第9話 冒険者ギルド

一方、その頃


「まじかよ・・・何もねぇな」


田舎の村・・・ハグレビの村に到着した時バルドが呆然と呟く。


「・・・まさか、ここまでとはね。田舎をなめてたわ」


マリーも呆然と呟く。


広大な土地の中で村人の家がぽつりぽつりと点在しているだけで、娯楽施設の一つも見当たらなかった。


「そーお?自然豊かで良い場所じゃない?空気も美味しいし」


セシリアは深呼吸をした後、満足そうにする。


「「はぁ・・・」」


バルドとマリーは顔を見合わせると同時にため息を吐いた。


「・・・ひとまず、ギルドに行きましょ」


「・・・そうだな。ギルドは酒場も併設しているだろうし」


ギルドなら最低限の設備はあるはずだと潤いを求めて歩き出す二人。


「???」


先に進む明らかに元気のない二人を見て、何故気落ちしているのか本気で分からないセシリアであった。




偶にすれ違う村人と会釈をしながら・・・といってもセシリアだけは元気に挨拶をしていたが・・・わりかし長い距離を進んでいくとひと際大きな建物がようやく見えてきた。


「・・・良かった。ギルドはまだまともだわ」


見覚えのある建物を見てマリーが安堵する。


「・・・そうだな」


続いてバルドもマリーと同様に安堵した。


「ホントだ!あははっ!完全に浮いているね」


一人、勇者であるセシリアは別の理由で喜んでいる。


その建物は周りの家からすると段違いに立派な3階建ての建物であった。


これこそが冒険者ギルドである。


流石に大きな街にある冒険者ギルドの建物はこれ以上に豪華ではあるが、基本的に冒険者ギルドの建物はどの町や村でも同じ見た目の構造と設備となっている。


それは、見知らぬ町や村に行っても冒険者達がギルドの場所が分からず困らないようにすることと、どのような寂れた村であっても冒険者ギルドの設備によって一定以上の環境を保つことで冒険者達が行きたくないという感情を少なくするための配慮で会った。


「さっさと入ろうぜ。早く酒が飲みたい」


もはや待ちきれない。バルドが他の二人にそう声を掛ける。


「ええ」


同意見のマリーが肯定する。


「うん!」


冒険者ギルドに行くことに異論がないセシリアも了承の意を示す。


こうして三人はハグレビの村の冒険者ギルドに足を進めた。


「「「・・・」」」


中に入った三人は他の冒険者ギルドの連中から鋭い視線を浴びせられる。


入ってきたのが見知らぬ者達であることが分かるとおおよそ半数の視線が減る。


残った視線は、興味、縄張り意識、何となくといった様々な感情から来るものであった。


「すみませ~ん」


そのような視線など気にした様子も無くセシリアがカウンターに向かい冒険者ギルド職員に声を掛ける。


色々な町や村を渡り歩いてきた三人にとっては慣れたものであった。


(・・・ん?ギルドの壁に穴?)


セシリアの後ろに待機していたマリーがちょうど一人の人間がぶつかったらできそうな大きさの穴が開いているのを見つける。


(ふぅ・・・やだやだ。こんな田舎でも序列争いがあるなんてね)


呆れたように内心で溜息をついた。

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巷で有名なスライム・キラー。彼は誰よりも強かった 千石 @gcik

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