二歩目
「今の私の格好はそのまま女の子に会いに行って大丈夫な格好だろうか……」
"ジーーーーッ"
ダボダボのスエットにパーカー。寝癖のついた髪の毛。辛うじて髪の毛の長さだけは最近切ったから大丈夫だけど……他が酷すぎる。
これはアレだな!通販でモデルさんが着てたのを1式まるまる買ったアレの出番だな!ファッションとかよくわかんないんだよなぁ〜
そもそも外出する予定もほとんどなかったし。買い物と美容院行くくらいだけど、一応大学生の嗜みとして余所行きの服を何着か買ってあったけどぶっちゃけ着ないし興味ないしで買ってそのまま放置だったけどこの機会に服とか勉強してみるかな。
VTuberの応募云々は置いといてもあいつが変わろうと頑張ってるんだから私も負けてられないよな!今はそれより急がなきゃだからこのことは後で考えるとして……よし!こんなもんかな?
「行ってきます!まぁ母さんも父さんも仕事だけど……あ、帰りが何時になるか分からないしRINEで連絡しとかないと。」
"冷蔵庫に作り置きの肉じゃとお味噌汁があるからあっためて食べといて。ご飯は炊飯器の中にある。"っと。引きこもりのくせに料理するんだ。そんなふうに思った人もいるだろう。そう、私は働く引きこもりなのだ!
家に引きこもって学校にも仕事にも行かないのはただの穀潰しだからな。ちゃんと家事は全て私がやっている。当然だろ?鍵も締めたことだし……
「いざしゅっぱーーつ!!」
"じーーー"
うっ……周りの視線が痛い。大学生にも出発を宣言するとか完全にやばい人だよ。どうしよう不審者として通報でもされたら……家事の延長線でご近所付き合いもちゃんとしてきたつもりだし大丈夫なはず!大丈夫だよねぇ?とりあえず……逃げるか!
「わぁ〜何か叫んでるー!変なの〜」
最悪最悪最悪!!
「見ちゃダメ!ほら!行くよ!」
もうヤダ死にたい。
「えぇ〜なんで〜?あの変なおじさんどうしたんだろうね!」
変……な……おじさん……
「ほら!指ささないの!」
もうヤダほんと死にたい。マジで泣きそう。昔受けたイジメより心にくる。純粋さって……怖い。私そんなに老けて見えるのかなぁ。それとも服か?服なのか?セットで買ったやつがおじさん向けのだったのか?
これは由々しき事態だ。真面目にファッション勉強しないと……私の心が持たないかもしれない。おじさんかぁ……あいつに連絡して今日の予定キャンセルして家に引きこもりた────
"何時頃に着きそう?時間教えてくれたら駅まで迎えに行くから!楽しみにしてるね!"
「はぁ……行くかぁ。こんな楽しみにしてるあいつにやっぱなしなんて言えないよなぁ。」
あいつに会って最初になんて声かければいいんだ?駅でまず会うんだよな?さすがにPN呼びだとお互いダメージ受けるよなあ。
私も呼びたくないもん、†漆黒の堕天使†とか……なんだよこのプロトタイプの厨二病はよぉ!あいつの声聞くまで絶対男だと思ってたから男って知った時はマジで驚いたなぁ。名前が名前だから男だとみんな思ってたっけ。
私も私で一時女子だと思われてたっけ。なわけあるかっての。まぁ勘違いされてることに気付いてからはその勘違いを冗長する発言もしたんだけどね。通話の時も面白半分で喉仏上げることを意識しつつボイチェン使ったりもしたし、まぁ勘違いしてもしょーがないよね。
私のPNはさっきの†漆黒の堕天使†さん(笑)との会話でも出てきた通り優。私のPNが呼ばれるのはいいけど、あいつよPNは死んでも呼びたくねぇ!
「次は〜次は〜〇〇〜〇〇〜」
「そろそろ降りる準備しないとな。」
まぁやっぱり数駅分しか離れてないからすぐ着くな。あいつの声めっちゃ可愛いかったし容姿も良いんだろうなぁ〜やだなぁ〜会いたくないなぁ。
今からでも帰っちゃダメかなぁ。今更無理とか言う勇気なんて私は持ち合わせてないし大人しくもうすぐ着くって連絡しないとなぁ。
"もう着く"
"北口から出てすぐの所にワンピース着て痛バ持ってるから見つけてね!"
あぁ〜帰りたい帰りたい帰りたい!よし、行くか。え〜っと、痛バ痛バは……っといた!ってスタイル良!
「あのぉ〜すいませーん!」
「もしかして……優くん?」
あ、そうだ!PNでいじってやろ!
「良かった〜†漆黒の堕天使†さんですね!」
あ、顔真っ赤なった。
「ぐわぁあぁぁあああぁあぁぁあぁぁあぁあぁぁ!やめてくれぇぇぇぇ!やめて、リアルでその名前呼ばないで!名前のインパクトで定着しちゃったせいで変えるに変えれなくてそのままなだけだから〜」
ちょ……おい!叫ぶなよ。周りの視線が痛すぎる……私が悪者みたいじゃんか。まぁ実際私が悪いんだけどさぁり
「あぁ良かった〜めっちゃ美人さんで緊張してたんですけどネット上と同じで残念な人なおかげで緊張が解れました!」
「やめてよぉ……そんなに私をイジメて楽しいかよ。」
まずい、やりすぎたか?
「反応が面白くてついね!ごめんごめん。」
「私は優しいから許してあげるけど貸し一だからね!」
「わかったよ、ありがとう。私は何をすればいいのかな?」
「それはあとのお楽しみ〜それじゃあ私の家に行こっか!」
うっざ……まぁ非は私にあるし大人しく従うかぁ。
「それじゃあ案内よろしくね!貸しの件は私をVTuberの募集に巻き込んだ件と私をここまで呼び出した件で相殺できない?」
「うぐっ……それを出されると弱いんだよなぁ……」
「撮影にどのくらい時間かかるのか未知数だし帰りの電車の時間もあるからこんなとこで時間使ってないでサクサク行こー!」
「おー!」
歩き中……
「着いたよ、優くん!ここが私の家だよ!どう?凄いっしょ!」
おいおいマジか……これが厨二病残念女子大生の家……
「え?デカすぎね?」
「ふっふっふ〜ドヤァ」
ドヤ顔クソうぜぇけど凄さを否定出来ねぇ……なんか悔しいけど豪邸すぎる……私の家とははっきり言って格が違う……か。
「も、もしかしていいとこのお嬢様だったりする?」
「パパがそこそこ大きい会社の社長でさ!お嬢様ってほどじゃないけどね。だからお金の心配はいらないって言ってくれてるんだけど、これ以上2人に迷惑かけたくないから変わろうと思ったんだよ。」
「お前に負けてられないな。VTuberの件あんまり乗り気じゃなかったけど私も本気で頑張ってみるよ。」
陽のあたる場所 結城 優希@毎日投稿 @yuuki58837395
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