二〇首 にほんのうた

千田美咲

二〇首 にほんのうた 

きこえたよ

げんきなこえだ!

梅雨になりゃあ

したたり落ちて

泥にまみれる


雑踏よ

ふぶけよふぶけ

鼓膜まで

たまりにたまって

やぶり切るまで


シ・ラ・ン・ケ・ド

五文字をつかい

折れる音

気にしていても

振り返らない


くらめいて

倒れた先は

アスファルト

気づけば埋まり

路になりはて


あおぎ見る

白い天井

手元には

ナットにスパナ

ベルトコンベア


換気扇

音立てまわる

ガガガガガ

なおされもせず

ただただまわる


若者よ

ハコからハコへ

ぐるぐると

まーわれまわれ

期待しながら


ぼくのせい

そう思えれば

すばらしい?

いいやちがうね

マリオネットだ


かたちなく

欲望もない

さびしさよ

どこからどこへ

吹き抜けるのか


片眼とじ

頬杖をつく

老人は

倍速のなか

ゆっくり生きる


朝日浴び

働くうちに

月のぼる

街灯照らす

道をくだって


ひとはみな

堅実なれと

いうけども

現実はいう

そうはいかぬと


哲学は

暇人のガク

われらには

なにもあたえぬ

むしろとられる


疲れはて

眠りにつけば

泥のよう

目覚めることは

もはやあるまい


時計鳴り

身体起こせば

痛みだす

毎日がコレ

何年つづく?


道見れば

学生たちの

華やかさ

いかにしおれて

土に還るか


労働者

どうあがいても

労働者

働きつかれて

昔を想う


雨が降り

飛沫をあげる

人通り

空はカラフル

パラソルの下


白昼夢

どろどろとした

パノラマに

濃淡の濃い

横顔うつる


暗がりで

ライターあそぶ

子どもたち

炎にゆられ

たちくらめいて





































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