第5話 騎士の名に懸けて忠誠を…
ソフィから学んで1年程になる。且つ、この世に生まれて5年となる。
彼女と一緒にいたせいなのか、僕が育ったからなのか、すくすくと自然に言葉を思い浮かぶことができるようになった。僕は自分の道徳性を問うようになった。何が良くて、何が悪いのか、そして、それから浮かび上がる問題とは何か?まだその問いに対しては答えが出ない。でも自分で考えることによって、自分を疑うことが出来ると信じている。
ソフィのことはまだ親には言っていない。何故なら、きっとソフィにも面倒がかかりそうだからだ。魔法を学ぶのにきっと専門の教師もいるのだろうが、僕が観てきた以上、彼女に代わる魔術師はそういないだろう。会っていないときには伝書鳩を通じて話していた。その時にいつ来るのか、何があったのかを度々と手紙を送り合っている。彼女の他人から見る視点という考え方がまだ完全に理解できずにいたが、なんとなくそのような心構えだけは忘れないようにしている。
それに、いくら貴族が一流の教師を揃えたところで、子どもに本質を学べる人がほんの一握りとも言えるだろう。僕は本当にソフィに教えてもらうことがどれだけ良いことなのか未だに感謝しているところだ。
___大人は時として裏切るが、どんな場面でも美人だけは正義なのだ。
そんなはずはない…って誰に言っているんだ僕は。
そしてラナド王子にもその間に会っている。
ラナド王子が「セイレンは剣を学ばないのか?」と僕に良く聞くのもあってそれからも考えたのだが、やはりまだ剣を学ぶことについて諦めてはいない。父が剣を学べという指図は受けていないことから多分学ばせる気はないのだろうが、それについて語ってみることにした。
僕は今父と母と朝食を食べいる途中だった。
「父上、僕はいつになったら、剣を教えて貰えるのでしょうか?」
「うん?」
父は僕が剣を学びたいということについて不意を突かれるように反応した。
「なんだ急に?」
「ラナド王子が剣を学んでいるというのを聞いたもので、僕も剣を学びたいのです」
「そうだよね、セイちゃんならきっと良い剣士になれると思うわ。そろそろいいんじゃない?あなた」
「そうだな、考えてみてもいいが、それより、今日連れて行きたい場所があるんだ」
「連れて行きたい場所ですか?」
「そう、家族全員でな」
父は今日一ご機嫌な様子だった。その目は何かの始まり、そう思った。
そんな意思の表れを見せても、僕の話をあしらった。父の中にはその質問の中に対して、不安があったのだろう。それとも僕に何かを隠したいのかは分からないが、いまだに自分の父のことさえまだ理解しきれていない。
「あら、あなたってロマンチストなんだから」
僕の母は父にくっ付いた。
「ああ、勿論さ。君のためならなんだってね」
こちらから見ると照れくさいことだけが残るのだが、今も新婚の夫婦みたいにアツアツで仲が良いのは良いことだ。
…
言葉通り、家族全員で出発をした。
父は僕たちにプレゼントを贈るかの如く、長々と張り切っていたようだった。
それもそのはず、僕たちはアルメラス王国の城の近くに行っている所だった。
でも、別に王様を会うわけでもなく、父が僕たちに見せようとしたのはある景色だった。
「きっと驚くぞ、セイレン。この世界が、この国がどれだけ素晴らしいかを見せるさ」
「な~んだ、またこの場所ですのね。でも懐かしいわね、この場所にいくの」
「何回行ってもいい場所だろ?でもその変わりに、今度はもっと凄い場所に連れっててやるさ」
「ああん、それでこそ私の旦那ですわ」
二人のイチャイチャがしていた矢先、その場所の前に立ち止まった。
その景色とは高い場所からこの国を見てるところだった。視界の少し先には透き通った海岸が垣間見た。そして、人々がただ気ままに生活しているということをきちんと見れるような心地いい賜物だ。
「この国にはたくさんの歴史があるが、俺はその中でも、この景色を見るのが好きだ。なぜならここは、夢と希望が詰まっているからだ。だからこそこの思いを無下にはできない…セイレン、お前たちがこの国の思いを共有する歴史的な瞬間を目撃するんだ。皆がこの景色を見て、初めて他の国と手を取り合うということに…」
確かにその姿には圧巻していた。人々が何年この景色を守り、そして、敬うことが出来たのかを。
まさかこの国だけでなく、他の国もこの景色を見れるというのは可能性はあるんだろうか?
「父上、人々は果たして分かり合えるのでしょうか?」
ふと出てきた言葉がそうだった。父上がやろうとしていることには納得ができるし、尊敬もする。でも自分の心の中には疑うという言葉が胸の内にある。
「セイレンお前はどう思う?」
「僕は…」
どうなのだろうか?確かに、いつか人は分かり合える。でも、人々がそう思わないことにはその根本的な問題には辿り着かない…父はそれを成そうというのですか?とは口では言えない…
「お前はいつだってそうだったな。他人とは少しスバ抜けていて、それでかつ、学ぶのが早い。それはいいことだ。でもな、セイレン。いつかその答えをはっきりと出さないといけない時が来る」
「それが、自分の納得できない答えだとしてもですか?」
「…人生はそう簡単ではない。でも希望に溢れ、選択に満ちている。故に間違うことも多い。それが今でなくても、時代は変わらなければいけなのだ」
あの日来た賊たちを見てきた以上、そうは思えない、でも心の中では人々は全員、同じ道に向かっているというのに信じてみたい。
「確かに、時代が変われば、そうなるかもしれませんね」
「じゃあ、人々この景色を見て、人は動かされないと?」
「多分それ以前に、根幹となるのは人に見せることなのでしょうか?」
「いいことを言うではないか。もちろんそれが人と分かり合うためには必要ではないと思う。でもこの景色を守ることに意味があるんだ」
僕はそれを聞いて、言う言葉もなかった。
「俺はそれを守りたい、そして確かにこの景色が此処に存在しているという証を残したいんだ。それでも疑うか?」
確かにこの人ならこの国をより凄く、そしてもっと素晴らしい国することができるのだろう。
「いえ、父上の言葉を信じます」
「そうか。ならセイレン、次の時代はお前が先頭になって仕切るんだ。そして、導け」
「はい…」
普通の子ならここで張り切って、父の言うことを素直に受け入れるだろう。僕はまだ難しいことは何も分からないし、関心があると言える自信もない。でもこれだけはわかる。父の言っていることは本物であるということ。それなら尊敬はしたい。
僕は時代を動かすほどの自信はないが、きっと素晴らしいことの始まりを見ることになるということについて理解できると思う。
そしてしばらくこの時間を堪能した。
…
後日、僕はまたあの隠れ家でラナドと会うことになった。
そこにはアーネストさんもいた。
僕はラナドとまた一緒にあのボードゲームをやっていた。
このゲームの名はツペリックというらしい。昔、このゲームは英雄談を元にして作られていて、貴族の中では人気だ。のちに、このゲームは兵士を鍛え上げるために作られていて、戦略的な思考を促すために作っている。そしてこのゲームはボードのフィールドによって、違う状況を想定している。そのため、かなり思考力を鍛えられるゲームというのを段々と知ることが出来た。
少しずつだが、今はこのゲームのルールを段々と分かっていくうちに、駒をどう動かせば良いかをしることが出来だ。さらに、アーネストさんにも対戦して、運よく勝てたこともある。
「で、結局セイレンは剣を学ぶのか?」
「僕は学びたいけど、僕の父は多分許してくれそうにない。なぜそんなに拒むのかわかりません」
「きっとテルト様は色々と考えているのですよ」
「確かに、父上は頑張っていると思います…あそうだ、アーネストさんなら僕を指導することはできませんか?」
「そうだよ、アーネスト!セイレンも良いだろー」
アーネストは困った顔をしていた。
「残念ながらそれは出来かねます。我ら騎士は大人の事情で色々と原則的に厳しいのです。すいませんね」
「そうですか…」
それはそうか、いくら貴族の子どもとはいえど、子どもに教えるとなると、問題があるのだろう。それなら仕方ない。
「でもラルフェットになら何か教わることがあるのではないでしょうか?」
確かに、ラルフェットは僕の家の専属の騎士だ。とは言っても、僕に無断で剣を教えてくれるのだろうか?それに、彼は僕よりも父の方に親しいはずだ。
「どうでしょうか?あの人はアーネストさんよりも頑なに断ると思います」
「いえ、案外、そうでもないですよ。ああ見えて、人のことになると許してしまう人なのですよ」
「そうなんでしょうか?」
「彼はしっかり者で、秩序を守る節があるかもしれませんが、彼は根っからの純粋なお方です。昔のラルフェットに合っていたらきっと驚きますよ」
「へぇそうだったんですね。ずっと気になっていましたけど、アーネストさんは彼とどういう関係なんですか?」
僕がそう言うとアーネストは懐かしそうに上を見上げていた。
「彼は…私にとって良きライバルであり、そして良き友人。ですかね」
ラナドはその話を聞いて目を輝かせていた。
「じゃあ、それは僕とセイレンみたいだな」
「うん、僕が?」
「そうだよ。僕はお前に負けたくないし、でも仲良くもしたい。悪いか?」
僕は思わず、彼の言葉を聞いて、少しだけ安心をした。
「…いや。意外だなって思って…」
「なんだよ!気持ち悪いな…」
「まあいいじゃないですか」
僕たちがこう楽しく話していると、一人、隠れ家に入っていく人がいた。
「なんだか今日は騒がしいではないか」
その人とはセルウィン王子だった。
「殿下、ご無沙汰しております」
「確かに久しいな。ラナド、手は抜けていまいな?」
「ああ、もちろんだ」
「ええ、私が保証しますよ。順調ですよ」
セルウィンは呆れた顔をする。
「お前の保証は当てにはならん」
「これはご失礼しました」
アーネストは笑みを浮かべて言っていた。
そして王子は僕の方を見た。そういえば、赤ん坊以来この人には会ったことがなかったな…
「で、お前が噂の…随分弟とアーネストをお世話になっているな」
「はい、初めまして殿下、セイレンと申します」
「よせ、セルウィンと呼ぶがいい」
「はい…」
やっぱり実際に顔を会わせてもこの人は苦手だ。
「僕の弟とアーネストをツペリックで勝っているらしいではないか?」
セルウィンが指したのはラナドたちと一緒に遊んでいたボードゲームのことだった。
「ええ、別にそこまで強くありませんが…」
「いや、俺には分かる。お前には違う何か|を感じるぞ。安心しろ、俺が判断しやる」
「兄さん、久しぶりにやるの!」
「お前は剣の修行でもしてろ」
「ええ!なんでさ~」
「確かにまだ剣の練習はまだ残っていました。行きましょう、ラナド王子」
「う~ん、いつもこういう時にー」
ラナドとアーネストは剣の練習に戻り、僕とセルウィンは、ツペリックを用意し、駒を準備した。
彼は手慣れるように駒を並べて、真剣な眼差しをしていた。
彼がそんな態度をとると一気に空気が変わった。まるで本当に彼と剣の手合わせをしているみたいだった。ただこのゲームでは指揮官がどのように兵士を動かすかの違いだ。
「貴様はこの国のことについてどう思う?」
「この国ですか?とても気に入っています。人は優しいですし、文化にも溢れている。この王国は僕にとって大事な国です」
セルウィンは平然な顔をしていた。
「まあ、妥当な意見だ。俺はこの国は素晴らしいと思う。この国の文化、先祖代々が積み上げたこの国は誇りに思う。俺が王子である前に、騎士として、一人の民としてこの国を大事にしたい。…だが俺はそうは思わぬ」
王子は駒を動かしながら語る。
「この国は破綻しようとしている。それは俺の父を見ればわかることだ。そしてお前の父、テルト伯爵はそれをなんとか改善しょうとしているが、それも上手くいかない」
国が破綻?父が言っていたこととなんか違うぞ…あんなに張り切って僕に話をしたのに、意見が食い違っている。セルウィンは頭がおかしくなったのか?これまで僕はその問題を知らなかったとでも言うのか?
「なぜですか?僕の父はこの国のために尽くしているではないですか?」
「それはそうかもしれぬ。その様子だと、テルト伯爵はお前に見せたんだな?あの景色を。俺は別にテルト伯爵のことも嫌いではないし、陰口を言うほど小さい人間ではない。だが、彼の語るこの国の未来は理想郷にしか過ぎない…子どもの心を擽るものでしかない。それに何の意味があるというのだ」
僕はてっきりセルウィンは僕の父が苦手だと思っていたが、そうでもないらしい。案外少し尊敬があるようだ。
「何故そう思うのですか?」
「だっておかしいではないか?今まで起きていることに違和感を感じているのは薄々気付いているのだろう。お前がしっかりと家から出たのはいつだ?その様子から察するに最近と言ってもおかしくはないはずだ」
「そうですが…」
彼の言う通り、家から出ることは限られていたが、それは僕が幼いからじゃないのか?
僕が知っている以上、ちゃんと外出していたし、何も違和感がないとは思っていたが。
「それだけじゃない、お前、剣も触ったこともないのだろう?その様子だと理由すら聞いてはずだ」
もしかして、これ全部に理由があるというのか?いや、流石に言い掛かりとしか思えない。
「何故わかるのですか?」
「テルト伯爵は公にはしないが、彼は他の国に危機感を持っている。お前が生まれる前からこれが起きている。そしてその状況は改善しているように見えるが、それは表向きの話だ。内面はただの権力競争に肩入れしている。愚かなことよ、そんなことをすれば何も決着はしないのにな」
確かに、ある本に少しだけ戦争らしき歴史のような記録が家の中にあった。父たちは僕がその本を見せないようにと注意していたが、気になるあまり覗くことができた。その内容とはアルメラス王国の侵略記録が確かに書いてあった。でもその記録には失敗していると書いてある。でもまさか最近だったとは知らなかった。確かに、それならセルウィンの言っていることも納得できる。
「お前の父はたとえどんな人であろうと、受け入れるつもりらしいが、痛めつけられた民の傷は誰が癒そう…?その憎しみは果たして消えるとは思わない。いくら目的が似ていようと、意見の齟齬があるのは逃れられないことだ。そうは思わないか?」
「どうでしょう、僕は双方の意見を根本的に理解さえすれば、きっと分かり合えると思います」
セルウィンは一瞬動きを止めて、表情を緩めた
「ふん、確かにお前の言うことは面白い。だが本質はまだ子どもの意見だな。それでも、今はそれでいいかもしれない」
セルウィンはゲームに集中しようとしていた。
「お前は自分が未だに剣を持てないのか知りたくはないか?」
「え?」
父が僕に剣を持たせない理由?父は反対しているというのか?
「お前はいつか剣を取る時が来ると思っているかもしれないが、
テルト伯爵は敢えてお前を剣の道から遠ざけようとしている。絶対に剣を持たせてはならない…とな」
剣を持たせてはならない…父が何故…
「どうしてですか!」
僕の荒げた声を聴いて、一瞬アーネストとラナドがこちらに顔を向けるが、アーネストはラナドを注意を引いて、練習に戻った。
「理由は様々だ。きっとお前に剣の素質がないと思っているのだろう。そんな我が子を戦場に送りたくはないっといったところだ…正直彼の気持ちも分からんでもない。彼が見てきたものはそれだけ残酷なことなのだろうよ」
僕はそれを聞いてそれが正しいのかどうかは分からないが、僕はまだ父を信じたい…
そして、彼が見せたものが本当であると信じたい…でもセルウィンはこうして僕に語っている。僕は何を信じればいいんだ?
セルウィンは自分の苦い思い出が甦るように、少しずつ気持ちの昂ぶりを見せた。
「それは俺も同じだ…俺は見たんだ、この目で、破綻をしていく行く末を…そしてお前もいずれそれを目撃することになる。悪いことは言うまい、誰も信じるな」
王子は珍しく、激しい感情を促していた。どこかもう二度とそんな経験を味わいたくないような主張だ。彼は一体何を見ればこんなにも動揺をするのだろうか?
「それがたとえ、あなた…でもですか?」
セルウィンは僕の発言に関心するように驚いた。
「さぁな…でも俺はお前が全てを理解した時、信じたいと思っている」
彼の言葉にしては意外だった。肯定も否定もせず、ただ、信じたいというところに気になった。やはりまだこの人のことはまだどちら側の人間かは分からない…
そして、ゲームの戦況を見てみると、僅差で僕の勝ちだった。
違う意味でも冷や汗を浴びながら対戦をしていたが、ツペリックに集中していたのもあって、自分の平常心を保つことが出来た。
「やはりやるな…お前の実力はまぐれではないということか」
練習を丁度終えたラナドが試合の結果を見た。
「やっぱすげぇよ!セイレン!兄上はこの国でもかなりの強いんだよ」
「え?手加減したんですか?」
「するわけがない。素直に喜べ。お前の勝ちだ」
そうすると、王子は立ち上がる
「楽しかったぞ、また来るかもしれない」
「え~兄上!僕ともやって下さいよ!」
「お前には10年早いわ。もしあのアーネストか小僧に勝てるようになったらやってやる」
「言ったね、兄上!僕本当に頑張るから!」
「期待している。弟よ」
セルウィンは笑みを浮かべて隠れ家から出て行くと、僕は彼に近づいて、ある事を尋ねた。
「あの!」
セルウィンは止まる
「何故僕にあんなことを?」
彼は頭を下げて笑みを浮かべる。
「どうしてだろうな。少しでも転機のチャンスがあるのなら、きっと未来に託したいと思った、からだろうな」
そうすると、振り向かずに手を挙げながら去って行った。
「精進しろ、少年」
その言葉を聞いて、彼の気持ちがなんとなく伝わることが出来た。
「ていうか、兄なんて言われたんだ、セイレン?」
僕が声を荒げたことに気になっていたようだ。
「いや、何でもないよ、ツペリックで悔しい思いをしただけさ」
…
僕が家に帰ると、そこにはラルフェットが剣の練習をしている。
未だにセルウィンの言っていることを鵜呑みにはできないし、別に父のことが嫌いにはならない。それを置いても僕にとっては素晴らしい父親だ。しっかりと僕に色んなことを教えることが出来たし、感謝もしている。
それでも、僕は人を守りたい…もう自分の無力さ、を感じたくはない。
父が僕に剣を教えたくないというならラルフェットに聞いてみることしか出来ない。
「ラルフェットさん、練習の邪魔になってすいません。少し、時間いいですか?」
「セイレン様のためならいつでも」
ラルフェットは一回剣を納める
「やはり父は僕が剣を持つのをためらっているのでしょうか?」
ラルフェットは戸惑う様子を見せつつも、正直に話した。
「そう、厳しく申しつけられています。自分では何も出来ることはありません」
やはり、ここで剣を学ぶのは無理ということか
「ですが、セイレン様を楽しませるよう、独り言をしながら剣の練習に戻ります」
すると、ラルフェットは、剣を振りながら剣のことを話してくれた。
きっとアーネストが言おうとしていることが分かってきた気がする。
「剣にはいくつかの流儀があります。流星流、閃光流、聖心流、粉砕流」
彼は一つ一つの例を動きを見せながら僕に見せてくれた
流星流はとても綺麗な流儀だった。騎士本来の尊厳を映すような動きだった。
閃光流は素早い攻撃を繰り出し、相手に攻撃の隙を与えさせない動きだった。
聖心流は力を練り、守りに徹する動きだった。他の流儀とは違い、動きを簡単に見切れない
粉砕流は3つの流儀とはかけ離れて、剣を変わった方法で力強く剣を使う動きだった。
「この国で多く使われるのは流星流です。
他にも流儀はありますが、事情があってそんなものは教えることはできません」
そして独り言の説明が続いた。
「剣を使う時に、魔力を使うことが多々ありますが、最初のうちはしっかりとコントロールするためにもその分量を決めた方が良いかと思います」
「精霊術はどんなように使いますか」
「精霊術はかなり応用的な使い方ですが、魔力を必要としません。でも意識することが多いため、使える者は限れていています」
やはり、剣だと、魔力の使い方、精霊術の使い方も違ってくるということか。
「セイレン様は騎士になりたいのですか?それとも別の目的がおありで?」
「いえ、ラルフェットさんのように、騎士にはなれないと思います。でも、人を守るために学びたいのです」
ラルフェットは一旦剣を止め、僕に何かを伝えるように喋りだした。
「僕が一人前の騎士にちゃんと成れたのは最近のことです。僕には小さい頃からの師匠がいました。
自分は貧しい家にいたもので、師匠が僕を見て、『お前には透き通るような眼をしている。君のような騎士が必要だ』っと言ってくれました。彼とは長い間修行して強くなりました。
ですが、ある日、僕は師匠とある日旅をしていた所、手練れの新手に合い戦うことになりました。僕はその人たち相手でも勝てると気を保とうとしていましたが、結局僕は師匠に守られてながら死にました。それ以来、僕は騎士として忠誠を誓おうと決意しました。剣を学ぶというのはこれを承知で覚悟しなければならないのです。それでも剣を学びたいのですか?」
ラルフェットがこんな思いをしていたとは…
人を守れるぐらい強くなるということが時には呪いにもなるというのか。
「それでも、僕は知らないといけなんです」
ラルフェットは目を閉じて、気を取り直していた
「セイレン様、失礼を申しました。あなたの覚悟、伝わりました。僕には何も出来ませんが、僕はこの家の騎士として応援します」
「ありがとうございます。ラルフェットさん。普通ならこんなことを教えて貰うのはだめなんですよね?」
「セイレン様、僕はあなたがどんな選択をしても、僕はあなたの味方となります。それが僕に出来る誓いでございます」
「それはどういう?」
「いえ、なんでもありません。僕はあなた見守っていますよ。セイレン様」
ラルフェットは違和感が残るような一言を残しながら去った
…
そして、次の日、またソフィと会うことになった。
僕は昨日のことを一晩中考えながらいつもの場所で考えるようになった。
人の思いを信じる、そして善義に関わらず、その人を信じることというのはどういうことなのだろうか?
まだ僕には分からない…
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新・スーパー・デバック転生~VRMMOのバクを使って異世界転生という名声を成し遂げる(仮) 風野レノア @kazenorenoa
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