第17話 彼女持ちの女子会男子

 ほどなくして、綾垣とは付き合うことになった。


 今度ばかりは俺から告白した。こんなに自然に話せる女子も、水曜会のメンツ以外ではなかなかいないからだ。


 千波にはデート中後をつけられたり、あゆみはショックで3日寝込んだりといろいろあったが、なんとか仲良くやっている。


「まさか真一が自分から行くとはね」


 直後の水曜会で、玲奈は感心したように言った。玲奈とも二人きりで大学に出かけるわけにはいかなくなるだろう。


 今日の水曜会にも、いつものメンバーが集まっている。あんなことがあったが、瑠香は俺が無理矢理呼びつけた。


「で、どういうことなの? 雨海くん?

 私もう参加しないつもりだったんだけど」


 瑠香は不機嫌そうに問いかけてくる。


「やっぱり、この5人が揃わないと、いつもの会じゃないと思うんだ。千波も、玲奈も、あゆみも瑠香も、俺にとっては大事な友人だ。一人も欠けてほしくないんだよ」


「でも、私は雨海くんの尊厳を踏みにじったんでしょ? そんな人の心が分からない私を、友達にしておく理由はないと思うよ?」


 瑠香はいつになく自虐的なことを言ってきた。玲奈の一言がかなり効いていたらしい。


「人の心が分からないなら、分かるようになればいい。俺だってぼっちの欠陥人間だ。いや、欠陥のない人間なんていない。皆で成長できれば、それでいいんじゃないかな」


 それこそが、俺の考えた「身の振り方」だった。水曜会も、瑠香も、綾垣との関係も、どれも諦める必要なんてない。


「分かった。ありがとう、雨海くん。こんな私と対等に話してくれて」


「別に。当たり前のことだ。だいたい皆、瑠香に対して下手に出すぎなんだよ。瑠香も、そのカリスマ性をちょっと抑えるようにした方がいいな」

 

俺はそう言い切ってみせた。


「ふふっ、雨海くんにそんなことを言われる日が来るとはね」


 瑠香は寂しげに笑った。

       ◇

「解決したみたいね」


 ファミレスを出ると、綾垣、いや、瀬名がいた。


「まぁな。彼女がいるのに女子会に参加し続けるなんて、ちょっと不道徳な気もするが……」


「それでいいでしょ。真一くんは女子会男子なんだから。友達も大切にしなよ? ぼっちなんだから、孤独の辛さは分かるでしょ?」


「そうだな」


「とはいえ、行き過ぎた友情もどうかと思うけど……」


 振り返ると、電柱の影から俺たち二人を監視する千波たち四人がいた。それで尾行のつもりか。


「すまない。プライベートは侵害しないよう言っておく」


「まぁでも、良い友達を持ったってことで、不問にしとくよ」


「助かる」


 ぼっちの俺にもついに彼女ができたわけだが、女子会男子はこれからも続けていくだろう。


 もう俺は、四大美少女に飼われるペットでも、陰キャ育成計画の実験台でもない。


 彼女たちの友人だと、胸を張って言える。

 

         完

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女子会男子、雨海くんには彼女ができない 川崎俊介 @viceminister

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