第4話・人工少女は自分の気持ちに気づく
数日間──開発者の科学者男が研究室を留守にして、施設に残っていた女性職員から監禁されている部屋の鍵を開けられ。
「博士がもどってこない数日間は、施設の中で自由に過ごしてもいいよ」
そう告げられた人工少女は裸で施設の中をうろついて、博士の書斎に足を踏み入れた。
机の上の乱雑した用紙を少女は手にする。
そこには、赤い✕印が描かれた用紙に、少女に対する不採用になった実験計画が、図解入りで書かれていた。
その中には少女に対する拷問に近い不採用計画や、性的な不採用計画もあった。
(臓器をブタの臓器と全交換する……遺伝子操作をした動物の胎児を、子宮内に移植して子宮壁に着床させる……なんて、怖ろしい生体実験を博士はあたしの体に……)
さらには、大の字に実験台に固定した少女の股間に、回転するノコギリの刃を当てるという意味不明な猟奇計画も含まれていた。
(博士は変態)
視線を本棚に移した少女は、難しい書籍に隠すように置かれた恋愛小説を発見する。
ページをめくって軽く小説を読んでみた少女は、体が熱くなって胸の奥がキュンとする実験では感じたコトがなかった不思議な感覚を覚えた。
(恋? もしかして、これが愛? あたし、博士を愛している?)
自分の気持に気づいてしまった少女は、自分の腕で自分の火照る体を抱きしめた。
◇◇◇◇◇◇
開発者の男は帰ってくると、次の実験の準備を進めた。
「今度の実験は、快感実験だ……体にAIが探り出した、おまえの性感帯を最高の方法でピンポイントで快感を与え続けて、脳内の快感物質の過剰分泌を促して脳がどう変化するかという……実験を」
少女が男の言葉を
「あたしに、名前を付けてください」
「おまえに名前なんか……」
「それは、わかっています。でも寂しいんです博士からおまえ呼ばわりばかりされていると……お願いです、あたしに名前を付けてください!」
少し考えてから博士の男が口を開く。
「
「ありがとうございます……あたしの名前は『セル』なんですね」
どことなく嬉しそうな少女を無視して、実験を推し進めようとする。
「それじゃあ、早速実験を……」
男がそう言った時、セルと名づけられた少女は、裸で男に抱きついてキスした。
いきなりの、女性とのファーストキスに動揺する男。
「な、なにをするんだ? おまえ!」
「おまえじゃ、ありません『セル』って呼んでください……これからは、あたしも博士に〝恋愛実験〟をします」
「なにぃぃぃ?」
「博士があたし……セルの体に非人道的な実験を行う前に。あたしも博士に恋愛実験をします、その恋愛実験を受け入れてくれなければ、あたしも博士の実験は拒否します」
「どこから、そんな知恵を……面倒だが、しかたがない承諾しょう」
「では、博士に対する恋愛実験を行います……あたしがキスをしたら、セルの体を優しく撫で回してください」
セルは、もう一度、男にキスをした。男は面倒くさい行為だと思いながらも、セルの背中を撫で回して愛撫する。
恍惚とした表情で男から唇を離したセルと男の唇に、唾液の吊り橋ができた。
セルは愛する博士の愛撫を受けて、高揚感に満ち溢れた。
「はぁあ……さあ、博士の番です。あたしの体を自由に使って博士の思う通りの実験を行ってください」
◇◇◇◇◇◇
数日間が経過した──裸のセルが男=博士の書斎で、本を読みながら訊ねる。
「最近、あたしの体で実験をしてくれないんですね? なぜですか?」
「なんとなく、セルと抱き合ってキスをしてから。視線を合わせづらい雰囲気になってきてな……そうだ、これはセルへのプレゼントだ」
そう言って、すっかり優しくなった博士は、紙袋を裸の少女に差し出した。
裸の少女=セルは、袋の中から取り出した、新品の女性パンツに目を丸くする。
「これを、あたしにですか?」
「裸でいるよりも、股間だけでも隠した方がいいだろう」
プレゼントされた白いシルクレースのランジェリー〈パンツ〉を眺めているセルに、博士が言った。
「眺めてばかりいないで、
セルはビニール袋から真新しい、セクシーランジェリーな下着を取り出すと、腰を屈めて穿いてみた。
「博士……ありがとうございます」
博士はセルを実験動物ではなく、一人の女として意識しはじめていた。
白いパンツ姿のセルは、博士に近づくと抱きついて、愛する博士に唇を重ねる。
博士はすっかり、セルの恋愛実験と称する行為を受け入れていた。
セルがキスをしながら、甘い吐息を漏らして言った。
「んんッ……博士、あたしの体に、もっと、もっと、非人道的な酷い実験をしてくださいね……愛しています博士……んんッ」
~おわり~
実験用人工少女は開発者に恋をする 楠本恵士 @67853-_-
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