第4話 才能と本能
今日はこの心地いい風を感じながら今いる森を彷徨っていた。
…
僕はただソフィという魔法使いが来るのを待っていた。今日で一週間ぐらい経つが彼女はまだ現れない。それでも今日に限ってきっと来ると信じていた。
自分が会いたいからという理由もあるが、それだけではなく、彼女は落ち着く場所がここだったからというのもある。ああいう人ほど自分の時間を大事にしたいんじゃないかと勝手ながら思っている。
楽観的な考えで幻想を抱いているのは承知しているが、僕には彼女が簡単に約束を破ることはないと考えることにした。その方が人の本性を知りえる良い機会となると思う。
実際のところ、いつ魔法を教えに来るとは言っていたなかったし、予定をしっかりと立てる人ではないのだろう。ただ僕をからかっているだけかもしれないが、きっと彼女にも事情があるはずだ。
しかし、あの時はソフィにお世話になった。自分が魔法を習得しようと無理しているあまりに、人を危険に晒した可能性もあったかもしれない。
でも、あの時に出てきた記憶の中のゲームというもの。果たしてあんな楽しそうなこの世界にもあるのだろうか?帰ってきたらゼアドールさんにでも聞いてみよう。
僕がソフィ待っている間、今日は寄り道をすることにした。
最初に目にしたのは森を抜けた先で収穫している人たちだった。果物や農作物を大事にしながら取っていて、農民同士が力を合わせている様子が見えた。僕はその景色を見て、とても新鮮だった。涼しい風と共に、この世界の一部を除き込んでいるようだ。農場の周りを歩いていると、ほどかな草の音だったり、植えている音、そして野菜の根っこを引っ張る音などもあって良い気分になれる。
…
この道を少しだけ過ぎると、また森の中に戻っていたが、少しだけ違和感があった。
周りを見ると、兵などが待機していて、誰か重要な人物を守っているかのようだ。
気になって様子を見ると今度は木の剣の音が聞こえてくる。誰か剣の修行をしているようだ。
「おい、そこのぼうず。ここで何をしている?」
「?」
僕が気が取られているうちに2人の兵が僕に声をかけてきた。
「ここは子どもがいるべき場所じゃないぞ」
「うん?ちょっと待てよ」
人の兵は僕を見て、見覚えがあるかのように見ている。
「もしや、テルト伯爵のご令息様では…?」
「これは失礼しました!」
「あの…」
一人の兵が僕に詫びの礼をする。
僕にこんな対応をするとはやはり父は大物ということらしい。でも流石にこうも大人が子どもに向かってお辞儀をするのにも慣れないな。
「名は確かセイレン様でしたね。一体ここで何をしているのですか?」
「ああ、たまたま通りかかっただけですよ。お気になさらず」
「いえ、そうは言われましても、伯爵のご令息であれば何なりと申して下さい」
何という待遇だ…僕が父の血縁であるだけでこうも態度が変わるとは思ってもみなかった。でも中の様子が気になるな。
「そこまで言うのでしたら…中で何をやっているですか?」
「は、只今、ラナド王子は剣の修行をしているのであります」
「ラナド王子?」
聞いたことのない名だ。でもこの国で何人の王子がいるのかすら把握はしていないが、今知っているのはセルウィン王子だけだ。ということは彼の兄弟なのか?
「ああ、まだセイレン様とはご対面なされてないですよね。彼はセイレン様と同い年なのですよ」
そういえば、僕と同い年の王子が誕生したという話だったな。あのプロスターティス神殿にいたのも彼ということなのだろう。
「そうなんですね…」
「はい、よかったら、敷地内にご案内いたしますよ」
いざ入って見ると、隠れ家のような作りになっていて、普通なら人が入ってはいないと思うような作りだった。多分もう一つの城が森の中で、城が襲撃をされた時になど、この場所を使うと言ったことだろうか?そうではなくても、確かにここならもしもの場合に備えて隠れることが出来そうだ。
そして、剣の修行を見てみると、ラナド王子と剣の指導をする人物がそこにいた。
彼はとても輝かしい目と態度をしていた。まさに王子と呼ばれるような見た目だ。
彼はこの年にして剣をやっていることも少し意外だ。というより、僕の家ではそんなことを習うというような感じがなかったので、僕の家が少しずれているのかもしれない。
「良い調子です。でも前へ前へとだけ出たら危ないですよ」
そう言っていたのはある優しそうな指導者だった。彼は叱るような素振りを見せず、王子を励ますようにしていた。まあ、多分、そうした方が王の逆鱗に触れなくて済むのかもしれないという理由もあるのかもしれないが。
「なんで?」
「そんなに前に出ますと王子がやられちゃいます」
「でも僕は逃げるのは嫌いだ!」
ラナド王子は純粋で正直者のように見えた。
「いえ、逃げているのではありません。ただ相手に油断をさせるためです」
その指導者は王子を上手く納得させるように語った。
「ゆだん?」
「そうです。前に出すぎますと、相手にやっつけられちゃうんですよ。だから色んな動きを使って相手を困らせましょう」
「でも困らせたら、だめじゃないの?父が人を困らせてはだめだって」
「ああ、剣技では別なのですよ。相手を困らせないと、自分が困りますから。負けるのは嫌でしょう?」
「もちろんだ!僕はこの国の王子なのだから。負ける王子なんてカッコ悪い!」
「なら、私の言ったことをしっかりとこなせますか?」
「うん、分かった!」
「はい、それでこそ王子様です。じゃそれを踏まえた上で次の修行に向けて頑張るように」
「うん!ありがとうアーネスト!」
その人は子どもの扱いにも慣れているように見えた。王子を理解し、そして彼が納得するような言葉喋りかける。きっと指導者にふさわしいのだろう。
そして彼は出口に向かって出て行こうとしたが、こちらの様子に気づき、彼は近づいた。
「これは、王子様のお客さんでしょうか?」
「まあ、はい。ちょっと剣の様子が聞こえたので」
その指導者は僕の対応を聞いて、少し驚く
「なるほど。剣を見るのも初めてですか?」
「いえ、でも学んだことはありません」
その指導者は状況を察するかのように少し悲しい顔していた。
「それは大変でしたね。それでも剣には興味があるのですか?」
「どうでしょう…でもラルフェット様の剣技を見るのはどこか憧れがあります」
「ほう…ラルフェットの剣に…なるほど。ってもしやすると、あなたはテルト伯爵のご令息?」
「はい、そうですが」
「ああ!そうでしたか。あなたの噂を耳にしましたよ!私はアーネスト・フェルスタインと申します。ぜひテルト伯爵によろしくとお伝えください」
彼は僕に向かって一礼をする。
「あ、はい」
すると、アーネストは僕の耳に囁いた
「それと、王子のこともよろしくお願いします。彼もきっと友達が出来ると嬉しいですよ」
彼はこの隠れ家を去っていった。
彼が言う僕の噂がどんなものか気になっていたが、それよりも王子がこんな年で修行をしているのも意外だ。僕の家ではそんなことを話にすら出なかったというのに。多分、これが普通なのかもしれない。
「ラナド坊ちゃま、お客です。
ではセイレン殿、出る時はどうぞおしゃってください」
すると兵はまた仕事に戻った。
ラナド王子は僕の前に走ってきた。かなり練習をしていたというのに、かなり体力があるな。
「おお…」
彼は僕をじっと見ていた。
「君がセイレンていうのか。よろしくなセイレン」
ラナド王子は僕に握手をした。
「どうも、ラナド王子」
「王子はいらない。ラナドと呼ぶんだ」
「分かった。ラナド」
ラナドはなぜが僕に向かって笑った。
「お前、なんか面白いな?」
「僕は何もしていないけど…」
「なんか僕が見てきた人となんか面白い」
「そう…かな…」
まあ、多分これが普通なのだろうな。
「あのさ、一緒に遊ぼうぜ!」
「い、良いよ」
なんか急な展開になってきたけど良いか…
ラナドが一体何を考えているのか全然検討が付かない。
彼が出してきたのはあるボードゲームだった。
「俺このゲームが好きなんだ。でもアーネストしか相手がいなくて困っていたんだ」
アーネストさんが言っていたのはこういうことか。でもラナドにはセルウィン王子がいるんじゃないのか
「兄はやってくれないの?」
「兄さんは、やってくれない。いつも仕事があるって。
ていうか、お前、兄さんに似ているな」
「うん?」
僕があのセルウィン王子に似ている?どこを見てそんな考えをしたのだろうか。やはり分からない。
「なんか顔が似ている。こんな顔」
ラナドは落ち着いているような顔を僕に見せて馬鹿にしていた。
「ああ、そういうこと」
「そういうこと。それよりやろうぜ!ルール分かるか?」
「いや、僕も遊び相手がいなくて…」
「そうなのか、一緒だな」
でもこういうのは新鮮で良いかもしれない。今まで同い年の人と話したことがなかったから、ラナド王子とゲームをしてみるのも良いかもしれない。
こんなことをしていたのいつだっけ______
あの子の記憶が浮かびあがる。それは彼の友達らしき人遊んでいる様子だった。
「おい、浩介!こっちに来い!」
「なんだよ!」
二人は色んな所に行ってはしゃいでいる
「ほら見ろ!これ変だろ?」
「変かな?」
彼が指さしていたのは鳥だった。
「変だよ。だってこの色の見たことない。もっと探しに行こうぜ!」
そう二人は仲良い記憶があった。
そして、ある時はボードゲームをやって、遊んだ。
「また負けたよ。ずるい浩介」
「ずるくない」
「ずるいってば」
そして二人は大笑いしていた。
些細出来事だが、とても良い思い出だった。_______
その記憶が流れる後にラナドがルールの説明をして、
しばらくゲームやっていた。
「うわー!本当に初めてか?セイレン!」
「そうだけど…」
「まじか…お前すげぇな!」
「いや、そんなことないけど」
「いや、すげぇって、王子が言うんだぞ」
「はは…」
たまたま勝ったけど、初めてにしては強いと思っているらしい。
「やっぱりお前、面白いな!」
「あ、ありがとう」
しばらくすると、執事の人が来て、ラナド王子を迎える
「お坊ちゃま、失礼ですが、また城に出迎えるなければと王からの命令です」
「えー!でもまだ遊びたい」
「ではまた今度遊べるようにお手配いたしますので」
「うー。分かった。じゃあな!セイレン一緒に遊んで楽しかった!また来いよ!」
「うん。また来るよ」
そして、僕は兵に連れていかれて出て行った。
ラナド王子はちょっと変わった人だけど、確かに王子としてはそこまで違和感がないように感じる。
…
僕は隠れ家の所から抜けて、また大樹の場所にもどった。
そして、ソフィがいるのかをしばらく確認をすると、彼女は大きな荷物を抱えながらこちらに向かっていた。底を知れぬ意外な一面を見ることができて、何故か得をした気分だ。
「はは…ごめんなちゃい♪」
…
「待たせたね、セイレン君。いい子にしてた?」
ソフィがそういうと何気なく僕の頭をなでる。彼女の綺麗な瞳が目の前にあって、恥ずかしさのあまり目をそらした。すると、今度はからかうように少し笑い話を続けた。
彼女は気を取り直して喋りかける
「んで、魔法の話だったね。何から始めようかな…」
「あの、それよりあの荷物は一体?」
ソフィが持ってきた荷物が予想のあまりに多かったので、並みの魔法使いの荷物にしてはあり得ないと思った。
「ああ、ちょっとね。寄り道をしちゃって、だからこれを持っていくついてでにここに持ってきた」
「もしかして旅のものだったりしますか?」
「まあ、そんなとこだね。一応やることがたくさんあるし」
「じゃあその荷物は魔法のことには関係ないと…」
「もちろん、関係あるものも持ってきたよ。任せて」
ソフィは荷物を大雑把に一つ一つ取り出しだ。
「これ、じゃなくて…これでもなくて…あ、これだ!」
そして取り出したのはある本だった。
「じゃ~ん、魔術教本!どう?」
彼女は自信満々のどや顔で僕を見ていた。
「おお…どうって言われましても。面白そうな本ですね」
あの荷物の中からこれを持ち出すとは思えなったが、確かに彼女が持っている本は確かにどこか特別な感じがする。そしてその本には何が入っているのかにも気になるところではある。
「ちちち、普通の本だと思ったら大間違い!これは入手困難の品だよ」
「…」
「超特別な魔法使いが使えるものよ。魔法の数はなんと100種類以上!」
「…」
「本当よ?」
「いや、別に疑ってないですけど。もっと、なんかこう…派手なものを期待してました」
「派手な大きさじゃない…心にあるもんだから」
人を無駄に説得するために使うような言葉を使っているが、でも真剣に考えているのはとりあえず分かったし、実際のところ楽しみではある。
「でもそう言われてみると、確かに他の本とは特徴が違いますね」
「でしょ?私がセイレン君に並みの本を見せるわけないって。しっかし、君の反応あまりにも薄くない?」
そう彼女は言って困っている表情を僕にした。
やはり普通の人ならもうちょっと盛り上がったり、感情豊かなのかもしれないな。
そういう意味で言うと僕って変わっているかもな。
「すいません。別にそのような態度はとるつもりはないのですが…」
「ああ、そういうのはいいから。とりあえず先週の続きね」
「はい」
…
するとソフィ先生は話を進めた。
「あ、そうだ。家に帰った時やっぱり疲れた?」
「そうですね。先生の言う通りに」
「じゃあそこから説明しよう。魔力というのは、人によって制限があんの。そしての制限を超えると意識が吹っ飛ぶこともある。例えば、酔っ払っているおじさんみたいに」
「酔っ払いのおじさんって?」
「い、今のは無し。取り合えず魔力を使うと全力疾走をしたように疲れるから注意してね」
「なるほど…」
ということは魔力は体力ゲージみたいなものと考えて良いということだろう。
「でもたくさん使う代わりに、魔力の使える量もそのうち増えるから温存するだけで良いとは限らない」
「というのは使えば使うほど魔力が増えるということですか?」
「半分正解かな。最初のうちはそうだけど、使う魔法の派生によって増えたりもする。自分の体が成長するような感じと言ってもいいんじゃないかな」
「体と同じ…か。では他の派生の魔法にはどんなものがあるんですか?」
「うーん、まずは基本的な種類だけど、基本的に4つある。単純に攻撃魔法と、防御魔法、治癒魔法と、能力向上の魔法だね。その4つの種類の魔法から派生があって…例えば、炎を出す魔法にはそれぞれ違う派生があったりすんの」
「例えばどんなのがあるんですか?」
「炎の例からすると、攻撃魔法の中には放出系の魔法はもちろん、付与系の魔法があったりとか、操作系の魔法もあったりする。それを平行しながら使うと魔力が増えたりするわけ」
「じゃあ一つの魔法ばかり集中するのはあまり効率的良くないのですか?」
「そういうことでもないんだよね。放出系を専門にする魔術師もいるし、付与系でも活躍している人はいるよ。でも、いくつかの攻撃手段を持っておいた方が、のちに魔力量が増えるって話」
要するに、魔法を特化すればするほど、その魔法を操れる能力が向上するが、ただ魔力を上げることに関しては十分ではないということか。
「じゃあ、一通りを学んでから、絞るという感じですか?」
「まあ、慣れたあとにはね。一番無難なのは放出系になるかな。でもセイレン君はもう普通に成功させているし、他のにする?」
「いえ、どうせならしっかりと学んでおきたいです」
「へぇ。ならそうしょうか」
ソフィ先生は興味深々な表情をしていた。
そしてその後に気になるようなことがあるかのように少し考えて僕に喋りかけた。
「今更だけど、セイレン君は何を思って、魔法を打ったのかな?」
「そうですね…正直言って僕にも分からないですが、先生が魔法の時にやる癖を見て考えてました」
「え、それだけ?」
「まあ、それと詠唱の時に何を考えているのか想像しながらやってました」
「そうなんだ、やるじゃん。じゃあ今度は想像するだけじゃなくて、明確に考えてみよう。今なにを放ち、どこに飛ばし、どんな思いで出すのかを。そうすれば今の数倍よりも跳ね上がるから」
「はい、先生!」
「うん、よろし。前回のようなことにならないように」
そうだな、散々注意を貰ったにも関わらず僕は自分の手を止めることが出来なかった。気を付けよう…
「あ…注意します」
「ははは、冗談だって!君って真面目だな」
そしてソフィ先生は魔術教本を見て僕が練習する魔法を探していた。
「じゃあ、君はこの魔法がいいな。風の魔法」
「風の魔法?どんなものですか」
「単純に風を集めて放つ魔法だよ。じゃあお手本見せてあげる」
そうすると、ソフィは魔法を唱えた
「天空から目覚めし混沌よ、この大地が更なる高みを、恵みを受けることにあらず。
やがてこの風が闇の歪みを晴らすことを願い、調和を与えん。この身に集結する魂の力を授かりたまえ。ホーリーゲール」
すると、彼女の足元から風が集まり、そしてその魔法は杖を通って、小さな渦巻きを放っていた。
僕は感心するあまりに握手をしていた。やはり魔法というのは素晴らしい。
「こんな感じかな。んじゃ、やってみよう」
「はい」
今度は先生が言う通り、集中するだけでなく、この風現れ方、そしてどこから打ち出して、どこに向かって打つかを考えてみるか
すると、僕の周りから風が集まって、僕のど真ん中に来ていた。
そして、僕はゆっくりと前にその風をそっと前に押すように放った
「あ、できた!」
「やっぱり思った通りだ。すごいじゃん」
ソフィ先生は僕に握手をしてくれた。
「今回はどう感じた?」
「そうですね…確かに全く違うような感覚ですね。まるで自然と一体しているみたいです」
「いいね。実はその魔法を教えたのには訳があるんだ」
「どんな理由ですか?」
「考えてみて?」
僕が風の魔法を学ぶ理由、それは一体何だろう?もしかして人によっては属性が合う人と合わない人がいるとかだろうか?
「それって僕が風の特性を持っているとかなんですか?」
「ブー、違う。確かに、ある地方によって向き不向きはあるけど。君の場合はそれよりもあることが合っている。分かるかな」
特性ではないんだとしたら、一体何んだろう。能力があるからこれにしているというのか?それとも僕にしか使えない何かがあるのか
「自分の魔力に関係することですか?」
「ブー、でも惜しい。答えは戦い方だよ」
「え?」
僕は今まで剣を持ったことがなければ、魔法を別に前から知っているわけではない。なのに、先生はそれをもう把握しているというのか?
「どういうことですか?僕は戦ったことすらありませんよ」
「ふふーん、それはね。見れば分かる。君はきっと繊細な動きが得意だから風の魔法が有効なんだ。君が初めて魔法を放った時にそうびびっときたんだ」
「繊細?僕ってそんな感じ出てました?」
「少なくとも、力任せな感じでもなくて、サポートに専念するような感じでもない。君は一連の動き、動作を考えている。それは細部をちゃんと見ないとできないと思うんだ。だからこそ技術的な動作が必要な風魔法が相応しい」
なるほど、風魔法は操るのは難しいからこの魔法を選んだというわけか。これが自分だけだったらきっと何も学べずに苦しんだことだろう。やはりこの人は凄いな。
「あとそれに、風って勇気に溢れている感じがするし」
「うん?」
「ふ、まあいずれ分かるよ。じゃあもっと練習してみようか」
「はい、お願いします!」
その後、僕は風の魔法ひたすら練習をして、魔法の授業を終えた。
…
そして、またあの大樹の場所にまた集まった。
「セイレン君。君は何でそんなに魔法を学びたいの?」
僕が神殿のことを話したら、きっと不審がるに違いない。ここはあえて抽象的に言ってみよう。
「僕は…人を守れるようになりたいんです。誰もが苦しまなくて済むように…」
ソフィは僕の答えに少し驚きながら、その後で納得した。
「そうか…誰も苦しまなくて済む、か。君って本当に不思議だ。でもそれがいい」
確かに、あの王子と比べれば、こんなようなことは言わないだろうな。そしてソフィの言ったことに対して反応しづらい…
「君はそのままでないと、いざって時に立ち向えるよ、きっと…でも焦ってもだめだよ。まだまだこの先長いし」
「はい。自分にできることからやってみせます」
「そう、その意気だよ。では、そろそろ今日はお開きにしょうか?」
そしてソフィはここから出ていこうとしたが、僕は親にもこの人を紹介したいと思った。
「あの」
「?」
「もし良ければ、僕の家に来ませんか?」
「あー、どうしようかなー。気持ちは嬉しいけどまた今度にするね」
「そうですか…」
「そう落ち込まない!また会えるから」
「そうですね。分かりました」
ソフィ先生を家に歓迎してやりたかったことだけど、色々と事情があるようだ。
「でもね、セイレン君。女の人を簡単に家に誘うのはやめるんだよ」
「え、なぜですか?」
「ははは、他のことは理解が早いのにそこは疎いのね。まあそれも後で分かるよ」
「そうですか…」
「じゃあね…いい子にするんだよ」
そして、ソフィはまた大きな荷物を背負い込んで、森を抜けた。
…
僕は家に戻ると、あることを考えた。
果たして僕は本当に人を守るために強くなりたいのか…それとも他に別の理由があるのか。
そしてあの子浩介はその原因の一つなのだろうか。
分からない…
僕にはラナド王子のキラキラとしているような態度もなければ、勇気もない。ただ、何からかに逃げているだけだと思っている。でも、僕にはまだその答えが出てこない…
ソフィ先生は焦るなと僕には言うけど、何故が胸騒ぎがするのはなぜなのだろう…
そういわれている以上、従うしかないようだ。
後は待つのみってことか…
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