第11話 後方配置1

 ここは、北方戦線、エリー機動大隊現地配備、6日目早朝。


 エリー大隊は、帝国特殊部隊の襲撃を受けてから30時間ほど経過していた。


 今回の帝国特殊部隊急襲を重く見た国軍参謀本部は、特別第一機動連隊第一機動大隊の後方移動配置を、極秘で発動した。そのため、現在エリー大隊は移動準備中である。


 内容は、エリー大隊〈第一機動大隊〉と第二機動大隊を密かに入替、エリー大隊を30km後方に配置隠蔽するものである。

 移動は分散して各別ルートで移動地点に合流、移動に関しても別部隊名を使用して自軍に通達している。


「重装機兵の偽装、第二大隊との入替配置は完了しています、車両移動は今から30分後より順次開始します、エリー少佐は第3班のセーヌ大尉と一緒にお願い致します」

 ミラー中尉がエリーに報告する。


 エリーはミラー中尉の顔を見て言う。

「準備ご苦労様です! これから移動開始しですね、移動班は各10グループでしたね、到着予定はどうなっていますか?」


 ミラー中尉は予定表を見てエリーの言う。

「予定通り進行すれば、本日17:00ですが」


「了解しました、ミラー中尉よろしくお願いします」

 

 エリーは微笑んでミラー中尉に敬礼する。直ぐに、エリーは周囲を確認してミラー中尉に近寄り、そして小声で呟く。

「昨晩の件、了承しました。時間が出来れば調整しますので」

 

 ミラー中尉がそれを聞いて顔を少し赤らめる。

「はい・・・・・・、ホントにですか? うれしいです、ではあとで連絡します」


「エリー少佐! コソコソ何をしている」

 ミーナ連隊長が整備ブロックの隅に居るエリーを見つけて言う。


 エリーは直ぐ姿勢を正してミーナ連隊長に敬礼する。

「移動の打合せですが、何か」


「ほう、何故隅で顔を近づけてコソコソ話しているのだ、男女がイチャイチャしている雰囲気だったのだが? 違うのか」

 

 ミーナ連隊長がミラー中尉の顔を見て言った。そしてミラー中尉が動揺した顔をして言う。

「今後の打合せです、他になにも有りません!」


「まあよい、軍務に支障がないのなら問題は無い」

 ミーナ連隊長はエリーの澄まし顔を見ながら言った。


「移動地には、特別第三機動連隊がすでに着任している、エリーが着いたらジェーンの指揮下に入れ!」


 エリーが少し驚いた顔をして言う。

「特三連隊に編入ですか? そう言う事ですか、私は信用されていないのですね」


「エリー少佐! お前にはしっかりとした抑えが必要だ、自由にさせるわけないだろ、私と少しのあいだ離れるが、しっかりやってくれ」


 ミーナ連隊長がエリーを眺めて少し寂しそうな表情をする。

「今回の件、参謀本部も状況判断が甘かった様だ! 帝国軍は、エリーをかなり恐れている! だから今回の様な襲撃が発生した」

 

 ミーナ連隊長は続けて言う。

「今回は、私も責任を感じている、警備をもう少し厳しくしていれば、敵も襲撃を諦めたかもしれんと思っている」


 エリーがミーナ連隊長の顔を見つめて言う。

「お言葉ですが、今回の襲撃部隊は帝国でもかなりの手練を、一個小隊規模で送り込んできています。つまり、少々の警備強化では防げなかったと考えます!」


 ミーナ連隊長はエリーから視線を外して言う。

「まあ、エリーの言う事も正しい、だが、敵の脅威を、私は過小評価していた。それは事実だ」

「セレーナ大尉が居なかったら、多分エリーとこうして話せていなかっただろうな・・・・・・」


 そしてミーナ連隊長はエリーの瞳を見て少し微笑んだ。


「まあ、油断は出来んな、移動に関してもしっかり準備している、お前の父親から連絡があった。ブラウン商会の警備担当者を送ると・・・・・・、参謀総長の許可も得ている、エリーの父親は大概だな」


 エリーが少し驚いた顔をして言う。

「え・・・・・・、警備担当者? 何ででしょうか?」


 ミーナ連隊長が視線を偽装された重装機兵レンベル向けて言う。

「軍では頼りにならんと、お前の父親が参謀総長に圧力を掛けたらしいのだが、私は今回の件で改めてお前ら親子がとんでもないと知ったよ」

 

 ミーナ連隊長は重装機兵レンベルに近寄り足元の装甲プレートを軽く叩く。

「これもブラウン商会工廠製だ、この機体の技術は他の重装機兵とは全く別物、そして、エリーしか扱えない」

 

 ミーナ連隊長は少し間を置いて言う。

「本心から言えば・・・・・・、エリーお前とは関わりたく無い」


 エリーはミーナ連隊長の方に寄って顔を見つめ言う。

「知っていますよ、連隊長が本当は臆病で厄介ごとが嫌いな事・・・・・・、でも私のこと心配してくれてます、連隊長は優しい方です」


 ミーナ連隊長はため息を吐いて言う。

「エリー少佐、本当に嫌になるくらい見透かされているな・・・・・・、まあ良い、気を付けて行ってこい!」

 

 ミーナ連隊長が少し微笑んでエリーに言う。

「あゝそうだった、ジェーンがエリーに会えると喜んでいたぞ」


 エリーはそれを聞いて言う。

「はい! 私も嬉しいです」


 ミーナ連隊長がエリーに敬礼する。

「エリー少佐! 私は連隊本部に帰る。悪いが見送れん、気をつけて行け」


 それを受けエリーも敬礼する。

「はい、ミーナ連隊長! ありがとうございます!」


 そして、ミーナ連隊長は機兵整備ブロックから去って行った。


 

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少女大隊長エリーの日常〜女神様の加護を受けて最前線で無双する〜 かわなかさと @sato007

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