愛はアンビバレント

君は俺が思うより、はるかに俺の事を見てくれている。

胸が一杯になるくらい、嬉しいよ。

いつもありがとう。




『謝る位なら、初めから止めなさい』


そんなニュアンスの言葉、もしくは概念だったと思う。

子供の自己肯定感を抑制する言葉だと、今では周知されつつあるが

1970年代に、その様な概念は無かった。



今の俺だって、うっかりそんな言葉を使いそうになる時もある。




対人協調に乏しく、自分の世界を求めるM9の俺。

規律や常識を求める、M10の母。

相反する特性と、M同属によるシンパシー。

そのアンビバレントが生み出したものだと、今は思う。



心配ばかりの、下手な愛情ゆえなのだ。





君に話した事が、あっただろうか。


俺は赤ん坊の頃、母の香水を飲んで、顔を真っ赤にしてひっくり返ったらしい。


それを見つけた父と兄は、もう助からないと相当慌てたらしい。

俺が覚えてない出来事を、笑い話として語られたが、俺は何故そんな事をしたのか。



赤ん坊の俺は、母の匂いを求めたのだ。

それは母を求めたのと同じだ。

そう結論付けた。




強がってばかりの母の人生の中で、

その涙を、誰よりも見たのは、俺ではないか。

今はそう思う。

シンパシーが寄り添ったのだ。





夕暮れ空の、美しさ。

オレンジゴールドの輝きと、スカイブルーが幾重にも織り重なり、その先には紫がかった蒼い空との、複雑なグラデーション。


時間ごとに、それらの色が濃くなり、やがて全てが蒼い夜闇に沈む。



哀しさや悔しさ、やるせなさが複雑に絡み合った人生だった。

夕暮れの空のように、複雑で、アンビバレントな感情で作られてるのが、俺なのだ。


哀しみの傷のはかなさにこそ、美しさがある。

俺はいつも思う。




その感性を言葉に変換する事で、誰とも違う唯一無二の文章になるのだ、と思っている。

自惚れ過ぎかな。




こんなに複雑で面倒臭い、俺なんかを好きになってくれて、寄り添ってくれて、ありがとう。



言葉で表し切れない想いは、歌に託そう。

相変わらずね、と君は笑うよな。



愛しい人へ 浜田省吾

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