第6話
「まま……」
またこの夢か
「まんま……」
何度見れば気が済むんだ
「ママァ……」
……うるせぇよ
何度も同じ夢を見る。夢の中で赤子がママと……パパと呼び続けていて脳裏にこびりついている。思い出したくないのに頭の中で木霊する。
「……ママァ!」
どうせ短く儚い命だ
「パッパ」
こんな腐った世界で生きるくらいなら
「ままん……」
此処で逝った方がマシだろ
足元は血の海で染まってる。向こう側は見えず黒く果てしない水平線が見えるだけ。
血の海から赤子の手が俺の足を掴む。何人もの赤子の手が、怨恨を抱え、矛先を向け、足から登ってくる。
血塗れの赤子、まるでたった今母親から産まれた様な体で俺の体にしがみつきよじ登る。水色の髪を掴んで、白衣を赤く染めらせ。
「……ァ……マ……」
「マー?」
蜘蛛の糸に縋る民達の様に、何人も何本もの手足が。白い赤子が口を開く。その口の中からは何千本もの手が見える、白く短い手が。わろご……あれだけの赤子がいるんだ、無理もないな。忌み子、異形の子、孤児院にいる子だっていたんだからな。
赤子の手が俺の顔を掴んで引っ張る。赤子とは思えない力で、頬を、口を、髪を、目を。
殺してやると言わんばかりに。
「まー!」
「パパ」
「ア……ア……!」
矛先を向ける方向が分かってるだけ賢いな。
彼奴らも苦労してるだろうが。
生きたところでこの腐った社会の波に呑まれるだけだ。此奴らが成長した所でどうなる。ノーベル賞でもとるか?誰かの為に尽くす事が出来るか?他人の感情を考え、気遣いや礼儀を持つことが出来るか?答えはNOだ。
他人の事なんて考えない、自分さえ良ければそれでいい。そして間違った大人になっていく。
それくらいなら俺が有効活用してやるよ。お前らを人間としての扱いをするつもりは無い、ただの素材だ。
好きなだけ泣き叫べばいい。好きなだけ怖がればいい。
お前らがその気なら何日でも何年でも付き合ってやるよ。
はやくそとのせかいにでたい
なにがまってるんだろう
たのしいこといっぱい
これがいきるということ、これがたのしいということ、これがかなしいということ
まま ぱぱ
いぬ、ねこ
みたい そとのせかいでたい
たのしみ たのしみ たのしみ
こわいこわいこわいこわいこわいこわい
しらないひと おとこのひと おんなのひと
ままじゃない ぱぱじゃない
いたいいたい
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
なんで
どうして
くやしい
あいつあいつあいつ
きらい
Overdose @rurosan
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