第10話 後始末5
ここは、北方戦線、エリー機動大隊現地配備、五日目深夜。
エリー大隊は、帝国特殊部隊の襲撃を受けてから24時間ほど経過していた。
今エリーは、重装機兵レンベルのコックピットの中に居た。
『こちら大隊本部! エリー少佐! 現在地、報告願います!』
通信カムから通信員の声がする。
「こちらエリー! 現在、中間エリアポイント25! 敵影見えず! 帝国陣地手前三キロ付近! 誘導弾、その他、砲撃も確認出来ず! 静かなものです以上!」
エリーが通信員に返信する。
時間は、今より2時間程遡る。エリーは重装機兵の整備ブロック内で愛機、重装機兵レンベルのシステムチェックをアナ曹長と行っていた。そこへ、アンジェラがやって来たことで今回のことが始まる。
エリーがアンジェラを嬉しいそうに見る。「どうしました。アンジェラ中尉!」
アンジェラは、エリーがここに居るのをちょっと驚いた表情をする。
「ええ・・・・・・、最前線は、初めてなので寝付けなくて」
エリーが嬉しいそうに言う。「向こう側にあるラムザの新型機兵は、アンジェラ中尉のですよね」
「ハイ、そうですが?」アンジェラはエリーの笑みが不気味に感じながら答えた。
エリーがアナ曹長を見る。
「アナさん、向こうの新型、動かせますか?」
「ええと、動かせますけど、兵装の同調がまだ完全じゃないですけど、まあ、あとは実戦で微調整て感じです」
「アナさん、向こうの新型機、システム機動させて下さい」
「アンジェラ中尉が乗りたそうだから、お願い、近くをちょっと回るだけだから」
エリーがアナ曹長の目を見て微笑み首を傾ける。
「ハイ、起動立ち上げに十五分くらい待って下さい」
アナ曹長が答えた。
「アンジェラ中尉、パイロットスーツに着替えて下さい、今から出ますよ!」エリーがアンジェラを見つめて嬉しいそうに言った。
「ハイ! 着替えて来ます! お待ちください!」そう言って、アンジェラは機兵パイロット待機場へ駆け出した。
そして、二時間後、現在に至る。
『本部よりエリー少佐へ! これ以上の前進は控えて下さいとの事です! 以上!』通信員から指示が入った。
「本部! 誰の指示ですか?」
エリーが不満そうな声で通信員に聞き返す。
『エリー! 私だ! ミーナだ! 連隊長命令だ! わかったらさっさと引け!』通信カムからどなり声が聞こえる。ミーナ連隊長だ。
『なぜ勝手に出た! エリーが出る時は、私の許可がいると言ったはずだ!』ミーナ連隊長は怒り心頭だ。
エリーはたまらず、通信カムのボリュームを下げる。「エリー了解! 只今より帰投します! 以上!」
『本部了解!』
重装機兵レンベルは魔導融合炉出力を上げ、浮遊推進に切り替えると、反転してベースキャンプへの帰路に着く。
エリーの通信カムがブルーに光る。『エリー少佐! 申し訳ありません! また迷惑お掛けしました』
エリーのレンベルに追随する機体、ラムザⅣ型に搭乗している、アンジェラからのローカル通信だ。
「アンジェラ中尉、気にしなくて良いです! いつもの事ですから」
そしてエリーは、レンベルの速度を上げる。「さっさと帰ります! スピード上げますよ!」
『アンジェラ了解!』アンジェラのラムザⅣも加速して、エリーのレンベルの後を追う。
◇◆◇
ここは北部戦線、同時刻、帝国軍第三軍の最前線司令部テント。
「五キロ先に、二機の連邦国、重装機兵確認しました。朱色の機体一機、黒色の機体一機との事です! 尚、機体の特徴から一機は【グランの魔女】と思われます!」
当直士官が慌ただしく、戦線司令官に報告する。
「朱色の機体【グランの魔女】か! 軍団長の命令通り、防衛ラインまでは、絶対に手を出すなと各部隊に再度徹底する様、通達しろ! 絶対だ!」
「はっ! 展開中、四個師団に通達致します!」
「帝都から、魔女狩り編成部隊が到着するまでは、極力交戦は避けろとの事だからな」戦線司令官は呟いた。
そして、暫くして別の士官から報告が入る。「報告します! 二機の重装機兵、自陣に高速離脱したとの事です!」
「なに、引いた? そうか・・・・・・ 連邦国に大規模行動の予兆はまだない、こちら側としては、魔女がいる以上迂闊に手は出せんからな」
戦線司令官はふっと息を吐いて安堵の表情を浮かべる。
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