ふらちぐらし

和田島イサキ

(短歌二十首)

電線が雀に占拠されているあるいはもはや地球すべてが


文明の滅んだあとをきみとゆく前からピザの宅配が来る


うらぶれた狭い田舎の中華屋のくせに花椒効きすぎている


牙をむく大きなサメのぬいぐるみ帰路のことまで頭になくて


なんかいるでかい犬いる駆けてくる元気出るほどでっかい犬が




暴力のちからを信じすぎているふたり揃ってヒョロヒョロなのに


人見知り苦手なものは関ヶ原ひとがいっぱい居たはずだから


似てるのはどの有名人か聞いたのにどういう理由かウニが三票


ガチャガチャのカプセルにまで変なツメ貴様もわたしを置いてゆくのか


友情のちからが信じられないの違うお前を信じないだけ




掃除機の五分もたない「強」のほう罠と知りつつまた流される


ポテサラのリンゴに下した判決をたった三口でなかったことに


バスタオル好きな気持ちを十として洗濯したくなさが百億


うおおおおメリメリメリメリぬちょちょちょちょ歯磨き粉使い切るときの音


久々に触れるあなたのうなじからねりけしみたいな匂いがします




虫除けの上をのそのそ這う虫をすごい顔して見つめるわたし


スズムシに混じって何か鳴いている隣の庭にファックスがいる


九時過ぎに塾の灯りがついている関係ないのにごめんと思う


星になるすごいパワーの竹とんぼだったらわたしもいける気がする


きみといる今が嘘ならこの町内本当なんか何ひとつない

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