第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌の部】«とある剣士の話»

水瀬

第一句


縁切れぬ敵 鍔迫り合いと延長戦 わたしの小手は優勝杯に


残心で視界に映る主審の旗 上がった紅色あんたの白に


君のその母に拭われその涙その意味測るも言葉にならず


悔しさと剣追うあたしの涙跡 また切り捨てた“つまらぬもの”を


優勝杯過去の栄光離れゆく 私の前に君の背中が


血滲む手ただはらり散る虚しさで無理に固めたあなたへの笑み


何だそれ何だその顔その笑顔言葉には出ず 口を噤んだ


“また負けた”蹲踞の君が歪む視界拭う手ぬぐい涙染めかな


優劣感見え見えの焦り「ねぇ待って」 どうしてあんたは遠く後ろに


副将のあんたの背中の重圧をのせられるような大将となり


一本差 試合渡した大将のなんと頼もしき“あとは任せろ”


“頼んだ”とあんたのパンチ胴が吸う 重くなる背はされども軽し


何だかなぁぐちゃぐちゃするなぁ顔歪む 頼らせて、ってやっぱ嘘だよ。


目が溶けて染み出したそれぽたぽたと君の目に無く ”捨てられたんだ”


悔しいさあたしも泣きたいでも無理でだってあたしがそれを止めねば


立ち上がり君を抱きしめ口開く混ざった想い君にこぼるる


ぶつかって磨かれるから強くなる本気の心あんたも同じか


”まだ” ”もっと”君とみんなと戦いたい最後の大会一本重き


あんたともきたる終わりだ心からあんたと仲間になれてよかった!


決勝戦背負う名前は違くとも剣を交える”縁切れぬ敵”

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌の部】«とある剣士の話» 水瀬 @minaseworld

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