となりのまことくん【童話】

となりのまことくん

ぼくのなまえはまこと

きみのとなりにすんでる

しょうがっこうにいってるよ

でも

ほんとうはいきたくないんだ

しょうがっこう

なんでって

ものがなくなったり

とじこめられたり

へんなことをさせられるんだ

だけどね？

ひとりぽっちよりはましだよ

だれにもあいてにされないと

とってもさみしいからね

だけどね？

はなしかけたら

だめなんだ

はなしかけると

にらまれる

それだけならいいけど

いたいのはいやだろう？

なぐられたら

とってもいたいんだよ

だけどね？

わるいのはぼくなんだ

うちはびんぼうだから

おふろもはいれないし

はもみがいてないから

とてもくさいらしい

とにかく

きらわれたくないから

はなしかけないようにしてる

せんせい？

せんせいはにこにこわらって

たいへんだねって

いってくれる

だけどちかづくと

にこにこじゃなくなって

こわいかおになる

だからやっぱり

はなしかけないようにしてる

いえにかえると

ひとりぽっち

うちはおかあさんとぼくの

ふたりぐらしなんだけど

おかあさんはしごとで

ひるはいえにいない

よるになると

おかあさんといっしょに

しらないおじさんが

あそびにくる

するとおかあさんは

そとであそんでこいって

ぼくをそとにだすんだ

ぼくはちかくのこうえんで

いつもひとりぽっち

でもだいじょうぶ

だからしんぱいしないで？

そとにひとりでいても

いつものことだから

からだにけががあったって

いつものことだから

よなかにおおきなこえがきこえても

なにかをたたくようなおとがきこえても

なにがあったの？

なんてきかないでほしい

ぼくがいけないんだ

ものおぼえがわるくて

すぐにくちごたえするから

ぼくがいけないんだ

じっとがまんして

じっとおとなしくて

じっとだまっていたら

ぜんぶうまくいくんだ

ほんとだよ？

ぼくが

いいこにしてたら

おかあさんがあたまを

たまになでてくれるんだ

ぼく

それがうれしくって

あしたもがんばれるんだ

ほんとだよ？

きみにあえて

よかった

はなしかけてくれて

うれしかった

だけどもう

はなしかけないでほしい

おかあさんに

きらわれたくないから

おかあさんが

すきだから

ごめんね？

そして

ありがとう

おねえさん

もう

はなしかけないでって

いったよね？

だいじょうぶだからって

いったよね？

ないてなんかないよ

いたくなんてないよ

ほら

ちゃんとわらえるでしょ？

このなみだは

きもちのなみだだよ

いたいのは

きもちなんだ

いたくて

かなしくて

ぐちゃぐちゃだ

おかあさんに

たたかれて

きらいっていわれたんだ

もう

いきていたくない

しにたいよ

ぼくなんか

いないほうがいいんだ

ぼくなんか

しんだほうがいいんだ

そうしたら

がっこうのみんなも

がっこうのせんせいも

いえにくるおとこのひとも

なにより

おかあさんが

きっとよろこんでくれる

みんなしあわせになれる

そうおもうから

ぼくなんか

しんだほうがいいんだ

だから

おねえさん？

やさしくしないで

あたまをなでないで

だきしめないで

ぼくは

くさいから

ふけつだから

おねえさんまで

きたなくなるから

おねえさんまで

きらわれるから

だから

おねえさんまで

なかないで？

ぼくまで

かなしくなるから

ぼくまで

なきたくなるから

ずっと

がまんしてきたのに

ずっと

あきらめてたのに

いきること

わらうこと

のぞむこと

あきらめてたのに

おねえさん？

ぼくは

いきていてもいいの？

わらってもいいの？

なにかをのぞんでも

いいのかな？

もし

もしゆるされるなら

ぼくはいきたい

しにたくなんかない

ともだちもほしい

いっしょにべんきょうしたい

いっしょにあそびたい

せんせいにもほめられたい

なによりも

おかあさんと

いっしょにすごして

いっしょにわらって

わらって

わらって

そんな

しあわせを

こんなぼくでも

のぞんでいいのかな？

ねえ

ないてないで

おしえてよ

おねえさん？