【提案】ゲームファンタジーというカテゴリが欲しいと思いませんか?

梓馬みやこ

スキル系のファンタジーが分離独立したら便利そう

 ハイファンタジーでもローファンタジーでも、ゲーム要素やスキルシステムが採用された作品が増えて久しい今日この頃。スキル系が苦手、嫌い、違和感という人も結構存在しています。

 ダンジョンや異世界転生に多いパターンで、浸透してきているとは思うのですが、こと「文庫時代の読者さん」には違和感を覚えさせて止まないのかなと感じます。


 私は、文章表現が気に入れば異世界転生も面白いと思うタイプです。

 一番最初にWEB小説で読み込んだ異世界転生のお話は小説家になろうの「用務員さんは勇者じゃありませんので」でした。

 しかしこれはタイトルに反して、現在の異世界転生とは全く違う「かつての文庫タイプの異世界転生」でした。

 表現の厚み、がっつり系のシナリオ、語彙力はかつての「文庫作家」つまり紙ベースの大賞を潜り抜けたプロを髣髴される作品です(ちなみに私はちょっと重すぎて途中で挫折しました……)。

 実際、「用務員さんは~」はKADOKAWAメディアファクトリーとフロンティアワークスがてがけるMFブックスから出版された作品となります。

 今ほど出版社が乱立していない状態での大手出版社選出と思えば、難易度がわかる人には分かると思うのですが、その後、出版打ち切りになってしまったようで、この記事を書くにあたり少し調べたところラノベ衰退と一部で論じられていたことから、需要がそのあたりで切り替わったことは容易に察することができます。

 それに代わり現在では文庫よりも、ハードルが若干低めの書籍化出版の形態が現在の主流となっています。これは「推し」の多様化を考えれば当然のことなので、良し悪しについて言及は必要ないかと思います。


 さて、がっつりが好きな読者様たちが苦手とするとても軽い読み口の現在の作品群は、ハードルを下げた点について【WEB小説の読者の間口を広げた】と解釈すると全く悪いことではありません。しかし書き手にレベルが存在するように、読み手にも確実にレベルが存在しています。今現在の問題は


 かつての文庫派に今のラノベは軽すぎ

 今のラノベユーザーにかつての文章は重すぎる


 という「同じファンタジー」であるにもかかわらず、作品もユーザーも全く棲み分けができていないことではないかと思います。もちろん汽水域に住む魚のように、どちらも行ける人もいます。

 しかしすみ分けできないということは、ジャンルも好き嫌いが必要以上に入り混じる状態には他なりません。


 イメージとしては、ユーザーさんの読書力分布はピラミッドのようになっているわけで「間口が広がる」=「国語とか嫌いな人でも読み手に加われる」ので、読書ビギナーの人がものすごく多く必然的に読みやすい


 異世界転生


 とか


 ダンジョンもの


 が必然的にランキング上位を締めてくるわけです。

 もっともハイファンタジーは悪役令嬢などほかにも人気ジャンルがあるので少しは人気も分散しています。

 問題はローファンタジーで、現在スキルものはダンジョンに偏っているのでランキングを見ると大変なことになっています。なんと10作中9作がダンジョン。

 作品というよりどれだけ読者層が偏っているのかがわかるランキングでもあります。従来の異能やあやかし好きな人にはつらい画面と言えましょう。

 ランキングが流行りもの一色(しかも全部同じジャンル)ということはつまり


 八百屋に行ったらいちごしか置いてない


 みたいな感じではないかと思います。

 八百屋って今時、あるのかな? わかるかな? スーパーって言った方がいいですか(でもそうすると更にカテゴリ大きすぎてちょっと違う感)


 ともかくスキル系が苦手な人は、他のフルーツも食べたいのに、野菜も食べたいのに、産地は違うとはいえイチゴ一択か、一択なのか。みたいなことになっていると思うんです。間違いなく。

 りんごが欲しかった人はがっかりしながら帰るほかはありません。

 現在のごった煮状態が大好きだという人には分かりづらいかもしれません。逆に異世界転生やダンジョンの話を求めていたのにランキングやトップ画面が突如「まじめなファンタジー話で埋め尽くされていた」と想像してもらえるとがっかり感が味わえると思います。


 話を戻しまして今般の件を要約すると、この流行りかつ定番するであろう要素、スキルのあるゲーム系ファンタジーを新設カテゴリにすれば万事解決するのでは? というお話です。


 タイトルのように「ゲームファンタジー」というとまた「ゲームじゃないよ、小説だし!」みたいなことをいう人|(もっともだけどどうでもいい)が出てきそうなので、そこはもう少しジャンル名を工夫したら良いのではないでしょうか。


 スキルファンタジーなら間違いないかもしれない。スキルシステムが採用されたファンタジーです。という意味で。


 そんなわけでこのお話を読んでくれている方は、ある程度、上記の問題に気づいている方だと思うので執筆者のリスク回避のためにあーだこーだはこれ以上、書きません。

 ただ、この「ずっと紙ベースで文庫読んでました重読者層」と「最近のラノベしか読んでません読書初心者」が混在する過渡期で、ラノベ業界全体でそういう改善があったらなーと私は思います。


 好きなものを探しやすく


 ってどんなサイトでもお店でも基本じゃないですか。

 読み手にとってはもちろん、書き手にとっても作品が埋もれず読みたい人に読んでもらえるチャンスが増えるので良いのかな?と。

 そんなわけで、ゲームファンタジー(仮称)を別のカテゴリにしたら良いと思うのですがどうでしょう?


 もしもっともだ。と思う方がいらっしゃいましたら、こちらの記事を拡散するなり評価していただくなりしてもらえましたら他の人の目にも止まって、少しは何かが変わるのかなと思います。

 たとえその少しが個人の意識程度だったとしても。


 創作や文章って本来、そうやって一人一人の感受に働くものだと思うので。

 仮称のカテゴリ案などもありましたらぜひ感想欄で教えてください。

 世界は一歩ずつ、いい方に変えることができると思う、筆者でした。



追記:

 なろうにて「純正ファンタジー村民が入ってきたスキル民を袋叩きにして追い出す仕様にすればいい」「純正ファンタジーは単独では不人気」というなんともはやな感想が送られてきました。さすがなろうだと思いながらが、そうじゃないよ、目指すのは共存型だよと明言してみました。


 「純正」の定義がまずあいまいでしたが、例にFF7が出ていたので個人的にそこから考えさせてもらった結果、「RPGのシナリオにはスキルは出てこない(スキルはあくまでシステムであってシナリオではない)」ということからその辺はゲームやったことがある人ならふんわり分別がつくのでは?とも思います。

 小説だとそこが混同しているところがまた複雑。

 でも今後は「そういうゲーム」も出てくるのかもしれないですね。


 スキルシステムが明確にシナリオ内に存在しているという点では、ソードアートオンラインを代表とするVRMMOに近いのかなとも思います。。

 VRMMOが現実化した異世界が、スキルありの異世界転生というか。

 スキル系のダンジョンもリアルVRMMOに近いような近くないような。

 (でもSAOは分類がSFだそうです)


 個人的にはコメディ・ホラー以下で需要ないとかディスられていた「純正ファンタジー」というものは需要あると思っています。

 書籍化やアニメ化が難しい、商業的な面では採用されないというだけでそれ「も」好き、という人も多いだろうし、人間は同じジャンルが続くとほかのものが欲しくなる生き物ですから、需要はなくなりはしないと思うんですよね。


 面白い作品、そうでない作品はジャンル限らず存在する。

 だったら選択肢としてどっちも大事にされてもいいのではないでしょうか?

 基本無料の小説サイトならなおさら。


 えぇ、まぁ、コメディをホラーやファンタジーと同じ括りに持ってここられたような方だったので、あまり考えてはいないのだろうなとは思いますが……それはカテゴリではなく属性だよ……(ぽつり)


 そんなご意見も、熟考すると新たな気付きや作品の肥やしになってくれるので感謝するほかはありません。

 カテゴリが追加されるのはまず難しいとは思いますが、それならどちらにも楽しんでもらえる物語を作ることに挑戦をしてみるのもいいかもしれない、と思う筆者でした。

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