第2話 舞視点
るみを見送った後、わたしは後ろを振り向いた。
「さて……」
るみの気のせいではなく、彼女をつけている者がいる。るみを安心させるために足音の正体はわたしということにしただけだ。
闇に紛れて分かりにくいが、電柱の影に隠れている。これだけハッキリ見えるってことはお化けなんかじゃない。
全身黒い服装だったからるみは気づかなかったのだろう。フードを目深に被っていて性別は分からない。……ま、どっちでもいいけど。
わたしはそいつに近づいていく。そいつは動かずじっとしていた。
「るみになんの用かな?」
わたしの言葉に反応するようにチカチカと街灯が点滅する。
「は?」
黒フードはたじろぎ、キョロキョロと視線を彷徨わせた。
そしてようやく目の前にいるわたしに気づいたようでビクリと体を震わせる。
「なんで……足……透けて……」
黒フードは呆然とそう呟いた。
よしよし、ようやく見えてきたな。これちょっと疲れるんだよね。
わたしはニヤリと笑って見せた。できるだけ不気味に見えるように意識して。
「ひっ……!」
その瞬間、黒フードは短い悲鳴を上げて走り去っていく。
ストーカーのくせに幽霊くらいで怖がるなんて根性ないやつだな。それにしてもあいつ足速っ。わたしなら追いつけるけど、るみが心配だし戻ることにする。次やったら呪い殺す!!
もう誰もいない闇に向かって睨みつけていると、声をかけられた。
「舞ちゃん」
「先に帰っててって言ったのに」
「でも舞ちゃんが心配で……」
るみは不安そうな顔をしている。自分の心配より、わたしの心配って……。
もう死んでるわたしの心配なんてする必要はない。でも心配してくれることが嬉しくて、心臓がドキドキと高鳴った気がした。もちろんもうわたしの心臓は動いてないから気がするだけなんだけど。
ほんと、こういうところが好きなんだよね。
「前にも言ったけど、わたし幽霊だから死なないよ?」
「そうだけど……でもやっぱり女の子だし心配だよ」
るみちゃんって昔から怖がりのくせに、わたしのことだけは怖がらないんだよね。
るみちゃんに怖がられたらショック死してしまうから、怖がられなくてホッとしたけど。
わたしはるみに手を差し出す。るみは嬉しそうにその手を握ってくれた。
「るみ、帰ろっか」
「うん!」
感じないはずの温もりが、しっかりと伝わる。
幸せだなぁ。このままだと消えてしまいそう……って、本当に消えかかってる!?
いけないいけない。危うく成仏しそうになったよ。
わたしはチラリとるみの顔を見た。幸せそうな顔をしている。
そんな顔見ちゃったらまだ成仏できないよね。
正体はお化け……? kao @kao1423
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