でも、これで晴れて煌先輩と結ばれるね!」
「そ、そうなの?」
「煌先輩は、少年好きだから」
「ええ! そうなの?!」
「煌先輩は強いから少年部の指導に入るべきなんだけど、そういう趣味だから、榊先輩と一緒じゃないとダメなんだって」
「……ツバサは、大丈夫だったの……? この間二人だったけど……」
「僕のことは好みじゃないと思うよ。カイの方が好きなんじゃないかな?」
「な、なんで?!」
「なんか、まっすぐなとこが、榊先輩に似てるから……」
「……じゃあ、あの二人は、両想いじゃん……」
「だからぁ、煌先輩は、榊少年じゃなきゃストライクじゃないの」
ツバサは頬をふくらませた。
「ふ、複雑!!」
「今頃、二人とも盛り上がってるんじゃないの?」
ツバサはニヤニヤして言った。
「……なんか……心配して損した……」
地球の危機は変わらないが、とりあえず二人にとっては最高の結末なのだ……と、カイは理解しようと努めた。
蛸は日本人の性的精神性に深く根付いている生物であり、春画にも描かれるほど芸術的価値の高い造形をしている 千織 @katokaikou
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