老いたコンプレックス

@nezumiusagi

第1話

①履歴書が長所と短所を記せと言う 職歴を見る 堪え性の無さ

②ジェンダーの言葉の風に戸惑う私 狭間で分かったふりをする 

③学歴のコンプレックス僻みの沼よ 選者の中に高卒を探す

④才があり見えない努力惜しみ無く 選ばれし者 光を放つ

⑤恋をして契って子を成し巣立った後に 我に残るは五十路の体

⑥また辞めた 俯く横河原線 足元には線 明日からは専業の主婦

⑦老いること愛せと人は言うけれど しみ、皺、厚い顎 鏡を伏せる

⑧職安で担当者の顔見覚えが『何してるん?』とその無邪気

⑨花筏真ん中流れて海に出る 端は壁にぺたりと張り付く

⑩賢くも馬鹿でもなくて可愛くもブスでもなくてただ宙に浮く

⑪ルッキズム私は私を愛せないやっぱり綺麗に生まれてみたい

⑫白いもの髪から下から鼻の穴から全方向から老いが近付く

⑬福音寺好きな人を思い出す貴方の好きな女が住んでた駅

⑭下からは夫と吾子の笑う声寂しくってそっと伺う

⑮いってきます 18歳の吾子の背に 何故か嫉妬す我は五十二

⑯手の甲が我の腿に触れる夜 その温かさに救われたりもする

⑰雨音はだらしのなさを流してくれる また深い眠りに落ちる

⑱明日から明後日からと夢延ばし今の自分に愕然とす

⑲女とね 又とね力と 重ねて力 突き刺さるけどスルーする

⑳休みの日 WOWOWプラスをひたすら観てる手にはスマホをソファの上で

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