第42話 【禊ぎの儀】

 目が醒めると、シャナ姫が居なかった。

 いや、居た。オレの下半身の辺りに(笑)。オレに頬ずりしたまま眠っている。

 困ったお姫さまだ(笑)。

 まだ(多分)昼頃だ。夜の【儀式】の前に少し確認したい事があったのでシャナ姫には悪いが枕を代わりに抱かせて抜けだした。


 エレジの部屋をノックすると、直ぐに戸が開き招き入れられた。

「いや、誰か確認しようね?」

 オレが笑いながら言うと、澄まし顔で言ってくる。

「お殿さまのノックは覚えておりますので♡」

「そんな、可愛いコトを言うと押し倒すよ(笑)」

「はい、ご存分に♡」


 いや、いや、いや……話を訊きに来たのだが、押し倒してしまった(笑)。



 ベッドで居住まいを正して《清拭》を掛けてきたエレジの手を取って本来の用件(笑)に戻る。

「さっきね、シャナ姫の【夜伽】に賛成と言うか、推してきたよね?」

 エレジがオレが握った手を握り返して答えた。

「はい、わたくしからも、是非にお願い申しあげます」

「それはつまり、『インノ・オラ王国』としての総意だと考えて良い……と言う事?」


「はい、いえ、あの……正直に申しあげますと、国の上層部は『お子』でも授かればと考えていたと思います」


「それはエレジの考えとは違っていたと…」

 エレジは考えを纏めるように一旦目を閉じて大きく息を吐いた。そして、再びオレを見て言葉を紡いだ。

「リベルさ……いえ、リベル(元 メイド長だ)とブーイオ(自害した偽のご学友だ)が仕出かした事については、わたくしから申しあげる事はございません……」

 エレジはオレを正面から見据えて続けた。

「しかし、こちらへと出立するまでの日々は、ただシャナ姫さまの御為にリベルが動いていたのを見て居ります」

「うん」


「シャナ姫さまがお生まれになった日から、リベルとわたくしでお側にお仕えして参りました……ですから、今回の【お見合いの儀】に誰よりも強く反対したのもリベルでした」


「なるほど」

「ここだけの話にして戴きたいのですが……」

「良いよ」

「…………国の上層部は『第九皇女殿下』など、としか考えて居りません……しかしながら、何分、まだ〇二歳でございますので、お身体の発達にも良い事とは到底思えません」

「まあ、その通りだろうけれど……何処の国でもそれは変わらないのでは?……だいたい、ヒメは『第四皇女』なのにこの有り様だよ?」

「えっ?……シャナ姫さまとはお立場が違いませんか?」

「いや、現実は父王に拠ってここ『ウルヒ』の領主に下賜されたんだよ……まあ、イロイロあって今の立場だけど(笑)」

「そ、そうだったんですか……存じあげませんでした」


「まあ、話を戻すけれど、エレジも【お見合いの儀】には反対だった……でも、さっきは【夜伽】を推してきたのは、何故?」

「それは……」

 少し言い淀んだエレジだったが、意を決したように言った。

「それは、リベルの事が原因でおひいさまのお心が乱れているからです……ですので、お殿さまのお力で不安や焦燥を取り除いて欲しいのでございます」

「それは、責任重大だなあ(笑)」

「お殿さまなら、お任せできると信じております!」

「○二歳でも良いの?」


「そ、それは……わ、わたくしも〝初めて〟頂戴した時は死ぬかと思いました…」


「はは…は…」

「しかし、『回復魔法』で救われましたし、あの二人(ミニョロとメニーケだ)が平気な顔をしておりましたので、大丈夫だと…」

「うん」

「それに、多分わたくしたち獣人族は人族より……お、大人になるのが早いのでは、と…」

「そうか、判った…」


 オレは思い出したコトがあって言葉を続けた。

「それはそうとして、エレジに謝らないとな」

「なんでございますか?」

 エレジが困り顔だ。


「いや、その……エレジの【初めて】をあんなに貰ってしまって……」


 エレジが少し頬を染めて言葉を紡いだ。

「あの日、イクイクさまから事前に検査の流れをお聞きして『ああ、これは多分』と覚悟はできて居りましたので…」

「そうか……しかし、」

 朝、シャナ姫に『一生で初めてのご体験でございます……お殿さまとお二人で過ごされるのが宜しいかと…』そう言っていた言葉が蘇る。

 最近、女人と褥を共にする事に慣れ過ぎていた自分を反省した。


 それぞれの女性ひとに、それぞれの【初めて】がある。当たり前だが、それは、それぞれに【一生で一度切りの経験】なのだ。


「これからエレジを一生大事にするぞ♡」

 そう言って抱き寄せると、ぴとっ、と身体を寄せて言ってくる。

「勿体ないお言葉でございますぅ♡」

 そのまま押し倒したかったが……まだ準備もあるしな(笑)。

「シャナ姫を一人で置いてきてしまった……目が覚めるまで付いていてくれるか?」

「畏まりました」

「あと、時間になったら【禊ぎ】もたのむ」

「心得てございます」



 オレは若干後ろ髪を引かれる思いでエレジの部屋を出て母屋へ向かったのだった。

 アイドスの部屋をノックすると、直ぐに戸が開き招き入れられた。

「いや、だから誰かを確認しようね?」

 この屋敷のセキュリティ系の意識は大丈夫なのか?

「そろそろいらっしゃる頃だと思っていましたので♡」

 アイドスも、澄まし顔で言ってくる。

 そのまま押し倒したかったが『確認』が先だ。

「一つ確認するが、良いね?」

「勿論です」

 オレはアイドスのベッドに坐り膝の間に後ろ向きで抱き寄せた。そのまま顎を摘まんで振り向かせて唇を奪う。

 大丈夫……そうな予感があっての『確認』だが、この位置からなら冗談で済ませられると思ったからだ。


「んむっ…(れろ、える、りゅろ)…ん、んっ…(じゅる、るろぅ、ちゅぽっ)…んん…(ぴちゅ、ちゅぷ、えろろろぅ)……」


 オレから大丈夫だった。

 嬉しくて服の上から胸を揉む。柔らかい。いつもはできなかった行為が心地良い。つい、調子に乗ってスカートの中まで探索だ。更に小さな布切れもオレの手指が潜った。そのまままさぐっていると、アイドスがくぐもった嬌声こえを洩らす。


「んん、んああっ♡」


 ヤバい、調子に乗り過ぎた。オレはアイドスをベッドに降ろして、抜き取った指先を濡らす液体を舐めとっていると、彼女が剝れた顔で言ってきた。


「えっとぅ……こ、ここまでして……ほ、放置でございますか?」


「いや、ちょっと確認をな?」

「なんのでございますか?……旦那さまは、やはりわたくしが上にならないと遊んで下さらないのですね?」

「いや、そうじゃないんだが……」

 今のオレには魔を滅する力がある、とアイドスが言っていた。

 多分だが昨日オレの中から『何か黒いモヤみたいな物』を吸いだしてくれたアイドスの【聖女の癒し】がこの逆転現象(オレから行っても空ぶらない)を可能にしたのだ……と、思う。


「判りました、わたくしが跨らせて戴きますっ⁉」


 お、怒っている(笑)。

「いや、待て、今日はオレが上になる♡」

 オレに圧し掛かってきたアイドスを裏返して押し倒した。

 結果、下になったアイドスが両腕両足でオレにしがみついてきて感極まったように言ってくる。


「ああ♡……旦那さまの重みを感じてシテ戴ける日がこようとはっ♡」


 大袈裟な(笑)。

「でもぅ、なのが鬼畜ですぅ♡」

 まあ、【半脱ぎ】どころか一枚も脱がしてないのだが(笑)。


 そんなこんなでコトが終わり、アイドスの横に身体を横たえると、(多分)咄嗟に回復魔法をスタンバっていたのだろう、むくっ、と身体を起こした彼女が二人に《清拭》を掛けてきた。

 オレは衣服を整えベッドで居住まいを正しているとアイドスも、ぴとっ、とくっついてくる。可愛い(笑)。


「ちょっと、これも『確認』だが……今夜シャナ姫との【夜伽の儀】があるが、確かアイドスのに流し込んでいるが役に立つという話だったよね?」


「わ、わわ、わたくしのだけでは、ございませんのではあ?」

 大剥れで抗議してくる(笑)。

「まあ、そうだけど、今もアイドスのに、たっぷり、流し込んでしまったじゃないか?」

「ぞ、存じませんんんっ♡」

「いや、今夜のシャナ姫の分……残っているか心配さあ(笑)」

「もおぅ♡……それは直ぐに無くなるような…………あっ、確かに補充した方が……よ、宜しい、かと?」

 アイドスが視線を泳がせて、ちゅー、してくる(笑)。

 こいつめぇ(笑)……ちゃっかり、ちゅー、を奪ってきたな(笑)。

「これからも、アイドスに補充して貰った方が良いのかな?」

「そ、そそそ、それが……よ、宜しいか、とぅ♡」


 それから暫くアイドスと、いちゃ、いちゃ、したのだった。


          *


 夕食が終わり部屋で寛いでいるとヒメが呼びに来た。

 【禊ぎ】の時間だ。

 湯殿に行くと脱衣室でチンチンとアイドスが待っていた。ヒメもそうだったが股下の襦袢姿だ。エロい(笑)。お湯に濡れたら間違いなしだ。

 三人でオレを脱がしつつ、チンチンが《即ぱっくん》してくる。誰が教えたものやら(いや、イクイクしか居ないが)通常ルーティンになっている(笑)。


 湯殿では三人から、たっぷり、お浄めされてから四人で、まったり、と湯に浸かる。オレの左がヒメ、右がチンチン、これは変わらない。

 ヒメがアイドスを横に呼んだ。

「これからはアイドスはよっ♡」

「は、はいぃ⁉」

 アイドスが途惑っている。

「今日からアイドスは『モブ屋敷』の序列三位です」

 それにチンチンが補足する。

「おひいさまが一位、わたくしが二位……そして、アイドスが三位ですよ」

「し、しかし……マータさまやイクイクさまはっ?」

「もう、決まった事です」

 ヒメが言い切った。いや、いつ決まったのさ?


「これからは食堂でも、来客時の対応でも、わたくしの左がアイドスの席です……わたくしが不在の時はチンチンがモブの左に坐ります……そして、わたくしもチンチンも不在の時はアイドスがモブの隣に坐るのです……判りましたね?」


「三人とも不在の時はお殿さまの隣は空席になります」

 チンチンが追加した。

「か、畏まりまして、ございます」

 だいぶ緊張した声でアイドスが答えた。


「それではモブに今夜の【夜伽の儀】の為の【息吹】を注入します」


 厳かに宣言したヒメが、ちゅー、してくる。

 ヒメの【神聖魔法】が流し込まれてくる。何故かを握っているのだが?

 続いてチンチンも、ちゅー、してくる。今度は【身守りの闇魔法】が流し込まれてくる。しかも、何故かヒメの更にを握ってくるのだが?

 最後にアイドスが正面に廻って、ちゅー、してくる。アイドスの【聖女の癒し】が流れ込んでくる(さっきも貰ったからキャパオーバーしないか心配だ(笑))。


「それでは最後にモブから溢れてくる分をアイドスが戴きなさい」


「ど、どど、どういう意味でございますか?」

 アイドスが途惑っている。

 いや、オレもこんな【禊ぎの儀】は初めてでまるで判らない。

 ヒメがオレの下唇を、かぷっ、と噛んだ。

 いや、だから、何故っ?

 チンチンがそんなヒメを、ちろん、と見て言った。

「いつもアイドスがシテいるように、お殿さまに跨って溢れてくるモノを頂戴すれば良いのですよ♡」

「にゃ、にゃにゃ、にゃんでしょれおぅうううっ⁉」

「さっさとなさいっ!」

 ヒメに叱られてアイドスが真っ赤になってオレに跨ってきたのだった。


 その後、チンチンに回復魔法を掛けられて意識を取り戻したアイドスを連れてオレは後宮のシャナ姫の部屋へ向かったのだった。



            【つづく】

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