第4話 第315号島
基地を飛び立ってから2時間ほどたっただろうか。機内ではテオドールが新型機の説明などをしてくれたためそれほど退屈ではなかった。
「わたしが説明できるのはこれくらいでしょうか、あとの基地のことなどや仕事の内容などは向こうの方がしてくれるでしょう。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、これから私は貴女専属の整備員なので聞きたいことなどあったら気軽に聞いてください。」
「専属というのは他の隊員にもいるんですか?」
テオドールはよく『専属』ということを言っているが、自分にだけ専属の整備員がいるわけではないだろう。
「はい、他の隊員にもそれぞれ整備員がついていますよ。新型機のテストも兼ねているので本社から一人は必ず同行する者がいますね。」
「そうですか、、、」
「そもそも、今回の再編成にあたり20名ほどの小隊を編成したらしいのですが各隊員によって多少の機体変更がされているため整備の効率を良くするため一人に一つの格納庫と整備隊が用意されているらしいです。」
「本当ですか!?すごい待遇ですね。」
「そうですね。この隊は航空戦の最前線に立っていると言っても過言ではないですからね。今はまだありませんがそのうち本当に戦う時が来るかもしれません。それに万全の体制で備えるのが今するべきことなので。」
「戦う時ですか、、、、」
はっきり言ってしまえば自分は戦うことを恐れている。今までも戦闘機に乗っていた、しかし、戦いなどとはほぼ無縁の場所だった。それが今はどうだろう。おそらく国内では一番戦いに近いところだろう。そんな場所にいて自分はいざ戦うとなった時に飛ぶことができるだろうか。不安だけが募っていく。
「おふたがた!間も無く島に着きますので、着陸に備えといてください。」
一人先の戦いについて考えているとコクピットからの声を聞きフッと窓の外を見てみる。するとそこには確かに島があった。しかし、自分が思っていた島とは少し違ったようだ。軍事機密などというからには基地以外のものはなにもないと思っていたが、予想以上に島は大きく確かに基地はあるがそれ以上に街の明かりの方が多い。
「街があるんですね。」
「はい、ご存知ありませんでしたか?315号島ともいいますが『ペルシア島』という観光地として人気の島でもあるんですよ。」
「あ〜315号島ってペルシア島のことだったんですか!初めて知りました。ペルシア島ならよくテレビなどで特集を見ます。」
「そうですか、この基地は基本週末は外出が可能なようですのでそのうち街の方へ行ってみてはいかがですか?」
「それもいいですね〜」
暗くなっていた気持ちも街のことを聞いて少し明るくなった。
それからしばらくしているうちに輸送機が着陸をしたらしくスタークレイは報告をしてそのまま後ろのハッチを開きに行った。数秒もしないうちに後ろのハッチがゆっくりと開いていく。開いたハッチの先には誘導灯に照らされた長い滑走路が広がっている。滑走路の先は一面の海、ここがこの国の端だというのが嫌でも理解できた。
「この先不安だな、、、」
ひとりごとが漏れる。
「ようこそ第315局地航空師団へ、歓迎します!」
自分の憂鬱な気持ちを知ってか知らずかスタークレイは歓迎をしてくれている。自分の気持ちとスタークレイの興奮がすでに噛み合っていない。果たして自分はこれから大丈夫なのだろうか、、、、
第315局地航空師団 井場新津 @corratec
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