第3話 リメイク

岩坂と再会した後、俺達は互いに状況を整理するため近くのカフェに来ていた。


「落ち着いたか?」


「………少しだけですけど。」


岩坂は俺の向かい側の席で赤く目を腫らしながら拗ねたように言った。


「はあ、入る時大変だったんだぞ。俺の隣にいるお前が泣きながら入店したから何事かといろんな人に見られた。」


「…………すみません。」


岩坂は本当に申し訳なさそうな顔をして俯いた。

なんか、コイツがこうだとすごく調子が狂うな。いつものあのウザい感じがないからどうにも違和感が拭えない。俺にはコイツが本当に泣いてるのかすら分からな——


『もういなくならないでくださいね。いなくなったら許しませんから。』


思わず疑心暗鬼になってしまった所にさっきの岩坂の言葉がよぎる。

俺にはどうしてもあの時の言葉、表情全てが本当のものに思えた。


「お前ももしかして俺の事を探してくれてたのか?」


「もちろんですよ!」


「ちょっ………お前、周りを考えろ!」


「あ、すみません。」


俺が聞いた途端に岩坂は大きな声を出して席から飛び上がった。もちろん他の客全員から奇異の眼で見られ、店員からは迷惑だと思われたのか凄い睨まれた。


「私も、浅輪先輩も日岡先輩もずっと探してたんですよ。まあ皆半年ぐらい経ったらもう諦めるしかなかったんですけど。」


「お前ら三人が俺の事を…?」


いつも俺をあんなにボロクソのに言っていた三人が半年も俺の事を探してくれていたのか。俺的には全く時間が経っている意識もないが、一年という期間も俺がいなくなった事で彼女達も何か変わってしまったのかもしれない。俺は彼女達の認識を改めなければいけないな。


「じゃあ、ちゃんと全員にお礼でも言わなきゃいけないな。お礼を言ったところで許してくれるとは到底思えないけどな。」


「あー………まあ、そうですねー。」


何故か岩坂がどうにも煮え切らないような態度をとっている。俺何か変な事言ったか?ただ会って話でもするべきだよなと言っただけだが……


「実は………日岡先輩なんですが、結論から言うと先輩がいなくなって半年経った後、一人暮らしをやめて実家の近くにある別の学校に転校してしまって……」


「え?」


「あと浅輪先輩も………日岡先輩と同じくらいのタイミングで学校を不登校になってしまって、噂では遊び回ってるみたいで……」


「は?」


「多分二人とも現実が見れなくなってしまったんじゃないかって……」


「………」


日岡が転校して紗希が遊び回ってる?いや、どういう事?俺が一年間いない間に何が起こってんだよ………


「……先輩、私からお願いです。あの二人に会ってまた前みたいになってくれって言ってくれませんか?」


岩坂は覚悟した様子で俺に言ってきた。彼女の顔はいつになく真剣な顔をしていて、少し気圧されそうなぐらいだ。


「俺が?」


「はい。先輩にしかできない事です。私自身、自分勝手な事を言っている自覚はあります。それでも私はあの四人で一緒に話したいんです!」


岩坂は俺に対して頭を下げながら頼み込んできた。ふざけた様子も茶化すように言うこともなくただ真剣な口調だった。


「…………正直、俺はお前ら三人に良い思い出はあまりない。」


俺が言うと、岩坂は一瞬目を見開いて、納得したように肩を落としていつもよりも低い声で呟き始めた。


「そう、ですよね。すみません、勝手な事を——」


「でもな、俺はお前ら三人には一緒にいて欲しいと思ってる。なんだかんだでいつも俺の側にいてくれたし、仲の良いお前らを見てるとこっちも嬉しいんだ。昔から一緒にいる幼馴染。同じクラスのよく話しかけてくる女子。そして、いつも俺につきまっとってあれこれ言ってくるお前。自分の知り合い同士が楽しそうに話してると、俺もその様子を見てて嬉しいからな。」


「……ふふ。なんですか、それ。」


岩坂は俺の発言に対して少し楽しそうに笑っていた。その笑みはいつもの意地の悪い笑みではなく、ただ純粋な子供のように無邪気な笑みだった。


「じゃあ、先輩。これからもよろしくお願いします。」


「ああ、あとは俺もせっかく戻ってきたから学校行かなきゃな。」


「え?」

「え?」


何故か岩坂が不思議そうにしていた。ただ学校に行かなきゃなって言っただけなんだが……まだ問題があったのか?


「先輩、自分が一年振りに戻ってきたのを覚えてますか?」

「え、あ、ああもちろん!覚えてるよ。」


俺の感覚は普通に死んでから一日も経ってないような感覚だったからそれ忘れかけてたが、流石に先程の日岡と紗希の話を聞いた後だったので覚えている。

………ん?一年経ったからなんなんだ?

俺は岩坂の言った意味が分からなくてずっと考えていたが、岩坂が言いにくそうにしどろもどろしながら言った。


「あの………先輩は学校を一年も休んでいるので…よくて留年だと思いますよ…。」


あ、あ。あああああああ!そうじゃん!俺、実質一年も学校休んでるじゃん!クソ、俺の欠席日数0の栄光がなくなって…。て、今なんて言った?


「留………年?」


「えっと、改めてこれからよろしくお願いします。………同学年として。」


岩坂は苦笑したまま俺を気遣ったように顔を覗き込んでいた。


岩坂、お前の気遣いなんて受けたくなかったよ。

俺は留年という事実に耐えきれないまま一人天を仰ぐのだった。





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リメイクして出してみました。

前と今でどっちが良いかをよかったら教えてください。

試行錯誤して作りたいです。

場合によっては前のに戻るかもしれません。

前の三話は私の近況ノートにあります

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転生したら死んだ一年後だった。いつもバカにしてきた女子が俺が生きてると知ったらヤンデレ化した 匿名(tokuna) @aka186

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