第2話 こらぼめにゅーの前に

 仕込みが終わって一休みしてたらここの支配人が来やがった。


「お疲れ様です。コラボメニューの件で来ました。何か思いつきましたか?」

「いいや、全然思いつかねぇ。コラボメニューなのにマスコットが邪魔すぎるんだよ!内臓が出てるんだからそれなら内臓系使った料理にするかって提案したら『いや〜、私肉とか魚の内臓ダメなんですよね〜。何か別のものにお願いできませんか?』って言われたぞ。おかしいだろ!なんでマスコットそれにしたんだよ!」

「でも、無理なものは無理なんですから仕方がないでしょう?」

「どっちの味方なんだよ!」

「私はいつだってお客様の味方です」

「もう諦めていいか?」

「ダメです」


 やっぱりダメだよな。こうなったらもうケーキでいいだろ。いや、コラボメニューと言ったら確かにスイーツは真っ先に思いつくさ。でもな、あいつらは『もっと血を食べてる感じがするやつ!』とか、『なんかもっと血とか骨に良いものが食べたい』とか言いやがる。そもそもお願いが抽象的すぎるんだよ!なんでもいいが一番困るって言われてるだろ!


「そもそも内蔵系のどこがダメなんだ?」

「レバーを食べて生臭いのが無理で一回食べて諦めたって言ってましたね。ただ食べた場所が場所だったので新鮮な物だったとかではないですよ。あんまり美味しくなかったです。」

「なんでそんな詳しく知ってるんだ?」

「デスゲーム界隈にも接待とかそういう横のつながりって大事なんですよね」

「なんか嫌だな。デスゲームぐらいには夢を持たせて欲しいっていうか…」

「終わらない夢ならプレゼントしてきましたよ?」

「それ代わりに人生終わらせてないか?とりあえず内臓系が苦手になった理由はわかった」


 確かにレバーに限らず内臓系がダメな人は生臭さが無理って一番聞くよな。でも、新鮮なレバーとかなら生臭さもなくてうまいんだよな!レバーは焼きすぎるのに気をつければ

余計な雑味やえぐみが出ずに甘く、ねっとりとした食感を楽しめるものだ。それなら、一度本物のレバーを食べてもらうか!


「なぁ、新鮮なレバーって手に入るか?」

「人間のですか?」

「誰がそんなもん頼むか!そんなもん食うとかの前に俺が調理したくないわ!豚のレバーだよ!」

「なんだ、豚のレバーですか。面白くない。それなら新鮮なものをご用意できますよ」

「いま面白くないって言ったか?」

「言ってません。小さいことを気にする男は嫌われますよ。それにしてもレバーでコラボメニュー作るんですか?許可降りてないんで無理ですよ」

「まず承諾してもらうために食べてもらうんだよ。本物のレバーをな」

「一歩間違えたらデスゲームにドナドナですよ」

「……そこはどうにかならないか?」

「私、人間の内臓食べるの初めてです!」

「犠牲になる前提かよ!まぁいいさ、美味いレバーを食べさせればいいんだろ!生臭いレバーなんてハズレを最初に食べて嫌いになったんだ。実質食わず嫌いみたいなもんだろ!」

「それは無理があるのでは?」

「とにかく!新鮮な豚レバーの準備任せたぞ!これでゴーサインが出たらそのあと俺はコラボメニューも考えなきゃいけないんだからな!」

「その点はご心配なく。お世話になってる肉屋がありますので」

「…取り扱ってる肉は普通の物だけだよな?」

「市販品ですから大丈夫ですよ」

「というかさ、今思ったけど内臓系苦手になった理由ってお前がその接待の店に連れて行ったのが原因じゃ…」

「それじゃあ今日も頑張って働いていきましょう!」


 あいつ逃げやがった!まぁこれなら新鮮な豚レバーを期待していいだろ。とりあえず今は今日の仕事に専念するか。

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