専業作家を目指す学生へ〜作家になれなかった人の戯言〜

雨宮 徹

専業作家を目指す学生へ〜作家になれなかった人の戯言〜

 学生で専業作家を目指している人、特に社会人にならずに専業作家を目指す方の夢をぶち壊すようですが、一度は社会人を経験しましょう。以下、すべて作家になれなかった人の戯言なので、聞き流していただいて大丈夫です。



 あなた自身の人生の方向性・選択をするのはあなた自身です。私ではないです。でも、お節介を承知で書きます。「この人、何偉そうに言ってるんだ?」と思った方は、ブラウザバックしてください。



 さて、本題です。そもそも、専業作家とは「小説を書くだけで生計を立てられる人」です。当たり前のことですが、前提条件が違うとまずいので、書きました。



 では、なぜ、いきなり専業作家になる、もしくは目指すべきではないかについて触れましょう。



 東野圭吾さんは皆さんご存知ですね。ガリレオシリーズで有名です。彼のトリックは理系の考えるトリックです。文系では思いつかないでしょう。



 では、なぜ書けたのか。それは東野圭吾さんが技術者として働いていたからです。社会人として働きながら、「これは、ネタとして使えそうだ」という考えでした。



 私は東野圭吾さん本人ではありませんが、『ミステリーの書き方』という本の中で、彼自身がそう書いています。先輩から「この機械はこういう理由で危ない」と言われたら、「裏を返せば、こうすれば殺人のトリックに使えるな」と働きながらも日々、ネタを探していたのです。



 それは東野圭吾だけじゃないのか? という方にもう一人例を挙げるなら、赤川次郎さんです。彼もサラリーマンとして働く傍ら、小説を書き、作家になりました。そして、作家になっても、数年はサラリーマンとして働いていました。兼業だったのです。大御所でさえ、いきなり専業作家を目指さない、あるいは避けるのです。



 では、なぜ、いきなり専業作家にならないのか。ここからが肝心です。それは一作書けても、その後ヒット作を書けるかは別だからです。



 例えば、あなたの作品が素晴らしいもので100点満点だとしましょう。では、その後、及第点である60点〜70点の作品が書けますか? それも、一年に1冊くらいのスピードで。下手したら1冊でも生計を立てられないかもしれません。そもそも、どれくらいヒットするかで、印税が変わります。不確定要素が多いです。



 これは持論ですが、学生の世界しか知らないのでは、いつかネタに困ると思います。世間は広いです。もしかしたら、「井の中の蛙」かもしれません。ご自身が「これは名作を書けた!」と思っても、他人からどう評価されるかは別問題です。これはネットで調べればいくらでも情報が出てきますが、編集者の方は「しばらく兼業してください」と言うそうです。編集者でさえ、作家のためを思って、そう言うのです。



 「いや、私は社会人を経験する必要はないです」という方もいるかもしれません。例外的にはあり得る話です。もし「私の作品はいつか日の目を見る。だから、就職しない」はおすすめしません。「いつか」っていつですか? 半年後? 3年後? それとも30年後? 誰にも予想はできません。それに、もしかしたら、その「いつか」はやって来ないかもしれません。



 さらに書くならば、あなたは作品を公募に出して最終選考まで残ったことは何回ありますか(私はないです) ? そして、なぜ受賞できなかったか、考えたことはありますか? 次の作品に活かせたことは、ありますか? 「私の作品の素晴らしさが分からないのは、目が節穴だからだ」では、いつまで経っても、デビューすらできないのでは? というのが持論です。最終参考で落ちたのなら、受賞作の方がはるかに出来が良かったのでしょう。もし、受賞に至らなくても、出来が良ければ、どこかの出版社から声がかかるはずです。



 そして、もし「社会人になると、時間の制約で書けないんだ」という方は、今どれくらいの作品数を書けますか? 学生、社会人関わらず、時間は頑張れば捻出できます。「時間がない」を言い訳にするのはやめましょう。




 かなりとっ散らかりました。すべて作家になれなかったサラリーマンの一つの意見です。繰り返しになりますが、本作を読んであなた自身の人生を決めないでください。あくまで「ふーん、そういう考えもあるのね」くらいにしてください。学生の皆さんには厳しいことを書いてしまいました。参考になるかは別ですが、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。



追記

 働いた方がいい理由の追加です。世の中、お金がなければ生きていけません。社会人になり、自分のお金で生活するようになって実感しました。少なくともバイトはしましょう。衣食住に困っては、小説が書けませんから。



さらに追記

 機動戦士ガンダムシリーズに『水星の魔女』という作品があります。その作品の言葉を引用します。「逃げれば1つ、進めば2つ」です。


 これは今回の話につながるものがあります。作家の可能性を残したいから、社会人から逃げる。これも選択肢の一つです。では、進めば? つまり、社会人になれば? 作家になる可能性を残したまま、ネタを見つけたり、話にリアリティーを持たせられるようになります。どちらを選ぶかは個人で決めてください。私は責任を取れません。


 ちなみに私は自分の限界を知ったので、第三の選択肢「作家になること自体を諦める」を選びました。なので、カクヨムで自作を読んでいただき、評価されれば十分だという考え方です。以上、追記でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

専業作家を目指す学生へ〜作家になれなかった人の戯言〜 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画