第2話 俺はついに揉むことになった――

 学校帰り。櫻井直央さくらい/すなおは、後輩の充希と共に夜道を歩いていた。

 女の子と夜道を歩く事なんて、殆どない直央からしたら奇跡としか思えない時間。


 充希とは肩を揉むという不思議な間柄で付き合う事になった。

 普通とは違う関係性ではあるが、こんな爆乳な子と付き合えている事に、興奮が止まらなくなっていた。


 充希は、直央の事を変に拒絶する事無く、直央からしても話しやすい相手。

 今までの人生、女の子に親切にしても目立ってモテた事がなく、フラれる回数の方が多かったのだ。


 普通に女の子と会話できているだけでも、幸せを嚙みしめることが出来ていた。


 何はともあれ、元から好意を抱いていた子と付き合えている事に感謝しなければならないだろう。


「私の家、この近くなんです」


 一ノ瀬充希いちのせ/みつきは遠くの方を指さしながら言う。


 直央は、彼女と近い距離感で緊張していた。

 夜は危険がいっぱいなのだ。

 どんなに電灯で辺りが照らされていた道だとしても、危ないモノが潜んでいる場合もある。


「いつも、こんなに暗い場所を歩いているの?」

「はい、そうなんです。でも、慣れたら問題はないと思いますから」

「そうかな?」


 充希の事を思うと心配になってしまった。




 少し歩いた先に、一件のコンビニがあった。


「ここで寄って行きませんか?」


 後輩から誘われた。


 コンビニの中に入ると、そこまで混んでいる様子はなかった。

 会社帰りのサラリーマンや、部活を終えた同世代の人らがいるような感じだ。


 それにしても、周りから視線が強かった。

 多分、その視線は彼女の爆乳に対して向けられたものなのだろう。


 それほどに彼女の胸は制服越しでもわかるほどに大きかったのだ。


 二人は店屋を出るまでの間、ジロジロと見られながらも買い物を済ませたのである。


 一応、おにぎりや飲み物、ポテチなどを購入し、再び夜道を歩いて、充希の家まで向かう事にしたのだ。






 充希の家は結構立派だった。

 新築なのだろう。

 夜の時間帯ゆえ、全体を見渡せるわけではないが、よい家庭で過ごしているのだと思った。


「これ、後で食べるんでしょ?」


 直央はさっきコンビニで購入した物が入っている袋を彼女に渡す。


 直央がまた明日といって立ち去ろうとした時、背後から呼び止められた。


「先輩、少しいいですか?」

「何か、まだあるの?」

「あのですね……私の家に入っていきませんか?」

「え、いいの?」


 突然の誘いに、動揺してしまっていた。


「はい。先輩には私の事を知って貰いたいので。それに、付き合ってくれるんですよね?」

「ま、そうだけど。でも、こんな時間だし」

「今日は両親もいませんので、先輩がいても問題はないと思います」


 これは色々とチャンスだと思い立ち、直央は彼女の家に立ち寄っていく決断をした。




「こっちに来てください」


 明かりに照らされた玄関で靴を脱ぎ、家に上がると、充希から用意されていたスリッパを履く。

 それを履いて正面を向いた頃合い、彼女から案内された。


 リビングの中に入ると、彼女からソファに座ってと言われたのだ。


 充希はリビング前のテーブルに商品が入った袋を置いていた。


「先輩は何のジュースがいいですか?」


 ソファに座っている直央に、充希は隣に近づいて来て問いかけてきたのだ。


「俺はなんでもいいよ。でも、本当に家に入っても良かったのか?」

「はい、先輩なら問題はないので。ゆっくりとして言ってくださいね」


 爆乳な後輩の家で過ごせている事にどぎまぎしていた。

 最初っから、こんなにとんとん拍子で事が進んでもいいのだろうか。

 それが少しだけ不安になっていたが、多分、彼女は悪い子ではないと信じ込みながらも、リラックスするように胸を撫で下ろすのだった。




 直央の前のテーブルには二つのコップ。その近くには一ℓのリンゴジュースが添えられるように置かれた。


「私が今から注ぎますから」

「あ、ありがと」


 充希はキャップを取り、コップに適量だけ注ぎ、それを直央に渡してきたのだ。


 直央はそれを受け取り、頭を下げた。


「先輩はもう少し堂々としてもいいと思いますよ」

「そ、そうなんだろうけど。ここまで女の子と密接な関係になった事ないからさ。どういう風にすればいいのかわからなくて」

「緊張してるんですか?」

「そりゃ、するだろ……」


 爆乳な後輩が、こんなに親切にしてくれるなんて人生で初めてなのだ。

 疚しい事を妄想してしまい、緊張してしまうのも無理はなかった。

 でも、後輩と二人っきりの環境に入れる事に胸が高鳴って来たのである。




「先輩」

「な、なに?」


 充希は、ソファに座っている直央の右隣に座っていた。


「できればなんですけど。約束通り、私の肩を揉んでほしいんですが、今からよろしいですか?」

「揉む?」

「どうかしましたか?」

「い、いや。わ、分かった、肩を揉めばいいんだな」

「はい、お願いしたいので」


 確かに、そのような約束をしていた。

 でも、いざとなると、上手く手を動かせるか心配になってくる。

 エロ漫画のように、間違って胸を揉んでしまうかもしれないという背徳な感情に今まさに支配されていたのだ。


 直央はソファから立ち上がって、彼女の背後に回る。


 充希は華奢な体つきをしている。

 でも、正面から見ると、ボリュームのある胸が存在しているのだ。


 背後から見ても、その溢れんばかりの胸を見て取れた。


 そ、それにしても凄いな……。


「行くからな」

「はい、お願いします」


 直央は彼女の肩に両手を当てたのである。




「あッ、す、凄いです。もっと、上の方を揉んでほしいのですが」

「こ、ここか」

「はい」


 充希は息を荒らげながら、直央に指示を出してくる。


 彼女の吐息交じりの声にどぎまぎしながらも肩を揉み続けていた。


「先輩は凄いです」

「いや、俺は何も、対した事はしてないけど」

「でも、私の目には狂いはなかったみたいです。先輩になら、ちゃんとしてくれると思ったので」

「どうして、そう思ったの?」

「私、見た目で判断される事が多くて、紳士な対応をされているのは先輩だけでしたので。だから、お願いしてみたんです。先輩なら安心できると思ったので。やっぱり、先輩で良かったかもしれないです」

「そ、そうか。役に立てたのなら良かったよ」


 彼女の声からして嬉しそうだった。

 女の子から直接的に感謝されたことが殆どなかった直央は、不思議と達成を感じられていたのだ。

 直央は彼女の肩を揉みながら、ニヤニヤしていた。


「先輩とは、今後とも付き合いが長くなりそうなので。これからもお願いしますね」


 と、充希から振り向きざまに優しく言われた。


 彼女に顔を見られる前に、真面目な顔を見せ、彼女と顔を見やる。


 不思議な関係性かもしれないが、一応、異性とは付き合える事になったのだ。

 直央はこれからも、彼女の想いに答えられるように生活していこうと思った。

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全然モテない俺が、同じ部活の爆乳な後輩の肩を揉むことになった⁉ 譲羽唯月 @UitukiSiranui

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