学園の王子様な幼馴染(♀)をお嫁さんにしたら、ただの可愛いお姫様だった
何だか息苦しさを感じる。
しかも、足も動かない。
一体どうしたんだ?俺の身体。
いつもと調子が違う身体を不審に思い、瞼を開く。
すると、眼の前いっぱいに俺の愛する妻の笑顔が広がっていた。
肩にかからない程度に切り揃えられた髪。
長い睫毛にキリっとした眉に力強い瞳。
薄いピンク色の唇は横に広がっており、これでスッピンというのだから恐ろしい。
因みに髪型に関してだが、結婚してしばらく経った頃に、気分で髪を伸ばそうとしていた麗に土下座をしてショートカットのままにしてもらっているのはまた別の話。
「おはよう、メグ」
「レイもおはような」
朝の挨拶をした頃には、自分の身体の違和感の正体は把握出来ていた。
俺の左腕は麗の枕となっており、股ぐらには麗の右足が、俺の右足には麗の左足が絡まっている。
道理で身体が動かない訳だ。
ここまで雁字搦めにされているとは。
俺は右手で麗の頬に触れ、髪の毛を耳にかけながら唇を奪う。
すると、より一層俺の身体への締め付けが強くなった。
唇を離し、麗の頬に触れていた手で頭を撫でる。
「ふふっ、朝から愛されているってことを実感出来て幸せだよ」
「せっかくの休みの日だし、今日は一日中レイを可愛がるって決めてたからな」
「全く、メグは本当に物好きさんだね」
軽口を叩いてはいるが、麗は満面の笑みを浮かべている。
学生の頃は王子様なんて言われていたが、やっぱり麗は可愛いな。
「ぶっちゃけさ、俺が物好きって言われていることにはすげー感謝してるんだよな」
「えー?何で?」
「俺の好みは言わずもがなでレイだろ?で、それが世間的な好みなんだったらレイが他の人に盗られてたかもしれないじゃないか」
「全く、メグはホントにおバカさんだね」
「どういう意味だ?」
「私は小さい頃からずっとメグのことが好きだったんだから、他の人と付き合うなんて考えられないよ」
麗は笑顔のまま、さも当然かのように言った。
そんな言葉を聞いて、大人しく出来る俺じゃあない。
枕と化した左腕で麗を抱き、再度唇を奪った。
高まった気持ちはそれだけでは抑えることが出来ず、そのまま何度も何度も何度も唇を奪い、愛を囁き続けた。
その後、1時間程寝室から出ることは出来なかった。
寝室から出る頃には麗の頬は上気を帯びており、目もトロンとしていた。
この雰囲気の中、キスだけで済ませた俺の理性を褒めてほしいものだ。
最早ブランチとも言える、少し遅い朝食を摂った俺達は、リビングのソファーに隣り合って座っている。
ソファーは麗の要望で、あえて3人掛けのものを購入して設置した。
狭いソファーだと、身体を寄せ合えるからというのが主な理由だ。
今となってはこれ以外考えられないな。
オットマンに俺が足を置くと、麗は頭を俺の太ももに預けてきた。
そんな麗の頭を撫でていく。
麗は微笑みながら、テレビを見ている。
これが、いつもの俺達のリビングでの過ごし方だ。
テレビには情報番組が映っている。
それを見ながら、何でもない会話を延々と繰り広げていく。
会話を続けていると、テレビでは女子アナがスイーツを紹介していた。
そうだ、良いことを思いついた。
「なあレイ、甘いものが食べたくないか?」
「いいね!もしかして、何か買いに行くのかい?」
「いや、せっかくだし日頃の感謝も込めて俺が作るよ」
「ホントかい?メグの手作りお菓子を食べるのも久しぶりだなぁ」
「ははっ、かもな。それではお嬢様、少々お待ちくださいってね」
「いや、せっかくだし私は隣で見ていようかな」
「それじゃあ、キッチンに行くか」
俺達はソファーから立ち上がり、どちらからともなく手を繋ぎ、キッチンへ向かう。
エプロンを着て、必要な材料を冷蔵庫から取り出す。
「そんじゃま、始めますか」
「メグのエプロン姿も可愛いね、惚れ直したよ」
「そんなレイはどんな姿でも可愛いけどな」
「またそういう歯の浮くようなこと言ってくれちゃって……メグのばーか」
拗ねたように、俺の後ろから麗が抱きついてきたので、背中には幸せな感触がある、最高だ。
そして、俺の左肩に顎を置き、右頬を俺の左頬にくっつけている。
麗は結局、俺よりも数cm身長が高くなっていた。
180cmもあるのは羨ましい。
その分?胸は絶壁となっているのだが、正直俺の好みだから問題は全くない。
スイーツ作りに入る訳だが、正直やることはそんなにない。
材料を測ってホームベーカリーに入れて、スイッチを入れる。
後は待つだけ、超簡単。
麗の体温を感じている間もなく完了した。
「出来るまで待つとすっか」
「ホームベーカリーで甘いものってことは、ワッフルを作ってくれているのかい?」
「そうそう、レイはワッフルには大きく2種類あるって知ってる?」
「ワッフルが2種類かぁ……あっ、もしかしてモチモチのやつとカリカリのものかな?」
「よく知ってるなー、偉い偉い」
正解したご褒美とばかりに左手で麗の頭を撫でる。
頬同士がくっついているためか、俺も少し揺れていておかしな感じがする。
「今回はモチモチ系のワッフルだな。ベルギーではこれをリエージュワッフルって呼んでるらしいな」
「じゃあカリカリ系のものは?」
「そっちはブリュッセルワッフルって呼ぶらしい」
「へぇ、ブリュッセルの方が有名だし、そっちの方が主流なのかな?」
「別にブリュッセルにもリエージュワッフルはあるらしいし、どっちもよく食べられてるみたいだぞ」
「そうなんだね!ここまで聞いておいてだけど、明日には忘れていそうだ」
「雑学なんてそんなもんだよ、忘れてたら……お仕置きかな?」
「おっと、そういうことなら早めに忘れないとだね」
頬をくっつけているため顔は見えないが、恐らく麗は満面の笑みを浮かべているのだろう。
もうキッチンで今やる作業はないので、名残惜しいが頬を離した。
そのまま麗の腰を抱き、ソファーの定位置に戻った。
ワッフルの生地が完成したので、生地とワッフルメーカーを持ってダイニングテーブルに移動する。
普通は2人で食事をする場合は対面に座ることが一般的だが、俺達は隣り合うように座っている。
もちろんのことながら、これも麗の要望だ。
家だけでなく、外食先でさえも隣り合って座っている。
生地を熱したワッフルメーカーに入れ、ワッフルメーカーを閉じれば後は待つだけだ。
このワッフルメーカーは鉄板を入れ替えればホットサンドも焼ける優れもの。
普段は麗がよく朝食にホットサンドを作ってくれている。
なんでも、学生時代に俺が誉めたことから具にチキン南蛮を入れるのが我が家の定番になった。
そうこうしているうちに、ワッフルが焼き上がる。
「焼けたなぁ」
「バターのいい香りがするね!早く食べようよ!」
「ちょっとだけ待ってもらってもいいか?」
「えー、早く食べたいのにー!メグのイジワルー」
「まぁまぁまぁ、俺を信じて待ってくれな」
「そんなこと言われたら信じるしかないじゃないかぁ」
俺は席を立ち、冷蔵庫からあるものを取り出して席に戻る。
こいつを乗せてこいつをかけてっと……。
ついでにあいつも散らしてやるか。
トッピングも完了し、完成したワッフルから麗は目を離せないようだ。
「そんじゃ食うか」
「「いただきます」」
麗は美しい所作でナイフで切り、フォークでワッフルを口に運んだ。
頭を少し下げたかと思えば、身体を小刻みに震わしている。
そんな麗を見ながら俺もワッフルを食べる。
うん、いい出来だな。
美味い。
「これ美味しすぎるよ!!」
「それは良かったよ、普段家事を頑張ってくれてるお礼だよ」
「これじゃあ私の方がもらいすぎだよぉ……」
「んなことないって、ほら、アイスが溶けちゃう前に食べてしまおうぜ」
俺達はその後、会話をすることも忘れてワッフルに夢中になった。
やっぱりバニラアイスにチョコレートソースはハズレないな。
最後に思い付きで散らしたスライスアーモンドもいい仕事をしている。
食べ終わった後、麗がお礼のお礼と言って聞かず、ソファーで麗の膝枕を堪能することになった。
もちろん幸せだったことは言わずもがな。
幸せな時間ってものはあっという間に過ぎ去っていく。
もう寝る時間になっている。
俺達はおやつを食べた後、ひたすらにイチャイチャしながら過ごした。
夕食は麗の負担軽減のために出前で済ませ、2人で風呂に入って、後は寝るだけ。
寝室に移り、麗チョイスのセミダブルのベッドに2人で腰掛ける。
「今日ももう終わってしまうね、なんだか寂しいな」
「でも、久しぶりに丸一日レイと2人で過ごせてよかったわ」
「いつもは何だかんだで出掛ける用事とかあるからね」
「そうなんだよなぁ。俺的にはレイを最優先にしたいとこなんだけど」
「ふふっ、そう言ってくれるのは嬉しいけど、同僚との付き合いとかは大事にしなきゃだよ?」
「でもなー、あいつらレイのこ」
「私のことがどうしたんだい?」
言わなくてもいいことを言いそうになった。
しかし、ここまで口にしてしまったら麗は確実に俺が言いたくないことに気付いていても引かない。
今までの経験上分かる。
あまり気は進まないが、言うことにした。
「……『お前の嫁さん?めちゃくちゃイケメンだけど、お前って男の方が好きなの?』とか言われるからイヤなんだよ」
「何がイヤなんだい?」
麗はニヤニヤしながら聞いてくる。
こいつめ、絶対俺の考えてることが分かってて聞いてきてやがるな。
「はぁ……別に男が好きな人もいるし、そこは別にどうでもいいんだけどさ。俺はレイが世界一可愛い女の子だって思ってるから、ちょっとモヤモヤするっていうか」
「へぇー、私が世界一可愛い女の子なんだね」
「そりゃあそうだろ」
「私を可愛いなんて言うのはメグだけなんだけれどね」
「でも、レイって結構『可愛い』って言われるの好きだろ?」
俺がそう言うと、麗は顔を真っ赤にした。
「そ、そんなこと分かってても言わないでよ!」
「照れちゃってまあ。そういうところも可愛いのよな」
「付き合い始めてから何度も言われてるはずなのに、いつになったら慣れるんだろう……」
「俺としては、いつまでもそういう反応でいて欲しいんだけどな」
「結婚してもう6年だよ?流石にそろそろ慣れないと……」
いつものじゃれ合いとかではなく、麗は本気で悩んでいるようだ。
麗がここまで悩む理由は正直分からない。
だが、麗の悩みは放っておくことは出来ない。
「……どうして慣れなきゃいけないんだ?理由があるなら教えてくれ」
「えー、あんまり言いたくないなぁ」
「どんな内容でも笑ったりしないし、聞かせてくれよ」
「そこはメグを信じてるから、疑ったりはしていないよ。うーん、でもどうしよう」
「レイ、俺達は夫婦で一連托生だ。レイの悩みは俺の悩みでもあるんだよ」
俺がそう言ったら、麗は唸りながら悩み始めた。
が、意外にもすぐに、その葛藤は終わりを迎える。
「あのね、将来さ、私達の子供が生まれるかもしれないよね?」
「そりゃあな、愛し合ってたらいつかはそういうタイミングが来ることもあるだろうな」
「そこでさ?私がメグから『可愛い』って言われて照れているところを子供に見られたらって考えたら、すごく恥ずかしいなと思ってね」
「なるほどな、気持ちは分からなくもない」
「そうでしょ?だから、慣れておく必要があるかなと思ってさ」
麗の悩みが分かったが、解決策が思い浮かばない。
悩みを解消してあげたい。
必死に解決策を考える。
荒療治でも良ければ無くは無いんだが……。
「……何か考えはある?」
「無くは無いけど、これじゃあ俺が得するだけかもしれないしなぁ」
「考えがあるなら言ってみておくれよ」
「結構な荒療治になるんだが、レイが俺に対して普段恥ずかしくて言えてないようなことがあれば、それを積極的に、自発的に言ってみるってのはどうだ?」
「荒療治の意味が分かったよ、より恥ずかしい思いをすればってことなんだね」
「そゆこと」
再度、麗は悩み始めた。
先程のように簡単には決断出来ないようだ。
少しでも力になれたらいい、そんな想いで麗の腰を抱き、手を繋ぐ。
繋いだ手を、麗はギュッと強く握り返してきた。
手を握り返してきて間もなく、覚悟が決まったのか麗は口を開いた。
「………………ン」
「ん?」
「…………リン」
「何だって?」
「……ダーリン」
「…………もう一回言ってくれ」
「ダーリン」
「もう一回」
「ダーリン♡」
「おい、マイハニー」
「なぁに?ダーリン」
「覚悟は出来たか?」
「覚悟って、何のだい?」
「今夜は寝かさないってことだよ!!!」
と、言いながら俺はガバッと麗を抱き締めてベッドへ押し倒す。
麗のあまりにも可愛い一言に、俺は理性がどこかへ飛んでいった。
「キャーッ!ダーリンのえっちー!」
麗はそう言うものの、嬉しそうな顔をしている。
そんな麗の表情を見て、俺の理性は遥か彼方に消え去り、俺はケダモノと化した。
朝までとはいかなかったが、外が白んでくるまでお楽しみだったのは言うまでもない。
お互いを求め合い、最後は気絶するかのように眠りに落ちた。
20△△/××/◯◯
メグに!!ついに!!
ついにメグに言ってやった!!!
やっとダーリンって呼べた♡♡♡♡♡
ずっとずっとずーーーーーっとダーリンって呼びたかったのがついにだよ!!
しかも、私がダーリン♡って呼んでからのメグはすごかった……
あんなに愛してるって言ってくれながら必死に私を求めてくれて、胸がキュンキュンしっぱなしだった♡♡♡♡♡♡
そんなメグに釣られて、私もいっぱいメグのこと求めちゃった♡♡
メグからこれ以上ないってくらいに愛されてるって実感出来て幸せだったし♡
しかも、時期的に赤ちゃん出来てもおかしくないってメグは分かってるくせに私を抱いてくれたのも嬉しかった♡♡♡♡♡♡♡
絶対赤ちゃん作るんだっていう気持ちが伝わってきたような気もする♡♡
えへへ、メグは気付いてないかもしれないけど、メグから見えないように首筋にいっぱいキスマークつけちゃった♡♡♡♡
メグは会社でもモテてるみたいだし、メグは私のダーリンだって分かるようにしないと……
家族が参加出来るイベントで、メグに色目使ってる女の子が何人もいたのを私は知ってるからね……
そのうちの何人かは私に惚れさせるように久々に王子様キャラで落としたんだけどさ!!
どれもこれも全部メグがカッコ良すぎるのがよくない!!!!!
メグ好きメグ好きメグ好きメグ大好き大好き大好き大好き大好きすぎる♡♡♡♡♡♡♡♡♡
いけないいけない!そろそろおうちのことしないとだ!
昨日に引き続いて今日もたくさんえっち出来るように、シーツを綺麗にしなくっちゃね!
よーし!今日も一日がんばるぞ!!
謎の日記より、一部抜粋
学園の王子様な幼馴染(♀)は誰よりもお姫様 ノーブレーキ熱海 @Nobrake_Atami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます