向き合う
moon
第1話
頭が痛い。
目を擦ると滲んだアイラインが指について黒くなった。
そうだ、昨日はやけ酒でふらふらになって家に帰って、そのまま寝てしまったんだ。
左目から何かがこぼれる。
何も考えてないのに。
最近そうゆうことが増えた。
飲みに行ったのは12年の付き合いの親友。
ビールとハイボールで乾杯をした。
お店で飲む時はいつも、ハイボールで乾杯していたのに、親友はビールを頼んでいた。
少し悲しかった。
枝豆をつまみながらお互いの、最近のことをだらだらと話した。
親友が煙草に火をつけたので私もラッキーストライクの箱を取り出した。
アメスピを吸っていたのは過去の事で、親友がおすすめしてくれたから吸っていた。ラキストに変わった私の煙草をみて親友は不機嫌になった。相変わらずそうゆうところが、かわいい。
「あんたって昔から本当に欲しいものは手に入れないよね」
何かを察したのか、そう言われた。
小学生の時、髪飾りを取り合ったことを思い出した。みんなピンクの髪飾りが欲しかった。
私も、それが欲しかった。でも、私が手に入れてしまったらこの髪飾りは可愛くなくなってしまうんじゃないか、私が手に入れることで価値がなくなってしまうんじゃないかと思った。
怖くて手に入れられなかった。
全部同じだ。
怖い。私の手に入ることが。
「いい加減自分の気持ちには正直になりなよ」
追い討ちをかけるように親友が言う。
その言葉、最近誰かからも言われたな。
私はまた言葉が出ず、なにも言い返せない。
自分の気持ちってなんだよ。
心の中で自分に問う。
自分のことがわからない。
喜び、嫌悪、怒り、悲しみ、怖れ、全部自分の中にあるはずなのに、ときとぎ、無性に他人事のように感じることがある。
私は自分の苦しみを"そんなこと"で片付けられてしまう。
親友と別れた後、薄暗い道路を1人で歩く。
地面がぐねぐねしている、飲みすぎたのだ。
こんな虚しい日でも月は綺麗で、煙草は美味い。
心に穴が空いた感覚。
気づいた時には私は彼に執着しすぎてしまっていたようだ。
彼の小説にでてくる"君"は違う子に変わってしまった。彼の煙草から流れる煙は掴めなかった。
「人間って、人のために泣くことはできないんだって。誰かが死んで、それで悲しくなって泣いても、それは結局、その人がいなくなっちゃった自分のことが可哀想で泣いてるんだって。
自分のためにしか涙は出ないんだって。」
どこかの本に書いてあった。
じゃあ私の感情の本物はどこにあるんだろう。
私はまた彷徨う。
誰も教えてくれない。
私はもう17歳なのに。
向き合う moon @andy0221
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。向き合うの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ありがとう/moon
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
見えない水平線/moon
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
冷めない余韻/moon
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
アドスコア日記2024最新/喰寝丸太
★15 エッセイ・ノンフィクション 連載中 184話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます