第8話 鉱姫と呼ばれる由縁

 最初は達成できるか心配だったクエストもゴブリンに出会っては、ポイズン・スナイプを撃つだけで呆気なく終わりを迎えた。強敵に見えたゴブリン統率する個体、ゴブリンキングも一発で終わってしまった。


「……味気ない」

「ん、ゴブリンなんて所詮そんなもん。今回のクエストは下手すれば銅階級冒険者でもこなせる」

「……じゃあ何も心配する必要は無かったと…?」

「うん」


 うん、じゃねぇよこの野郎。俺の心配を返せ!……まぁ、兎に角何事もなく終わって良かった。ポイズン・スナイプの使い方も大方把握できたし、自信も少しはついた。成果としては十分だ。


「カオル、これ」

「……何ですか?これ」


 ラーミスさんから手渡しで何かを受け取る。何やら生暖かいが……


「ん、ゴブリンキング討伐証明箇所であるゴブリンキングの眼球」

「キメェ……!」


 手のひらを見てみると、そこには2つの眼球が転がっていた。あまりのグロさに、少し吐き気がする。今すぐにでも投げ出したいぐらいだ。


 しかし討伐証明箇所が無くなれば、それは討伐したことは無かったことにされてしまうため何とか耐えながらラーミスさん返す。


「と、取り敢えずこれでクエスト終了ですよね?さっさと外に出ましょうよ。ここ何か臭いし不気味で…」

「確かに私としてもこんな所に長居はしたくない。あとこれぐらい慣れておかないとこの先の冒険者人生詰む」

「……うす、じゃ出ましょうか」


 足場の悪い洞窟内を先行していく。どうやらここは天然に出来た洞窟だったようで、そこにゴブリン達が住み着いたようだった。


 


 *****



「よーし、出られたぁ!!」

「大袈裟」

「あんな息苦しい洞窟内で頑張ったんですから……あれ頑張ったっけ?」


 飽きれた目で見てくるラーミスさん……止めてそんな目で見ないで!


「ってあれ?ここゴブリンの死体ありませんでしたっけ?」


 ここに入る前に仕留めたゴブリンの死体がなくなっていることに気付く。死体は何処にも無かったが、確かに俺とラーミスさんは死んだ様子を見ていた。


 一体何処へ……?何か森がざわめいているような……


 謎の不安が胸を駆け回り、思考を加速させる。死体が消えることなんて早々有り得ない。なら何処へ───


「……ッ?!カオル!上!」


 ラーミスさんが声を荒げながら、俺に呼び掛ける。地面には明らかに俺のでは無い、巨大な黒い影が映し出されていた。


 その影は徐々に大きくなっていき、空から接近しているの示していた。その場から退避すると、次の瞬間に勢いよく、巨大なナニが落下してきた。


 土埃が舞い、俺は姿を確認することは出来ないが、薄らと見えるシルエットで何なのかをラーミスさんは理解していた。


「ワイバーン……何故ここに……」


 ワイバーン?!異世界だったらかなりの強敵の類じゃないか!今の俺に殺れるのか?可能性があることを信じてポイズン・スナイプで……!


「カオル。ポイズン・スナイプじゃワイバーンは殺れない。ワイバーンは硬い鱗で覆われていて並大抵の魔法や剣は通らない」

「じゃあどうすれば……?!」


 俺はそこで言いとどまる。それはラーミスさんに魔力が急速に集まっていっていたからだ。彼女は何かの魔法使うつもりだ。それもワイバーンの鱗を貫く程の魔法を。


「カオル…私が『鉱姫』と呼ばれる由縁、見せてあげる」


 ラーミスさんは背負っていた巨大な斧を握る。すると斧は溶けるようにして、形が変わっていった。ドロドロに溶けた液体は生きているように形を形成していく。


 ラーミスさんの手には、銀色に輝く薔薇が咲いていた。彼女はその銀の薔薇を地面にポトリと落とす。


「『鐵茨薔薇テツイバラ』」


 彼女がそう唱えると、銀の薔薇は禍々しい姿に変わり、辺り一帯に俺を避けるようにして棘が出現した。


 棘には枝分かれするように更に棘が生えており、餌食になったワイバーンも抜け出せずにいた。というかもう死んでいた。


「これが『鉱姫』……」


 じきに棘は地面へ戻っていき、ラーミスさんは地面に落としてしていた銀の薔薇を髪飾りのようにして頭に付けた。


 彼女は振り返り、俺にドヤるようにして笑顔を見せつけてくるのだった。





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 えちょまです。

 ボタン反応しなくてキレた

 それじゃ

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転生冒険者は毒魔法使い えちょま @mepuru127

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