羽毛
高黄森哉
羽毛
びゅう、と風が私の傍を通り抜けた。
神社からの帰り、スーパーの横の道を折れると、そこはとても細い路地。道の両側に塀がある。だからか、なんとなく息苦しい。
『彼女は、じっと標識の根元を見た。そこには標識しかない。強いて言うなら、根元に、花が首をかしいでいる』
私は無視して歩き出した。なんとなく嫌な感じがしたからだ。道草を食わず、まっすぐ家に帰ろう。
『道はまっすぐ続き、その中ごろに羽毛が散乱している。彼女は、また足を止めた。今度は真逆の理由だ』
すごい。ふわふわしてて綺麗。まるで天国みたい。天使みたい。綿あめみたい。今日はいい日かも。
『女は羽毛を辿りながら、歩みを進めた。日常にある綺麗な光景、というのに心奪われる性質らしい』
羽毛、羽毛、羽毛。どうして、こんなに羽毛があるんだろう。あっ、そうだ、どうしてこんなに。嫌っ!え、あれって、そうだよね。
『女の行く手に鳥の死骸があった。正確には死骸の痕跡があった。血と羽毛ではなく羽。ここで殺されたのだ』
そんな。誰が一体こんなことを。猫? でも、こんな風にするかしら。こんなに、バラバラに。
『その時、風が吹いて羽毛を遠くまで攫っていった。それで、彼女はある事実に気づく。この惨劇は、この前の風が吹く前に起こったのだと』
早く家に帰らないと。けれど来た道は戻れない。あの子供がいる。きっと、あれの仕業に違いない。えっ、足音。それも近づいてくる。
『彼女は振り向いた。そこには、道の終わりの標識と花があった。そして、羽毛が点在していた。物音ひとつしない。つまりは、なんの変哲もなかった』
女は悲鳴を上げた。
羽毛 高黄森哉 @kamikawa2001
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