第3話 レバカツ

 さて、今日の業務も無事終了だ。相変わらず訳がわからない注文が多かった。それにデスゲームの感想とか聞かれてもわからねぇよ!話にリアリティがあってものすごい背筋がぞわぞわしたわ!一通り話したと思ったらまたチケット渡されたしな。そもそもチケットの端に米印で交通費支給ってなんだよ!アルバイト感覚でデスゲームに参加するバカはいねぇよ!

 …いや、とりあえず今はコラボメニューの件だ。レバーを使った料理といったらレバニラが有名だが、今回はレバカツにしようと思う。外がサクサクしていて中のレバーがプリっとしていて美味いんだよな。それに支配人に相手の好きなものを聞いたら揚げ物が好きって言ってたしな。新鮮なレバーを下処理して作ったらレバー特有のもっさりとした感じもしないしこれでいこう。

 あぁそうだ、今回は調理補助としていつも調理の手伝いをしてくれているミーシャに手伝ってもらう。ミーシャは長い赤髪を後ろにまとめて元気な子だ。なによりもここで珍しいまともそうな子という大変貴重な存在だ。


「ミーシャ、今日はよろしくな」

「よろしくです!今日は何を作るんですか??」

「今日はレバカツを作ろうと思う」

「レバカツですか。また珍しいものを作りますね」

「ちょっとコラボメニューの件でな…」

「なるほど。支配人さんが『流石に少しいいの用意しないとな〜』って予算見ながら唸ってましたよ」

「それなら期待していいな。まだ俺もどんなのか見てないんだよな」


そう言って箱を開けてみると表面にツヤがあり、身にハリと光沢があるレバーが出てきた。


「思ってたよりもいいものが出てきたな。これはちょっとテンション上がるぞ!」

「これはいいものですね!調理するのが楽しみです!」

「よし!今から始めれば予定時刻にちょうどいいし始めるか!」


 レバーを調理する上で俺は下処理が最も重要な工程だと思っている。


「まずは血の塊や筋をとるぞ。そしたらカツにしやすいような大きさに切る。そして氷水にレバーを入れて汚れを落とす」

「ここでしっかりと血抜きをするんですね」

「あぁ、これで臭みを抑えることができるからな。その後水を入れ替えてだいたい三回ぐらい洗う。これが終わったら水気をよく拭き取るんだ。水気が残っていると臭みの原因になるからな。あとはレバーが浸るぐらいの牛乳を入れて20〜30分ぐらいつけて流水で洗って水気を拭き取れば下処理は終わりだ」

「思ったよりも難しくはなさそうですね。もっと複雑な工程があると思ってました」

「まぁな。今回は牛乳でやったが塩や酢を使ったやり方もあるぞ。自分のやりやすいと思ったやり方でやるといい」


 さてと、これで下処理は終了だな。下味はどうするかな…。基本はカレー粉やニンニクで下味をつけるんだが、今回はシンプルに塩胡椒にするか。


「ミーシャ、レバーに薄く切り目を入れて塩胡椒を振っておいてくれ」

「わかりました!」


そのうちに俺はボウルに卵と粉チーズを入れてよく混ぜておく。あとは次に使うパン粉と小麦粉の準備をしておくか。


「こっち終わりました!」

「ありがとう。それじゃあ次はレバーに小麦粉、さっき作った卵液、パン粉を順番にまぶしていこう」


 ここで少し注意したいのは小麦粉をつけたらよく余分な小麦粉を落とすことだ。あくまで小麦粉は表面の水分をとって卵をつきやすくして衣が剥がれるのを防ぐためだからな。


「これぐらいですかね?」

「あぁいい感じだな。そしたら温めておいた油に入れていこう」

 

 油に入れたら少し放置する。すぐ触ると衣が剥がれちまうからな。にしてもこの揚げ物をしているときのジュワッとした音がたまらないんだよな!


「どうしても入れた後って少し触りたくなっちゃうんですよね」

「その気持ちはわかるぞ。ひっくり返して様子見したくなるよな。でも我慢だ」


衣がついてきたら返しながら1分30秒ぐらいあげる。網にあげてアルミホイルを被せて1分間余熱を通す。皿に盛りソースをつけて野菜を添える。


「よし、完成だ!」

「おいしそうです!…支配人とかに出すにしても量が多くないですか?」

「そりゃあ、賄いの分も含めてるからな!」

「さすがソウさんです!愛してます!」

「気軽にそういうこと言うんじゃないよ!俺は出来立てのもんを出しに行くから先に食べてな」

「わかりました!頑張ってくださいね!」

「おう!」


 そう言って俺は離れたが遠くから『美味しい!』って声が聞こえた。この調子なら大丈夫だろう。俺も早く食べてぇな。それにしても支配人ほんとにいいレバーを仕入れたな。あんないいの結構値段しただろ。前に資金とかは大丈夫かって聞いたら『デスゲームって結構稼げるんですよね!ほら〜内々で処理したいこととかあるじゃないですか?」って笑顔で言われたんだよな。いや、こえーよ。聞いている感じ無差別に参加者を募集してしてるってのとは違うんだろうな。まぁいい、俺はただの料理人だしな。今はこっちに集中するか。

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デスゲームの料理人 @nazukeiryuu

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