世の中の全国の姑に向けて

ハナビシトモエ

厄介な女

 私には厄介な人物がいる。

 義母じゃまものだ。義母めんどくさいは私が子どもとそろそろお昼ご飯にしようね。昨日のカレーにしようかと話して子どもに許可を取る形で決めている。そういう取り決めをしている。平日に義母ひまじんはやってくる。



「今、お昼ご飯?」

 ちゃんと味と栄養を考えて出したご飯の横にどこかの誰子さんが育てた芋を置く。

 いつものように無農薬野菜で体に良くてを繰り返して、義母ばかやろうはろくに洗ってもいない芋を子どもの前に置く。



「ばあば、なに?」


「お芋さん、好きでしょう。弥生さん食物繊維も摂らせないとダメよ。家庭科で習ったでしょう?」

 そういう事をしてくる義母おせっかいの心遣いは大変ありがたいが、芋を置く際は泥を払うか袋に入れて欲しい。



「またカレー? カレーは楽だからいいわね。でもたまにはハンバーグやお魚を焼いてあげるのもいいわよ」

 この前、うちに義母ハリケーンがやって来た時はハンバーグだった。

 その時も「昨日の残り? たまには作りたてのカレーもいいわよ。お野菜たくさん摂れるし」とか、言ってくださった義母めんどくさいの言う通りカレーも取り入れた。


 夫は美味いって言ってくるし、子どもからも好評だった。

 確かに昨日の残りは嫌かもしれないとは思うけど、昼ごはんも最初から作るとなるとお母さん業はスイスイ回らないし、何よりも経済面でも夕食の残りの方がいい。


 小学校も何かと物入りだ。これから中学高校に進むともっとかかってくるだろう。貯蓄はしておきたい。義母せけんしらずはその辺りの事を分かっているのか。

 その上、息子一人では寂しいだろうと家の中の事まで言ってくるのは驚いたものだ。その瞬間に義母ねごとは厄介な人物であると悟った。



「昼からばあばとお散歩行こうか」

 もう嫌な予感がしている。



 先日あったのは散歩に行ってファーストフード店で飲みきれない様なサイズのジュースを飲ませて飲みきれないのを見て「男の子ならもっと飲まないと」とか言いやがって、塩辛いポテトで誘い込み、最後に義母ばばあがプリクラを撮ろうと提案するのだ。


 この行動の意味が全く分からないのだが、半年に一回なら多いけど好きなんだなと思うが、なにが好きで一ヶ月に二回もプリクラを撮る必要があるのか。

 私には理解出来ない。

 それを聞くスキルを持ち合わせていない人間が不用意に聞くとえらい目に遭うことは想定出来るので、私は聞かない。

 いつもなぜか私は仲間外れにされるのかは絶対に聞かない。その時に息子が言ったことがある。


「ばあば、なんでいつも写真撮るの?」

 よく聞いた息子よ。


「駿ちゃんが大好きだからよ」


「でも、ばあばいつも写真撮る」


「だって、駿ちゃんはすぐ大人になるでしょう。ばあばもいつ死んじゃうか分からないから、元気なうちに写真撮っておきたいの」


「ばあば、いなくなるの?」


「駿ちゃんよりは早くに空は帰るの」


「ばあば、どこにも行かないで」


 一年に一回、人間ドッグに行っているが異常はどこにも無いらしい。

 平常範囲の上の方でもなく少し下くらいをキープし続けている。

 おそらく義母クソは鼻高々だろう。人間ドックってそんな頻繁に行くものかは私には分からない。



 さてさて、義母ゴキブリはテーブルの上にたくさんの芋とカレーとご飯の残りから息子を抱き上げた。



「こんなママのおサボりご飯じゃなくて、エビフライ食べに行こうね」


「お義母さん、駿は甲殻類アレルギーで」


「あらそう。忘れていたわ。じゃあ、シチューにしましょう。ご飯にかけると美味しいのよ」


 多分、義母かぞくのてきはさほど駿には興味が無い。

 ただ、いいおばあちゃんをしている自分が好きなのだろう。

 何度も言ったのにこの人は本当に馬鹿だな。


 たまにはこれくらいの憂さ晴らしはいいだろう。駿は何かをご飯の上にかけるのを嫌がり、激しく抵抗する。に直面すると良い。



「お母さんはお仕事があるから、ばあばと二人で行こうね」


「ママは?」


「いいわよね」


「助かります。お義母さん」

 

 心中で思っとけ、性根の腐った嫁だと。

 さて、電話が来るのは何時間後だろうか。

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